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「――――――って、ワケなんだけど、よ」

「ふーん」

ってソレだけ!?ソレだけなの感想!?!?





穴にハマってから亀裂にハマるまで。

とつとつと(しかし半分以上は愛息子の自慢だったが)話して聞かせた秋良は、世癒の反応の薄さに思わずツッコミを入れる。





そんな世癒はと言えば、話の途中で詳しく聞く事を諦めていた

だって、コッチの聞きたい事から悉く脱線してくれるのだ。

もーすーぱーえくせれんつはいぱーぐれーとな可愛らしさだの。

さすがウチの子世界一いや宇宙一!!だの。

話の軌道を元に戻すのにコレほど苦労した事が未だ嘗てあるだろうか。いや、無い。





再びぎゃいぎゃい喚きだした秋良に、大仰な溜息を吐く。

確かに秋良はカワイイものが大好きだ。ソレは世癒も知っている。

けれどココまで養い子に対して親バカ全開になるだなんて。

変人を見る白い目で見ても良いだろうか。うん、良いに違いない。

けれど何時までもぎゃいぎゃい喚かれるのもうるさいしうざいだけなので。





「――――――で。秋良はどうしたいの。」





ひたり、と真剣に秋良を見据えたら。

秋良はぴたっと喚くのを止めた。

そんな秋良に、世癒は溜息を織り交ぜつつもう一度問う。





秋良は。コレからどーすんの。」





偶然穴にハマって。偶然向こうに行ってしまって。

偶然子供を拾って育て始めて。

そして偶然。亀裂を見付けて引き摺り込まれて。

多分コチラに戻って来れたのは、世癒がコチラにいて秋良が世癒の眷属だから、なんだろうけども。





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・お、れは・・・・・・・・・・・・・・・・・・」





真剣な。ひたりと見据えられた世癒の目に。

秋良はぐぐっと唇を、噛む。





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺、は・・・・・・・・・・・・・・・・・・っっ!!」





秋良は元々、この世界の神の映し身で。

世癒の眷属に成りはしたものの、この世界の一部、で。

〝界〟と〝界〟が繋がってしまう事の危険性も、解っている。

けれど。





「・・・・・・・・・・・・かえ、らなきゃ・・・・・・・・・・・・っっ」





泣いて、いた。

腕を伸ばして、求めていた。

離したくなかった。離れたく、なかった。

なのに置き去りにしてしまった、愛しい養い子。





「・・・・・・帰らなきゃ・・・・・・っっ、アイツすっごい甘えたで寂しがりで泣き虫でっっ、だから俺っ、アイツんトコ帰らなきゃ・・・・・・っ」





声が、震える。

最後の顔を思い出して、涙が零れる。

ぼろぼろ、ぼろぼろ。堰を切った様に。





そんな秋良に、世癒は小さく息を吐いた。





秋良は世癒と同じくらい、いや世癒以上に思い切りが良くて潔い。

自分が死んだのは自分の所為だと笑って豪語出来るのが良い例だ。

そして、大切なモノとそうでないモノの扱いの差なんて、夜刀とタメを張る。

どーでもいーヤツなんていくら死のうが何しようがどーでもいー、なんてのは世癒も同じだが。

ソレでももし、を考えて殺しを躊躇する世癒とは違って、秋良はサックリ殺しが出来る。





更に付け加えるならば。

秋良はLikeとLoveの違いが解らない。





腐女子な姉を持ってしまったからか元々そういう性格なのかは知らないが。

秋良は、生前異性に興味のキの字も抱かなかった。

ソッチよりも、ゲームに漫画、あとは友人と遊ぶ事に時間を使っていた。

まあその辺は世癒も似たりよったりだが





けれど、ソレこそが世癒と秋良の決定的な違い。

28で人間止めた世癒は、まあソレナリに異性と関係を持った事もあった。

純粋なモノではないが、夜刀という永遠の半身も得ている。





かたや、17歳で人間止めた秋良にそんなモンは一切ない

両親や姉に対する親愛は持っている。

ケーキやカルボナーラ、好物もある。

ゲーム好き、漫画も好きと趣味もある。

ダチとバカ騒ぎするのは楽しいという、友愛なんてのも知っている。

けれど、ソレは全て好意から成る感情だ。

世癒に懐くのだって、世癒の本性が宝玉だと知っている神だからこその本能で。





そんな秋良が、初めて愛情を向ける子。

ちょっと、いやいやかなり、行き過ぎではなかろうか、とは思えども。

どれだけその養い子を大切に大切に、愛し育ててきたのかが解る。

自分にだって、可愛い愛し子がいたから。解る。





「――――――んじゃ。作るか、扉」





だから。

会わせてやりたい、帰してやりたい、と思うのは。

ごく自然な、感情なのだ。





世癒の言葉に、秋良はバッ!!と顔を上げた。

人の姿を取る秋良は贔屓目を除いても大層な色男の部類に入るのに。

ぼろぼろ泣いて鼻水まで垂らして、情けない顔をしている。





「取り敢えずあにさま達に事情説明して。材料揃えて準備して――――――ああ、場所もいるな」

「えっ、ちょ、ちょっとちょっと世癒!?!?」





アレとソレとコレと。呟きながら立ち上がる世癒に秋良は慌てて追い縋る。

「扉ってナニ!?つか帰れんの!?ねぇ俺帰れんの!?」

がっしりと。着物を掴んで詰め寄れば。





「ああ、うん。だってソレ、向こうのっしょ?」

言いながら、世癒が、すい、と指に引っかけたのは、秋良の首に掛かる首飾り。

養い子が作ってくれた、キレイな琥珀の首飾りだ。





「ソレで〝界〟を特定出来る。そして俺は〝宝玉〟だ。〝界〟を渡る術なんて幾らでも知ってる」





に、とオトコマエな顔で。

あんまりにもあっけらかんとのたまった世癒に、秋良はそのままほけんと間抜け顔を曝したが。





「っっあいっしてるぜ世癒ーーーーっっっっ!!!!」

「うっぎゃあ!!イキナリ抱き付くな押し倒すなこのバカ犬ーーーー!!」





感極まって腰に飛び付いて畳の上に倒してすりすりしたら、げいんと容赦無く殴られた。




















 





 













かえれますよ。かえれますとも、ええ。
 





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