気を取り直した受験者達が、うぅむ、と唸ってレオリオがでっかく「魚ぁ!?」と叫んで。 皆が一気にダッシュしたので、試験会場には試験官と以外、誰もいなくなった。 いや、1人だけ残ってた。 「・・・・・・、試験どうするの?」 そうっとそうっと。 台の上に食材並べたのすぐ傍に近付いて、ヒソカは彼の手元を見る。 大根、人参、玉ねぎキャベツに白菜キノコ類まで。 一応並べてみただけなのかソレともコレ全部使うのか。全く解らない。 「そーゆーお前はどーすんの。あ、人参皮剥いて。」 そんなヒソカに言いながら。はまず玉ねぎひとつ手に取って、ぺりりと剥き出す。 「剥いたらどうすればイイの?というか、何作るの?」 ヒソカは小さく息を吐いて、困った顔をしながら、ソレでも包丁を握った。 「ん。野菜たくさんあるから、野菜炒めでも。ごはんあるし。で。お前は試験どーすんの。皆行っちゃったよ?」 「あのね。アナタも解ってるでしょ?ボクは職人じゃないもの。手巻とかチラシなら兎も角、握りなんて作れないよ・・・・・・シイタケ入れる?」 「ん。でもコレって、料理の味じゃなくて料理を通して観察力や注意力を図るテストでしょ?ピーマン食える?」 「うん大丈夫・・・・・・でも彼女、ソッチ方面ではイロイロ有名だし。ソレに食べてもらうなら美味しいって言ってくれるモノ出したいし。でも」 「確かに握り寿司は難易度がねー。俺だって口の肥えた人間に自分の作ったチャチいのなんて出したくないわ。あ、キャベツ切ってー。」 「イタリアンならボクもちょっとは自信あるけど・・・・・・あ。片栗粉発見。ねぇ、メニュー八宝菜に変更しない?」 「はっぽーさい?あんかけ?」 「うん。おこげ作ってソレにかけて。なんだか久し振りに食べたくなってきちゃった」 「うし採用。白菜追加ー。おこげ作れる?任せてい?」 「うん。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんだかすっごいほのぼのしてるのは気のせいだろうか。 (・・・・・・・・・・・・ねぇ、ブハラ・・・・・・・・・・・・) (・・・・・・・・・・・・や。夢じゃない・・・・・・・・・・・・と思うよ。多分・・・・・・・・・・・・) 手際良く材料を切りながら、ぽんぽん会話を交わしている2人に、試験管達は思わず遠い目をする。 しかも、聞こえてきた会話の内容が内容だ。 どうやらあの2人はスシ≠ニいう料理を知っているらしい。ソレも詳しく。職人、という単語を出した事でその事が伺える。 しかもこの試験の趣旨を良く理解している。 彼等2人は課題を知ってる様子なんて微塵も見せなかった。あのハゲやポロッとネタを言ってしまった年齢不詳とは違って。 けれどそんな事より何より。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ブハラ」 「何だい、メンチ」 「あの2人は合格にするわ」 小さく小さく、メンチはブハラにだけ聞こえる声でそう言った。 楽しそうにもやしのヒゲをぷちぷち毟ってると、ラップに平たく伸ばしたごはんを更に平たくしてるヒソカを見ながら。 ブハラは驚いて、彼女の小さな顔を凝視する。 「だって嬉しいじゃない。あーゆー事を言ってくれるの、って」 運もまたひとつのハンターになる為の素養だ。試験管達は思う。 知ってる料理がたまたま課題に出た。コレは本当にラッキーで、彼等2人は他の受験者達よりも有利に立った。 なのに。なのにだ。 自分達にはマズイスシ≠オか作れないと遠回しに言って。そんなん人様に出せるか、と断言したのだ。 出さなきゃ試験に受からないのに。ソレでも、と。 前年失格になった超危険人物が。 何だかヘンタイっぽい人物の連れの、これまたドコかずれてそうな思考の持ち主が。 試験の合格よりも料理を。食べる側の『美味しい』と、作る側の『嬉しい』を取って。 「ーーーーっっ!!豚獲って来たーーーーっっ!!ちゃんとバラして来たぞっっ!!」 「おー。えらいえらい。って、魚は?刺身断念?」 「ちげーって今から獲るんだって!!じゃっっ、行ってくる!!待ってろよ俺の刺身ぃぃいいいっっ!!」 ・・・・・・・・・・・・その、件のヘンタイっぽい人物は、ソレはソレはキラキラした目で肉を相方に押し付けまた森へと飛び出してった。 もしかして彼も試験投げてるのだろうか。ソレとも素で忘れてるんだろうか。 メンチとブハラ、ついでにサトツは溜息吐いた。 けれど当の相方と元養い子は、全く頓着せず。 「あれ?ヒソカきゅうり何に使うの?」 「えと、サラダ、とか。春雨あるし卵あるしハムあるし白ゴマあるし。」 (春雨サラダ・・・・・・イタリアンなら少し自信あるって言ってたけど、中華も作れるのねアイツ) (自炊とか、してるのかな・・・・・・うわ、想像できない) 「ね、。は、和食は得意?」 「世間一般の家庭料理程度には。一番の得意は甘味だよ。・・・・・・何か食べたいのあるの?」 (甘味・・・・・・スイーツの事よね。ちょっと作らせてみようかしら) (し、試験が終わってからねメンチ) 「ん。茶碗蒸し。が前に一回作ってくれようとした事あるんだけど、失敗しちゃって」 「・・・・・・良く作ろうと思ったねアイツんな手間のかかるモンを・・・・・・今度つくったげる。」 (茶碗蒸し!?そんなのまで知ってるの!?やだあたしも食べたい!!) (おおおおお落ち着いてメンチ!!) 「つかさ、ヒソカ。がいる時と口調違う。もしかしてソッチが素?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ。」 (・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ス?お酢の酢、じゃないのは当たり前よね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・) (・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・殺人ピエロはカモフラージュって事・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・????) 「あー。うん。お前しばらくの前で素は出すな?でないとアイツにがっつりしっぽり喰われるゾ?」 どんがらがっちゃんっっ!! ヒソカが手から鍋を滑らせた。 棚から出したトコロで良かった。コレで油とか入ってたら大惨事だ。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。ソレ、どおいう、意味、かな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」 ぴきんっ、固まってたヒソカは、ぎぎぎぎ、ぎぃ、とを振り返る。 その口元は引き攣って、頬は心なしかほんのり赤い。 けれどは相も変わらず飄々と。そんなヒソカをちろんと流し見て。 「そのまま。アイツ単純で堪え性無しだから。素のお前見たらプッツンして本能のままお前押し倒す可能性すっごい大。」 「お、おし・・・・・・っっ!?!?」 「なのにあのおバカ、変なトコで常識持ちで鈍感だから。ヒソカの事考えもしないで後悔してそのあとずるずる引き摺るんだよ絶対。」 (((あ。なんかすっごい解る。))) あの銀髪の色男はゼッタイにヘタレ属性。 しかも感情で動いて後からドツボにハマるタイプだ。 試験管達のの人物像がそう固まった瞬間である。 「道徳?常識?何ソレ。そんなんで、ヒトの想いが縛れるワケない・・・・・・縛ろうとするの気が知れない。」 そして、この紅い髪の青年は、綺麗な顔やぽやぽやした雰囲気に似合わず、かなりオトコマエだ。 「ヒトがヒトを愛せるのってすんごい奇跡なのに。ソレが唯一のヒトで、互いが想い逢えるのなんか尚更なのに。」 だんっ!!と肉を切りながらは言う。はっきりしっかりくっきりと。 「だから。ヒソカには悪いけど俺、あのおバカが自覚するまで一切お前に近付けさせないから。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・う、ん」 (((・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・))) てゆーかココは何時から恋愛相談所になったのか、と。 思わず零しそうになったメンチ達はしかし、の持つ包丁の刃がきらんと鈍く光るのが何だか怖くて口を閉ざした。 |
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よろこんでショウガイになろうぢゃないか!! | ||
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