の今生≠フ実家はお城である。

義父は一国の主である。

まあ、平たく言ってしまえば。

世が世なら王子様、な立場の人なのである。





そんなが、ちょっと異世界行ってくるよしかも無期限で、なんてサラッと言ったって、立場を考えれば無理な話である。

本来ならば。

だが幸か不幸か、の義父を名乗り出てくれた人物は、世間一般の普通≠ネんか笑って蹴飛ばすキテレツな人で。





の息子?なら俺の孫だな。良し、サクッと迎えに行ってサクッと連れて来い。」





が一通りの説明をした後。

あっさりさっくりすっぱりと、ソレはソレはもう簡単に北条氏政公は言ってのけて下さった。





イヤイヤは確かに養子だけどは飼い犬(「だから犬じゃねぇって狼だって!!」)だし。

簡単に言ってくれるけど界≠渡るってけっこー難しいし。

つかソレ以前に異世界云々にはツッコミなし?ねぇナシ??

なんて、言いたい事なんかにもにもたくさんあったが。





思えばこの人、「オモシロそうだから」って理由で『鬼子』と呼ばれてたを養子にしたんだよな、とか。

戦の所為で妖怪跋扈してるなんてマユツバな話もさっくり信じたよな、とか。

が初めて人に化けた時も、そんな驚かなかったよな、とか。

過去を振り返れば振り返るほど、この人のキテレツぶりは今に始まったことじゃなかったので。





結局、2人は何も言わずに界%nりを決行する事にした。

勿論、2人と氏政公の話の場に偶然居合わせ胃を押さえてた重鎮さんには、胃薬差し入れ済だ。





界≠ニ界≠意図的に繋ぐ事は、ドチラの界≠ノも負担を掛ける。

その負担を出来るだけ軽くする為に、色々と入用なモノは2日で揃えた。

竜のヒゲは奥州筆頭から毛抜きで引っこ抜いてきた。

白虎の爪の代用として甲斐の虎のをもらった。

戦乙女の涙は軍神のトコの何時もバラ背負ってるヲトメに泣いてもらって手に入れた。





そして、3日目の朝。





がりがりがり、と。

枝っきれで地面に陣を書いたが満足そうにソレを眺める。

直径2メートルにも満たない円の中に、正三角形とびっちりのルーン文字。

その円と三角形が交わる箇所には、あのヒゲを撒いて。





「うし。完成。」

「・・・・・・・・・・・・なぁ、

「んー?」

「・・・・・・その、大丈夫なんか?代用品がソレで・・・・・・」

「あー。じょぶじょぶ。むしろコッチの方が威力すごいから。」





幻獣聖獣神の乙女よりも凄いって何だ。

思わずツッコミ入れそうになっただが、下手に返事が返ってきたりしたら変に怖いので言葉を呑み込む。

そんなを知ってか知らずか、は上機嫌でを呼んだ。





ー。首飾りちょーだい。」

「・・・・・・後で、返してくれるんだよな?」

「んー。返すかえすー・・・・・・失敗したら。

「ってナニその失敗したらって!?成功させろよ頼むから!!つか成功したらコレ返ってこねぇの!?

「うんだってソレが扉になるからさー。」

「げっまじ!?聞いてねぇぞそんなん!?」

「そりゃ言ってないから。

「あっさり言うなぁぁああああ!!」





のほほーん、と言うは涙目だ。

ソレもその筈で、にとってこの首飾りはとてもとても大切なモノだから。

だけどはにっこり笑って、さあ渡せ直ぐ渡せさっさと渡せと手を出してくる。





ふるふる首を振ってはずりずり後ろに引いた。

ずずいとが迫って手を差し出す。





「・・・・・・。ソレが無いと扉開かないよ?

「・・・・・・ぐっ。で、でもっ、コレはチビが初めて俺に作ってくれた・・・・・・っっ」

「扉開かなかったら二度とそのおびちちゃんに会えないよ?

「・・・・・・ぅぅぅうううう・・・・・・!!!!」





笑顔でサックリ恐ろしい事をのたまって下さるに、とうとうも折れて。

未練たらたら、ほんっとーにたらたら、ぎしぎし硬くなった腕を動かしの掌に首飾りをポトリと落とす。

まいどありー、と超絶サワヤカな笑顔で笑って、はるーるるーと背中に青い縦線を背負い。





「さーて。そんじゃいっちょ、繋げますかー。」





戦利品片手にますます機嫌の良くなったが、てっ、と地面に描いた円の真ん中に立つ。

そしてを振り向いた、の顔にさっきまでの飄々さは無かった。

その事に、もまた背筋を伸ばしてを見据える。





、円の中、俺の隣に。圧がかなり掛かるから覚悟しとけ?」

「らじゃ。」





言われるがままに、の隣に移動する。

首飾りを持ったまま、すい、と上がったの腕。





――――――もうすぐ、会える。

必ず、会いに行く。





ひとつ瞬きを落として、は深く、息を吐いた。




















 





 













お義父さまはフトコロ深い人。
 





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