試験会場に戻って、一番最初に気付いた変化は匂いだった。

とても良い匂いがする。食欲を刺激しそうな。

実際にお腹が空いてきて、ゴンとキルアは顔を見合せながら各自自分のお腹を押さえた。





そして、会場内に足を踏み入れる。

けれど中の雰囲気に、2人は首を傾げた。

先に魚をゲットして戻ってきていた他の受験者達が、固まってる。

彼等の視線は一か所に集中していて、その先を追い掛けて首を巡らせたキルアは、ひき、と口元を引き攣らせた。





(・・・・・・・・・・・・俺、なんか悪いモンでも食ったんかな。





毒物なんか効かない体質だけど思わずそう思ってしまう。

だって、ソコには。





、ちょっと味見てくれないかな?☆」

「あ、ちっと待って・・・・・・んー。サスガだねヒソカ。」

「ソレはどうも◇」

「うん、が好きそーな味だ。」

「・・・・・・・・・・・・★」





ピエロが本当に、どっかズレた青年と2人で料理をしていた。

しかもすっごいナチュラルに。

あり得なさ過ぎる。この光景を即刻脳裏から消去したい。一体何の拷問なんだろうコレ。





だけども、ソレこそ生まれた時から特殊な環境で育ってきたキルア。

拷問に対する訓練は受けているから、周りの固まってる受験者達より立ち直りは早かった。

自分達も早いトコスシ≠ニやらを作ろーぜ、とゴンに声を掛けようとしたところで。

「あれ?ゴン?」

・・・・・・・・・・・・横にいた筈のツンツン黒髪がいなかった。

ドコ行ったんだ?と首を巡らせてみれば。





、ヒソカ。何作ってるの?」

(おいおいおいおいっっ!!!!)

(ナゼ近付く!?)

(そしてナゼ声を掛ける!?)





キルア筆頭に、全受験者達の心の声がひとつになった瞬間だった。





けれど当の混乱の根源は、中華鍋を豪快にかき回しながらのほほんと。

「んー?はっぽーさい。」

「と、おこげとサラダだよ◇」

更にもう片方は白くて薄っぺらいのを油で揚げている。

しかも、おこげって何?と首を傾げて見上げてくるゴンに、ピエロはおせんべみたいなモノだよ、とゴンの頭をポンポン撫でながら。





(・・・・・・・・・・・・誰だアレ!?!?)





みんなの迷走が余計悪くなったのは言うまでもなく。

ちなみに試験管3人はもう達観。下手すりゃ悟りの心境にまでいきそうな感じだ。

再び固まってしまったキルアは、ハッと我に返りゴンを連れ戻そうと小走りに走り寄る。





そんな周囲を尻目に、とヒソカは料理を続けたままだ。





揚がったおこげを、クッキングペーパーを敷いた網の上に置いて。

油を切って更に食べ易い大きさに割っていったヒソカは、ソレを底の深い器に盛っての目の前へ。

するとはソコに、中華鍋からかき回していた具を上から掛ける。

じゅうううう、と。とても香ばしい音が広がった。

ついでにメンチの口からも「ああああアレ絶対おいしいいいいい」という悲鳴(?)が上がった。





ソレを丁度目の前で見てしまったゴンもキルアも、ヒソカの持つ器に釘付けになる。

美味しそうな匂いとあったかい湯気に、思わずこくん、と喉も鳴って。





「・・・・・・食べるかい、ゴン?☆」

「えっ、イイのヒソカ!?」

「構わないよ。ねえ、?◇」

「うん。ちょーしこいてかなり作ったからだいじょぶ。」

「ほんと!?ありがとう!!」

「キミはどうする?食べる?☆」

「・・・・・・ゴンが食うなら、俺も」





((((チャレンジャーだなをい!!!!))))





他受験者達の心の叫びを一身に受けながら。

・・・・・・あと、「うらやまし〜!!」と悔しがるメンチの恨みを受けながら。

ゴンとキルアは、ヒソカからほかほかの器を受け取ったのだった。




















 





 













おこげの作り方うろ覚え・・・
 





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