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そして秋良を置いてきた世癒は。昏倒したレオリオを担いで走るヒソカを見付けていた。

少し後ろの方にゴンとクラピカの気配はあるから、原作通りあの2人は見逃されたんだろう。

元は同じでも万が一、をチラッと考えてた世癒は、取り敢えずホッとひと息だ。





そんな世癒は今現在、一般人装って精孔開いてない状態にしてるので。





「・・・・・・・・・・・・ボクに何か用?」

不機嫌丸出しのひっくい声に、ちょっと苦笑する。

「や。用ってホドのものでもないけどね。さっきのトランプ返しに。あと、ちょっと世間話でも、と思って。」

「ボクには話す事なんてないよ」

けれど返ってきたのは取りつく島もない言葉で世癒の苦笑はますます深くなった。





「アレだけ俺の事殺したそうな目で見ておいて?」





ずばり。言い切られてヒソカはチラリ、と世癒を流し見るものの、結局は口を噤む。

そう。秋良は気付いていなかったが、ヒソカはずっと世癒の事を見ていた。

オモチャを見つけて喜ぶ子供の様な目ではない。強さを図る粘着質な目でもない。

隙があればすぐにでも。絶対に殺してやる的な。純粋な殺意を持って。

キルアあたり、気付いていたんじゃなかろうか。あとサトツも。





その理由を、世癒は容易に想像できる。想像どころか確定だ。

ほんと、巻き込まないで欲しいよねー、と。心の中で溜息を吐く。





「ねえ、ヒソカ。」

「軽々しく呼ばないでくれないかな」





ひゅんっ、とトランプが飛んできた。

飛ばした本人は目も据わり掛けて、世癒を睨む。

だけど世癒は無造作に。右の人差指と中指で捉えたそのトランプをひらひら揺らしながら。





秋良の毛皮って、枕には最適だよねー。」

笑い混じりに、そう言ったら、ヒソカの目が軽く驚きに変わる。

けれどソレも直ぐに、険を増して。

「・・・・・・・・・・・・キミ、知ってるの」





おどろおどろしい、とはこういう事を言うのだろうか。まあ世癒にはその怖さも通じないが。

「うんまぁでも俺の毛皮だってそう捨てたモンじゃないよー?」

だから笑ってサラリとそう言った世癒に。ヒソカは、今度こそ瞠目した。





その変化に、世癒はに、と口端を上げる。

敵としてしか認識してなかったヒソカに、ほんの少しだけ、興味を持たせる事が出来た。

あとは、ほんの少し言葉に〝力〟を乗せながら、本当の事を。





「――――――2ヶ月前、だよ。」





ぽつ、と。

呟く様に囁く様に。零れた世癒の声に、ヒソカは目を瞬かせる。





「2ヶ月前。6日ぶりに秋良は〝戻って〟きた。ソレから、息子が待ってるから帰らなきゃ、って。可哀想なくらいうろたえるアイツ宥めて賺して。

あにさま達に事情説明して、3日かけて準備して〝コッチ〟に〝来た〟・・・・・・解る?2ヶ月しか経ってないんだよ、俺達にとっては。」





秋良はヒソカに、自分がこの世界の住人ではない・・・・・・いわゆる、異世界から来たという事に関しては話した、と言っていた。

だから、解るハズだ。

そして、ヒソカはきちんと理解した。理解して、しまった。





「・・・・・・・・・・・・ソレ、もしかして、時間、が・・・・・・・・・・・・」





咽喉が乾いて、漏れた声は喘ぐ様な音になる。

6日ぶり、と言った。目の前の彼は、秋良が〝戻って〟くるまで。ヒソカが秋良に拾われてから別れるまでの、12年を、たったの6日、と。

そして。3日かけて。たったの3日かけただけの時間は、〝コッチ〟では。





なら。その準備とやらに10日かかっていたら。ひと月かかっていたら。

――――――考えてみればソレは。なんて、なんて怖ろしい。





顔色を悪くしたヒソカの考えてる事を察した世癒は、苦笑する。

苦笑して、ソレでも止めずに更に続ける。





「しかも〝コッチ〟にまた〝来れる〟かどーかは、賭けだった。秋良がこの〝世界〟に来たのは偶然で。そして秋良が〝向こう〟に〝戻って〟

来れたのは、俺っていう目印があって、秋良が本来存在出来得る〝世界〟が、どう足掻いたって〝向こう〟でしかないから。」

「・・・・・・・・・・・・っっ」





世癒の言葉の意味に、ヒソカはク、と唇を噛む。

ソレはまるで、自分と彼は何時までも一緒にいられないんだと、言われている様で。

しかもその原因は世界の隔たり。自然の摂理。人如きが関与出来る筈もない、強大にして無情な。





やっぱり、今更なんじゃないか、とヒソカは思う。

今更。もう一度会えたって、どうせ彼は自分から離れる。元の世界に、帰る。帰らざるを得ない。

そして自分は取り残されるのだ。コチラ側に。たった独り。





「でも秋良は帰らなきゃ、って言った。アイツすっごい甘えたで寂しがりで泣き虫で、だから俺アイツんトコ帰らなきゃ、って。ぼっろぼろ泣きなが

ら言ったんだよ。」





けれど続いた世癒の言葉に、ヒソカは俯いていた顔をパッと上げた。

映ったのは、ふわりふわりと優しく笑う、彼と同じ金の目の色。





秋良には、もう。お前が〝帰る〟場所なんだよ。ヒソカ。」





ゆるり、と。ヒソカの走る速度が落ちた。

元は世癒を振り切る為に、全速力に近かったのに。

どんどん。どんどん落ちて、遂にはぱたりと脚が止まる。





「――――――・・・・・・・・・・・・ぱぱ・・・・・・・・・・・・アキラ・・・・・・・・・・・・」





ほろり、と涙が零れた。

今すぐ彼に逢いたくて。昔の様に抱き締めて欲しくて。

ああ、でも。自分は随分変わってしまったから。ソレはもう無理だろう、と。ヒソカは思う。

子供を害する大人に生きる価値無し、と常日頃豪語していた養父は。

けれど命は大切なモノだと、同じくらい口をすっぱくして言っていたから。

その教えを、ヒソカは随分と破って・・・・・・さっきも、破って。





ほろほろと、泣き出したヒソカの傍に、世癒が木の上から降りる。

秋良の言ってたとーり。泣き虫さんだねぇお前。」

ぺむぺむと。頭を撫でる仕草は養父と同じで。

「6年はさ。確かに人の身には長い時間で。お前がその間どんな思いだったかも想像つくけど・・・・・・一度、秋良とちゃんと話したげてよ。」

けれどこの青年の方が。声も雰囲気も。柔らかくて優しい。





だから、なのかもしれない。

「・・・・・・むりっ、だよ・・・・・・っっ・・・・・・だ、だってボク、変わっちゃった・・・・・・っっ」

弱みを、見せたのは。

「・・・・・・ボク、もう、かわいくない、し・・・・・・っ、たくさん、ひと、ころして・・・・・・っっ」

素直に、声が零れたのは。





そんなヒソカに、世癒ははふ、と息を吐く。

その音に、ヒソカの肩がびくりと跳ねて、何だかなぁ、な気持ちは更に強まった。

だって。

(――――――だって。まさかこの私が。コイツの事カワイイなんて思うなんて、ねー。)

びっくりだ。

違う『ヒソカ』を知ってるだけに、コレはものすごい快挙かもしれない。

バカだバカだと思っていたが、イヤ実際今も思っているが。アレをコレに育て上げた秋良の手腕に、ちょっと感心する。

絶対本人の前でそんな事言わないけども。





ほろほろ、ほろほろ。

小さくしゃっくりまでしながら泣くヒソカに、でも、と世癒は首を傾げる。





「ヒソカはさ。秋良の事好きでしょ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん。」

「だったら、コレからは悪い事しようとしたって、秋良の事想って止められるっしょ」





さも当然、な感じでサラリと言った世癒に、思わずヒソカの涙も止まった。

そんなヒソカに、世癒は笑う。





「不変なんてのはドコにもない。人なんて変わって当たり前で、秋良の為にヒソカはまた変われる、でしょ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・でも、パパは」

秋良がお前を嫌うなんて天地がひっくりかえってもあり得ないね。」





バッサリ。しかも自信満々に言われて、ヒソカは、ぽかん、とする。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・すっごい、自信だね」

「自信じゃないって。秋良がお前溺愛してるの思い知ってるだけだって。」

呟きじみた声にも、アッサリというかげんなりというか何というか。イヤそーだけど力強い答えが返ってきた。





その顔を、ほけん、と見詰めていたヒソカはしかし。

「・・・・・・・・・・・・ふふっ。オモシロイ人だね、アナタって」

少しずつ少しずつ。何だか嬉しい様な楽しい様な。

何よりこの目の前の青年に。養父に抱くモノに似た、慕わしい、様な想いが込み上げてきて。





「ねえ・・・・・・・・・・・・アナタは、アキラのナニ?」





だけれどずっと気になっていた、疑問を小さく小さく紡げば。

世癒は、に、と笑ってヒソカに答えた。





「俺?――――――俺は秋良の同胞、さ。」




















 





 













ふつーなアレとからんでみた。
 





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