空から降って来たのはじぃさん・・・・・・もとい、審査委員会のネテロ会長。

その登場には、サスガのメンチも固まった。





「つまり、自分でも審査不十分だと解っとるわけだな?」

「・・・・・・・・・・・・はい」





受験者達の目の前で、審査について話が進められる。

メンチも半ば意地になっていただけで、審査の基準がズレてしまった事にはきちんと非を認め。

結局、試験はやり直し。

お題は原作と全く変わらず、ゆで卵、と相成った。





じゃあさっきの合格も取り消しかな?と思った達は。

「あ。アンタ達は再試験受けなくてもいーわよどーせ楽にクリアするんでしょうから

アッサリ言われて、ぴょんぴょん崖に飛び降りる受験者達を見送った。





「・・・・・・あの卵、美味しーんだけどなぁ。

「そーいやは食った事あるんだよな・・・・・・俺も食ってみてーなぁ。





ぐつぐつと、でっかい鍋で茹でられてる卵に目をやりながら。

2人は、む〜ん、と、ほくほくゆで卵を食べてる受験者達を羨ましそーに眺める。

そしたら。





「あ、いたいた!、はい!」

「え、イイのか?」

「おう。俺等余分に取ってきたから。ほらにも」

「うわー。ありがとー。」





ゴンとキルアがゆで卵持ってきた。

はむ、と食べればやっぱり美味しい。ソコらで売ってる卵なんかとは雲泥の差。

すっごくシアワセな気分になってもくもく食べてたら、子供達はヒソカの方に走って行ってしまった

どーやらヒソカの分も取ってきたらしい。なんてイイ子達なんだろう、とは思う。





で。

2次試験をクリアしたのは達を含めた44名。

レスラートードーの姿はその中にはなく。





「あ、いたいた!!ちょっとソコの、406番!





次の目的地に向かう飛行艇の中で、何故かはメンチに声を掛けられた。

しかも何故か、彼女の後ろにはヒソカがいる。

・・・・・・いや、いるというよりは引っ張って来られた様だ。

彼女の手ががっしりヒソカの腕を掴んでて、素で困った顔をしていた。





が思わずア然としたのも、無理はない。

けれどメンチは素敵強気で。





「ちょっと一緒に来なさい!!」

「え?ええ?ちょ、待ったナニ、」

「チャワンムシの材料は用意したわ!!」

「え、ま、う、うん?」

「他にも色々、ほんっとーにイロイロ用意してるから!!

「へ?は?いやいやちょっと、」

「厨房貸してあげるから何か食べさせてよ!!」

「・・・・・・えー。」

「・・・・・・・・・・・・諦めた方がイイと思うよ、





ぐいぐいヒソカを引っ張りながらもう片方の手でぐわしぃ!!との腕を掴んで引っ張ってった。

その勢いたるや、もう台風だ。いや嵐だ。





そして。ひとり、ぽつねーん、と残されたは、といえば。

引き摺られながらも何だか楽しそーうに話してるとヒソカの後ろ姿を見て、何だかモヤモヤしてた。

とゆーか、ぶっちゃけムカムカしてた。





「・・・・・・・・・・・・んで、あんな顔してんだよ・・・・・・・・・・・・」





はすっごく楽しそうで。

自分があの子に嫌われてる事を知ってるくせに、あの子と楽しそうで。

あの子もあの子で、柔らかくて。

自分を嫌っているくせに、自分の連れであるには柔らかい顔で話をしていて。





「・・・・・・俺がお前のおとーさんだろーがよ、ちくしょー・・・・・・」





ずーん、と空気が重くなった。

はふぅ、と溜息吐いて、コテン、と窓ガラスに頭を付ける。





再会を果たしてからこっち、ヒソカときちんと目を合わせてない。

まともに話も出来てない。

更にはも、何だかんだとヒソカにちょっかいをかけるのに、何故か自分があの子に近付こうとすると何気に邪魔をする。

・・・・・・・・・・・・何だコレ。何なんだ今のこの状況。





はふぅ。再びでっかい溜息。

しかもずるずる壁伝いにしゃがみ込んで、いじいじ地面を突き出して。

そしたら。





「――――――あれ、アンタ何やってんのこんなトコで?」





後ろから声を掛けられて、どーんより、重い空気を纏ったまま振り返って見上げてみれば。

脱いだ上着を脇に下げて、汗だっらだらのキルアが、首を傾げてを見下ろしていた。





はじーっと。じーっとキルアを見詰めて。

何だよ、とキルアが顔をしかめたところで、ちょいちょい、と手招きする。

キルアは何だかイヤンな予感がしながらも、すっごい大人しいの様子も気にはなってたので、素直に手招きに応じる。

すると。





がばあっっ!!

「うわっっ!?」





抱き締められた。

「ちょっとアンタ!!イキナリ、何・・・・・・!?」

思わず怒鳴ろうとした声は、小さな腕の震えに途切れる。





一旦、口を閉ざしたキルアは、ちょっと上を見て。

紅いメッシュの入った銀の髪のつむじを、また見下ろし。

ぽんぽん、と。その頭を軽く叩く。





「――――――・・・・・・・・・・・・俺、な」

ぽつり、と零れる声は。とても静かで、穏やかで。

「子供、捨てたんだ・・・・・・もちろんそんなつもり無かったし、直ぐ帰ってくるつもりだったけど」

後悔、懺悔。そんな気持ちが、滲み出る様な。

「――――――見てもくれねぇってのは、ツライなぁ」





その言葉に、キルアは遠い目をした。

解っちゃいたけどホントに見事な擦れ違いだ。

あの紅い髪のコイツの連れは、一体ナニ考えて放置してんだか。

――――――いや、考えたからこその放置、なのか。





「・・・・・・見てないのはアンタの方なんじゃねーの」

「・・・・・・・・・・・・ソレ、にも言われた」





溜息混じりに言ってみたら、肩口からくぐもった声がして。

ホントこいつバカ鈍感でついでに頑固だよな、ともう一度溜息。





キルアですら、ひと目で解ったのに。

ヒソカがの一挙一動に、やたら敏感になっている事。

一次試験でヒソカがに向けていたのは、恋敵への視線。

なのにこの、養い親だけが気付かない・・・・・・気付こうと、しない。





「あのさ、子供はいつか大人になるんだぜ?」





この養い親が、あのヒソカの何時から何時までを育てていたのか、なんてキルアは知らない。

何時、別れて。何時振りに再会したのかも解からない。

けれど確実に。未だ子供の、キルアでも解るのは。ソレは。





「アンタの子供も、大人になるんだぜ」





なのにこの養い親は、子供が大人になった事を見ようと、しない。

――――――見たく、ないのかもしれない。

何故だろう。何故、見たくないんだろう。

その理由もきっと、この養い親は想いの奥深くの何処かで、ちゃんと解ってる。





「オレが言えんのってコレだけだ。後は自分で考えなよ」





ぽん、と肩を叩けば、はあっさり腕を解いた。

苦しい様な哀しい様な、そんな顔で俯くその様は何時もの彼らしくなくて、ちょっと心配になったけど。

キルアはひらひらと手を振って、から離れる。





そして、またもやひとりぽつねん、と残されたは。

「――――――・・・・・・・・・・・・んなの、わかってるっつーの」

誰に向けるでもなく、小さく零す。





解っているが、自分はあの子の親だ。

親にとって、子供は何時まで経っても可愛い子供だ。

子供の、ままだ。





「あの子は、俺の子、なんだ」





そう、思い込まないと。

自分の心の奥底の、どろどろしたモノがあの子に襲い掛かるから。




















 





 













往生際わるー。
 





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