トンネルを抜けた先は、湿原だった。しかも超が付くくらい危険な。

まあそんな事はも解っていたし。

2人揃って「キケン?何ソレおいしいの?」ていうくらい自分達の強さを自覚もしてるので、大して構えはしなかったが。





「・・・・・・ちくせう・・・・・・俺のドコが変態だっつーの・・・・・・」





ぶちぶちぶち。

さっきからずっと。ずーーーーっとはソレばっかり呟いてる。

だんでぃーサトツさんの注意事項も聞いてない。

愛しの息子がイライラしながらサクッとニセモノを殺した事にも気付かない。





もうコイツ捨ててってイイかな、と思いながら。

ソレでもいちおー、を引き摺り走り出したサトツに着いてマラソンを再開する。





そんなの手にあるのは、1枚のトランプだ。

試験開始前に飛んできたモノじゃない。

さっき。ニセモノとサトツを狙って飛ばされたたくさんのトランプの中。

その中に紛れ込んで、1枚だけ。自分の首筋に向かって飛んできたモノだ。

そのトランプの存在は、どうやら誰にも気付かれず。もまた、誰かの目に止まる前に、1度懐にしまい込んだのだが。





(・・・・・・さて。どーするか、ね。)





トランプは念でコーティングされていた。

ニセモノやサトツに飛んでいったモノにもソレナリにコーティングはされていたけれど、この1枚だけは特にしっかり

本気でを殺そうとしている事が、ソレだけでもう解る。





(・・・・・・・・・・・・オタク等の事情に私を巻き込まないでほしーんだけど、なぁ・・・・・・・・・・・・)





大好きで大好きでたまらないパパ≠フ隣にいる、得体の知れないヤツ。

自分をさしおいて、ずっとパパ≠フ隣にいる、自分の敵。

ソレが、ヒソカのに対する認識、なんだろう。





素直じゃないなぁ、とは思う。

なのに行動はとっても素直だ。

コレにはもびっくりした。

原作がアレ、という先入観があったから、余計だ。





(・・・・・・ま。に拾われて育てられたんだから、原作と違うのはアタリマエかもだけど。)

でもまさかアレがホントにの養い子だったとは。

世界≠ヘホントに広い様で狭い、とはつくづく思う。





そんな事を感慨深げに思うの横で。

・・・・・・はいまだに、ぶちぶちと親バカと変態の違いについて呟いていた。





「お前イイカゲン止めれ。

びしぃっっ!!

あだぁっっ!?さっきからばかすか殴んなよっっ!!バカになったらどーしてくれる!?!?

「イヤお前ソレ以上バカにはならないからだいじょーぶ。」

「あっそっかそーいやそだな。」





((((ソコで納得するのか!?!?))))





周りにいた受験者達の心のツッコミが綺麗に決まる。

その中には、銀髪猫属性な少年もいたりして。

その銀髪猫属性の少年――――――キルアは、はふ、と溜息吐いて横にいるゴンに声を掛けた。





「ゴン、もっと前に行こう」

「うん。試験管を見失うといけないもんね」

「いや、そんな事よりヒソカから離れた方が良い。あいつ、すんげーイライラしてる」





そのセリフに、聞こえたははて?と首を傾げた。

ゴンも同じ様に、え?と首を傾げる。

だけが、この子も解ったのか、とキルアをちろんと盗み見て。





「気配がすんげー尖ってる。ストレス発散すんのに、霧に乗じてかなり殺るつもりだ」





キルアのセリフはそのままの考えと一緒で。

「ストレス?」

きょとん、とゴンが聞き返し、が眉をひそめた。





「殺る、って・・・・・・ヒソカが?まさか」

「どーしてまさか、なんて言えんの

キルアの言葉を否定しようとしたはけれど、に遮られて。

「そりゃ、だってヒソカは」

「俺の知ってる奇術師ヒソカ≠ヘ、強い人間と戦う事に興奮を覚えるバトルジャンキーの殺人快楽者だ」

難しい顔をして言い掛けるも、バサリと強い声で再び遮られる。





「奇術師ヒソカは、そーゆー人間だよ。」





幾重にも重なる並行世界。過ぎ行く時間の中で分岐した、IF、の世界。

けれど全て、根元は同じ。同じ、基だ。

魂の、根本も。性質も同じなのだ。

例え、途中で『』という要素が介入したとしても。

原作で知る『ヒソカ』も。かつてが出会った『ヒソカ』も――――――そして、この世界≠フ、ヒソカも。

根は、同じ。





の言葉に、ゆるゆると目を見開くの耳元に、は口を寄せる。

「お前にとってはたった3日でも、あの子にとっては6年だ。6年あれば人は変わる・・・・・・変わるんだよ、

だけに聞こえる様に。小さな棘を、吐く。





「 お 前 は 今 、 ち ゃ ん と お 前 の 養 い 子 を 見 て る ? 」





はそのまま。何事も無かったかの様にするりとから離れ。

ソレと同時に、後方から悲鳴と怒号が聞こえた。

その中にはレオリオの声もあって、反応したゴンがキルアの制止も聞かずに逆走していく。





思わずも立ち止まった。

脳裏に浮かぶのは愛しい子供。

頼りなくて可愛くて優しかった、小さいヒソカ。





「っ、」

は一歩、踏み出す。ゴンの後を追う様に、後方に向かって。

けれど。





げいんっ。

「ったっっ!?!?」

再び後頭部に飛んできた拳と言葉に、は蹈鞴を踏む。

文句を言おうと振り返ったは、けれど。





「お前、ちゃんともっと考えな。」





白々と、色の無い目でを睥睨する

その視線にぎちりと固まったを、は見向きもせず走り出す。ゴンの後を追う様に。

そんなの背中を見送って。





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わっ、かんねーよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っっ」





解らない。

が、何を言いたいのか。

何が変わって、どう変わってるか。

――――――・・・・・・・・・・・・解り、たくないのかも知れない。





は、力無く呟いた。




















 





 













子供は成長するんだよ。
 





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