驚いた、なんて。 そんな軽々しいモノじゃない。 (なんで。) 泣いて泣いて泣き続けて。その人に一生分の涙を捧げてしまった。 (どう、して、) その人が居なくなってしまったのは足手まといになった自分の所為だと、気付いて悔いて悔いて悔い続けて。 自分の事が、嫌いになった。 ズタズタにしてやりたくて殺してやりたくて。 だけど約束してくれたから。すぐ戻るって、言ってくれたから。 その人が綺麗だと可愛いと大好きだと、言ってくれた自分を生かし続けて。 だけど。 直ぐになんて帰って来てくれなかった。 1年は。洞窟の家の中で待ち続けた。 2年目。あんな事2度と起こらない様にしなきゃ、と強さを求め出した。 3年目。まだ帰ってこないあの人との思い出がいっぱい詰まった洞窟の家にい続けるのが、辛くなった。 4年目。とうとう洞窟の家から逃げ出した。 そして、5年目。 待って待って待ち続けて。その人を待つ事に疲れて諦めてしまった。 (なのに、なんで、今更!!) 身体の奥底から沸き上がったのは、憎悪だ。 諦めてから1年。漸く心の折り合いが付いてきていたのに。 漸く。彼を、思い出にできそうな、気がしていたのに。 「ヒソカ!!」 彼が、呼ぶ。自分の名前を。 嬉しそうに。心底、嬉しそうに。 「会いたかった!!」 どの口が、そんな事を言うのか。 帰って来なかったのは、彼なのに。 自分を捨てたのは、彼なのに。 ずっと、死んでしまったんだと。思っていた。思い込もうとした。 けれど彼は強かったから。自分の知る誰よりも、強かったから。 ――――――だから自分は、捨てられたんだと。 そう思ってしまうくらい、あんな事で彼が死んでしまうなんてありえない事だったから。 「ヒソ――――――」 「・・・・・・軽々しく呼ばないでくれないか◆」 両腕を広げ、その中に自分を囲おうとする彼に、ヒソカはトランプを投げ付けた。 ソレは、彼――――――の頬に紅い筋を作って、遠い壁に突き刺さる。 はぎちりと固まった。喜色を浮かべていた金の目が、ゆるゆると驚愕に変わって行く。 「・・・・・・ひそ、か・・・・・・?」 「呼ばないでって、言ってるんだよ★」 今度はの喉に。 咄嗟にトランプを掴んだものの、の指に痛みが奔って。 「・・・・・・・・・・・・ど、して・・・・・・・・・・・・」 「どうして?◆」 呆然、と呟くに、ヒソカは嗤う。うっそりと。 「コッチが聞きたいね★ボクを捨てたクセに、今更ナニをしに来たの?◆」 「ちがっ、捨ててなんか!!」 「ナニが違うの★事実でショ?◆」 「だから違ぇって!!」 「ウルサイな★」 再び、ヒソカの手からトランプが投げられた。 けれど、の額に突き刺さろうとしたソレはさっきの様にアッサリ止められて。 「聞いてくれ!!ヒソカ!!」 「・・・・・・聞かないし何も聞きたくない。」 すこん、と。ヒソカの顔から感情が抜け落ちる。 なのに、を見詰める青い目は、強い強い想いが渦巻いていた。 怒りと、憎しみと。そして絶望の想いが。 「アナタは、ボクを捨てたんだよ」 (なのに。どうせ捨てるのに、どうして拾ったの) 「ソレが、事実なんだよ」 (なのに。どうして今更、出てきたの) このまま。自分の前に出てきてくれなかったら。何時か忘れていけたのに。 失って。取り残される痛みを思い出す事も無かったのに。 ――――――彼と。何より己自身への憎しみを、再び滾らせる事すら、無かった。 「2度とボクに近付かないで。話しかけないで――――――大っ嫌いだ、アナタなんて」 静かに静かに言い捨てて。 ヒソカは、しん、と息の根すら押し殺した会場の中。愕然としたの顔を見る事無く、踵を返した。 「・・・・・・・・・・・・ハタで聞いてたらモロ痴情の縺れ、だなー。」 何処かから聞こえた呟きに、トランプをお見舞いして。 |
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うんホント聞いてたらチジョウのもつれ。 | ||
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