あんな事があってから、チビはホントにウチ(洞窟)から滅多に出なくなった。

俺が拾ってきたり買ってきたりした本読んだり、遊ぶにしてもテーブルゲームばっか。

しかも一番のお気に入りはトランプゲームときた。

・・・・・・・・・・・・トランプなんざ2人でやっても楽しいのは神経衰弱くらいなモンだってのに。





や。ソレが悪いとは言わねぇよ?言わねぇけどな?

こもってばっかいたら身体弱くなんぞ、って事だ。





チビはちっちゃい。

腕も脚も細くて、日にあたろうともしねぇから肌もなまっちろい。

今年で8つになるそうだが、街の同じくれぇの子供と比べても、ちっちゃい。

ネグラが森ん中の洞窟なモンだから、山菜動物魚に果物と、色々ちゃんと食わせてるけど、ソレでもちっちゃい。

天空闘技場で小金稼いでからは栄養考えて野菜買って料理してコレまたちゃんと食わせてるけど、まだまだちっちゃい。





ひとつだけ文句があるとするならば、だ。

抱き締めててドキドキすんだよこのやろー!!





そりゃ初めて見つけた時と比べたら程良く肉付きも良くなってっけどな!?

いくらなんでも ほ そ す ぎ だ!!

体質なのか元々なのか知らねーけど、骨格だって細いしな!!

もー細っこい腕とか脚とか、俺が抱き締めるたんびにこーばきぃ!!っていっちまわねーか心配で心配で!!





オマケに体力もない。

まあずっとアナグラん中で本とトランプお友達にしてっから仕方ないっちゃあ仕方ないけどな!!

ちょっと川辺まで歩いて行くだけで息切らすってどんだけよ!!





「つーワケで、だ。」

「?」

「今日からお天気のイイ日はお外でうんどーするぞ、ヒソカ」





腕組み仁王立ちで踏ん反り返って堂々宣言した俺に、チビはきょとんとした目を上げた。

ソレからちょっとだけ首を傾げて、持ってた本を見て。俺をまた見上げて。





「や。」





ふいっとそっぽを向かれました。

うん解っちゃいたけど何だその「や。」ってのは。

カワイすぎるぢゃないかこんちくせう!!





・・・・・・はっ。

いやいかん。ココは心をオニにして!!





「ヤじゃねぇお外で運動すっぞ」

「やーっ」

「じゃねぇと強くなれねぇぞ?」





ぴたっとチビが止まった。

俺はそんなヒソカの前にしゃがみ込んで、ぺむぺむ頭撫でながら更に押す。





「イイかヒソカ。お前は賢い子だから解ってると思うが、世の中にゃ怖い事がたくさんある」

山火事だとか水害だとか。まあその辺は自然の驚異、だが。中には人の絡んだ人身売買とか戦争とか、な。

「コッチの都合なんか考えねぇイヤなヤツもアブナいヤツもたくさんいる」

あんなド外道共とかド外道共とか野獣とかド外道共とかな。

「そーゆー、怖い事とかアブナいヤツとかから自分を守る為にゃ。頭がイイだけじゃなく運動出来る様になってねーとダメなんだよ」





本ってのは知識を与えてくれる。だから読むのはイイ事だ。けどソレだけじゃあ足りねぇのも事実。

こーした方がイイあーした方がイイ。色々載っててもな、いざそーする時にソレが出来るだけの力がないと意味がねぇ。





「『お前がお前のまま。誰にも屈さず侵されず。他でも無い、お前自身が決めた道を行く為に』」





思い出すのは、あの言葉。

色んな悲鳴を聞き続けて。

辛さも痛みも絶望も、醜い人の心の何もかもを見てきたあのヒトの。





「『世界の不条理も理不尽も、笑って蹴り飛ばして自分の望む未来を手に入れる為に』」





なのにいっつも元気に飄々と。

腐った思考で何でもかんでもネタに走ろうとするが。

たまに見せる、嘘偽りない、人を想って紡がれた真剣な。





「『望む望まないは二の次で、力は絶対必要なモノだ』」





言ってる事解るかー?と首を傾げて顔を覗きこんだら、ヒソカはこくりと頷いた。

うん。良くぞこんな素直でかわいい子に育ってくれた。

おとーさんうれしーよ!!





「んーじゃ。早速川まで行くか。今日のメインは魚に決定だ」

立ち上がってぐりぐり撫でたら、チビはぺいっ、と本を投げ捨てて俺の腕にぎゅーっとしがみついて来た。





「ぱぱ」

「んー?」

「ひそか、つおくなる?」

「そーだなー。いっぱい食って、いっぱい寝て。いっぱい運動していっぱい本読んだらな」

「いっぱい?」

「そー。いっぱい。でもヒソカ食うのと運動はまだちょっとだからな。すこーしずつ、増やしてこうな?」

「ん!ひそかいっぱいする!!でね、でねっ。ぱぱみたい、つおくなる!!」





・・・・・・ぁぁあああああっっっ!!なんっっっってカワイイのこの子!!

そんなんしたら抱き上げたまま離せなくなくなって困るぢゃねーか!!





にこぉっと笑って俺を見上げて、嬉しいセリフを吐いてくれやがった我が子に。

俺はくぅぅううっっ!!と、ヨロコビを噛み締めた。




















 





 













おとーさんがイタについてきた・・・かな?
 





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