俺の本性(?)はだ。

しかも神様が常世に降りる時に使ってた仮の姿。

だから、まあ、何と言うか。





「森の奥で妙な気配?」

『そうそう。そーなんです』

『奇妙過ぎて夜もおちおち寝てられない』

『お願いします何とかして下さいよさん』





神様の映し身だから、動物達には基本好かれるし言葉も解るってワケだ。





ってなワケで、やってきました森の奥。

「・・・・・・・・・・・・パパ」

くっついてきたチビが、警戒も顕わに俺を呼ぶ。

「ああ」

俺はソレに短く返事を返して、油断無く目の前を見据えた。





――――――ちっくしょ。俺が鍛えてるっつってもチビは所詮人間だ。

やっぱ置いて来るべきだった。





ぐるるる唸って牽制する。

理性だとか正気だとか全部全部吹っ飛んで、俺等をエモノとしてロックオンして下さっているのは異常な形に変形してしまった獣や虫。

ヤツ等がそんなんになってしまった原因は、直ぐ解る。





――――――何で、こんなトコにあるんだか。

空間の歪み。次元の、裂け目が。

しかも、なんで俺は気付かなかった。

こんなに澱んだ瘴気が裂け目から漏れてる事に!!





異形と化した獣達が飛び掛かってきた。

「ヒソカ!!迷うな!!」

「っ、けど!!」

「ヤツ等はもう駄目だ!!瘴気に侵され過ぎてる!!もう元には戻らねぇ!!」

爪で切り裂き牙で砕いて、踏み付け薙ぎ倒しヤツ等を屠る。





中にはチビに懐いてた山猫もいて、チビは泣きそうな顔をしたが。

「放っときゃ今以上のバケモンに堕ちる!!せめてお前の手で解放してやれ!!ヒソカ!!」

俺がそう言えば、ぐ、と意を決して護身用に持たせてたナイフでソイツの喉を掻き切った。





「・・・・・・っっ、この界≠フ管理者は・・・・・・っっ!!一体ナニやってんだよ・・・・・・!!」





こんなでけぇ穴!!しかも漏れ込んでる瘴気まで放置なんて!!

下手すりゃ界≠フ崩壊にも繋がりかねんだろーがよ!!

はっ!?もしかして俺がコッチに来た理由ってコレか!?

自力じゃもーどーにもならなくなっちまったからの代わりに俺を召喚したってクチか!?

けど生憎だったな俺がジョブチェンジしたのは戦神だ!!

だから浄化とか治癒とかは出来ねーんだよ!!





「・・・・・・っつっても、見付けちまった以上放っておくワケにもいかねぇんだよ、な!!」





でかい図体のクセに意外な速さで突進してきたイノシシに、一閃喰らわせ亀裂を見据える。

改めて見れば、人間バージョンな俺の身長くらい。

普通は空間に歪みが出来る事事態が異常だから、コレっくらいだとじゅーぶんでかい部類だ。

漏れ込んでる瘴気も濃い。





「イチかバチか・・・・・・!!」





尻尾を振り上げる。

浄化でも治癒でもねぇが、俺の持つ力の中で一番ソレに似てる力。

壊れたモノ、失われたモノを再生する筆神。





「蘇神、がりゅ――――――!!」





力を込めて、亀裂に向かって尻尾を翳そうと。

した、時だ。





「うわっ!?このっ、はなし、て!!」

「!?ヒソカ!?」





上がった声に思わず振り向く。

ソコには、チビの脚に絡まって、亀裂へと引き摺り込もうとする大蛇の姿。

ゴラてめぇナニやってやがる俺のチビの生足に!!

あっイヤちがうそーじゃねぇ俺!!

ソレはまずいって亀裂の向こうがドコに繋がってんのかは知らねぇが、こんだけの瘴気なんだマトモなトコじゃねぇ!!





「ぐぁるるるぅうう!!」





俺は迷わず大蛇に飛び掛かった。

爪で頭を地面に押え付け、のたうつ胴に牙を穿って。

首を振ってチビから剥がし、ぶん!!と近場の樹に叩き付ける!!

チビの生足に巻き付いたからって恨みこもってねぇぞ!!

ただチビを助ける為にやってんだぞ!!

視界の端でチビが大勢整えた。よし!!





――――――ソレが、油断、だったんだろう。





「っう、わ!?」

ぐい!!と。引っ張られる感覚に、俺は蹈鞴を踏んだ。

「パパ!?」

体制崩した俺に、慌ててチビが駆け寄ろうとする。

「くんな!!」

がりがりと、地面に爪を立てて貼り付きながら、俺は怒鳴った。





――――――そして、見る。

俺の後ろ足を、尻尾を。

がしりとまるで掴むかの様に、包み込む濃ゆい瘴気。





――――――・・・・・・・・・・・・やべぇ引き摺り込まれる!!





がりがりがり!!

「パパ!!ぱぱぁ!!」

爪痕を残して亀裂へと引き摺られていく俺に、チビが泣きそうになりながら走り出そうとする。

「くんなっつってんだろ!!」

「イヤだっ、ぱぱぁ!!」

・・・・・・ちっ、パニクってやがる。





「大鷹!!ヒソカ押さえろ!!」

『がってん承知だぜい旦那ァ!!』





空から俺等の様子を見てた大鷹にひと声掛ければ、江戸っ子口調で急降下したヤツがばさっとチビの目の前で翼を広げた。

つか前から聞きたかったんだがお前何で江戸っ子口調なんだ!?

しかも俺旦那って呼ばれる様な歳じゃねーから!!

気持ちは何時でも若ぇから!!





『落ち着きなせぇ、坊!!』

「おおたかっっ、ジャマしない、で!!」

『坊が行っても何も出来ねぇでしょうが!!』

「ジャマをっ!!するなぁ!!」





「ヒソカ!!」





俺の怒号に、チビの身体がびくりと跳ねた。

ぼろぼろと、大粒の涙が大きく開かれた目から零れ出す。

・・・・・・んっとに、泣き虫なトコは相変わらずだな。






「――――――お前等はココから離れろ」






ずるずるずる。がりがり、がりり。

捕まって、引き摺られて。

胴が呑み込まれた・・・・・・時間が、ねぇ。





「・・・・・・・・・・・・や、だ・・・・・・・・・・・・っっ」





弱々しく、泣いてクチビル戦慄かせて。

そんなんだから、心配で心配で、おちおち離れてもいられねぇ。





「なぁに、直ぐに帰ってきてやるさ」





もう首から先しか出てねぇ情けねぇカッコで。

だけど笑って。こんなの何でもねぇ様に、笑って。

お前は、俺の心配なんざしなくて良い。

俺がどんだけ強いか、お前が一番解ってっだろ?

だから。





「だから待ってろ。――――――大鷹、ヒソカを頼む!!」

『・・・・・・っ、がって、んっ、しょうち、でさぁ!!』





揺れる、だがハッキリと返してくれた大鷹の声に満足して頷けば。

どぷん、と。とうとう頭まで瘴気に浸かる。





「パパ!!・・・・・・いやぁぁああああ!!!!」





――――――最後に聞こえた悲鳴は、とても遠かった。




















 





 













トツゼンの別れ。
 





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