・・・・・・月日が経つのは早いモンですな。

イヤもーどこのジジィだよをい、ってなセリフだが。

ほんっと、はえーよ時間流れんの。





だってアレからもー4年近く。





4年だぜよ・ね・ん!!

髪なんて首くらいまでしかなかったのに何時の間にか背中まで伸びてっし!!

チビは今もチビだけど片手で軽々抱き上げてた前とは違って両手で抱き上げなきゃなくなってっし!!





「ぱぱ?」





きょとん、とした顔で俺を見上げるチビがくいくい繋いだ手を引っ張る。

・・・・・・はうっ。し・ふ・くvvの時・・・・・・!!

なんってこの子は!!俺を喜ばせるのが上手いのか・・・・・・!!





あんなド外道共あんな目に遭わされたせいか、最初の1年くれぇはホンットなんにもしゃべんなかったのに。

俺が言葉覚えて文字も覚えて、コッチの言葉でイロイロ話しかけても、だ。

ソレが今じゃ「ぱぱvv」だもんなぁ。嬉しいじゃねーかぅえへへへへ。





・・・・・・・・・・・・ぅおっと。思わず含み笑いが脳内だけじゃなくマジに口から出てくるトコだったぜ。

いっくら何でもこんな街中でぐふぐふしてたら変人扱いだ。

ソレっくらいの常識はまだ俺にもある。うん。





「ぱぱ」

くいくい。また引っ張られた。

すとん、としゃがみ込んで、チビを見る。

「んー?なんか欲しいモンでもあんのか?」

「ん。」

こくん、と頷いて。指差した先はお菓子コーナー。

「よし。俺は野菜見てっから欲しいの3つ持って来な。いいか、3つだぞヒソカ?」

「ん!」





ぱぁっと嬉しそうに笑って、ててて、とお菓子コーナーに走って行くチビ。

いやぁ、ソコラのガキ共なんか目じゃないね。やっぱウチの子一番カワイイよ、うん。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つか、なんであんなカワイイのにあんなんとおんなじ名前なんだ。





チビが初めて俺の前で言葉らしい言葉をしゃべったのは、俺がチビを拾ってから1年くらいしてからだ。

さて寝るか、って時に、「ぱぱ」、っつって俺にしがみ付いたのが、初めて。

――――――その時はホンット俺、モラルとか道徳とかゴミ箱に投げ捨てそうになったぜ。





けどその後で、ちと、いやかなり、どっひゃあ!!となった。

チビの、名前で。





そりゃな?俺の耳ってばすっげイイかんな?

ラジオやらモニターやらから『ハンター協会』だの『ハンター』だの流れた時には「まさか?」なんて思ったよ。

ゴミ収集場で拾った世界地図に『東ゴルドー』とか『パドキア共和国』とか見つけた時には「え、まじで?」て頭抱えたよ。

『天空闘技場』なるモンを見つけて、おっひょおvvと小躍りしながら小銭稼いだのなんか記憶に新しいよ。

だから十中八九、ココがかの世界だってのは、薄々気付いてたんだよ。





だからってあり得ねぇだろ!!

まさか!!俺の拾ったチビの名前が!!

もーこの世のモンとは思えねぇくらい愛くるしくて可憐で天使みたいに清らかなあの子が!!

あの某殺人快楽マッドでペド野郎なピエロとおんなじ名前なんて!!

ごらぁ実の親!!なんっでそんな名前付けたタコ殴りにしたる出てこいやぁ!!





・・・・・・・・・・・・はっ。いかんいかん思わずジャガイモ握り潰しそうになった。

品物はお金払うまで所有権がお店にあります。ヨソ様のモノ勝手に潰しちゃいけません。

そもそもジャガイモ買う予定ないしな。





んー。にしても、ヒソカおせーなー。

迷ってんのかね。でも欲しいモン全部なんて甘やかすワケにゃいかねーし。





からからカートを押してお菓子コーナーに行ってみる。

・・・・・・・・・・・・あ、れ?いねぇ?

ああ、んじゃ野菜コーナーかな。行き違ったか。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・が。野菜コーナーにもいなかった。





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ドコ行ったんだ、ヒソカのヤツ」





あの子は賢い子だから俺の言い付けはちゃんと守る。

加えて人見知りだ。知らない人に声をかけられたりしたら、速攻俺んトコ走ってきてびたぁ!!ってくっつく。

迷子・・・・・・ってなるくらいこの店広くもねーし・・・・・・





ふ、と顔を上げた。

ガラス張りの向こう、外の通りが偶然視界に入る。





「――――――!!」





俺の行動は早かった。

カートなんかほっぽりだして、ぶつかっちまった主婦の人に謝罪も言わずに店の外へと走り出す。

後ろでなんかキーキー言ってっけど無視だムシ

んで、スピード上げて、走り出した一台のバンのタイヤに隠し持ってた太めの針を投げ付けて。





ぱぁん!!とタイヤがパンクした。

きゅるきゅるとスピンして、がつん!!と電柱にぶつかったバンのドアの取っ手をガシッと掴み。

べきゃ!!とすんげぇイイ音がした。

開けるどころか剥がしたそのドアを、ぺいっと後ろへ投げ捨てる。

そして、顕わになった車の中から。





「てめぇ俺の息子にナニしてやがんだゴラァァァアアアッッッツ!!!!」





子供に覆い被さる男の襟首掴み、引き摺り出して放り投げ。どがぁ!!と、盛大に蹴り飛ばしてやった。

男は血反吐を吐きながら、面白いくらいに吹っ飛んで地面におねんねする。

周りの通行人達が、イキナリの事でギチッと固まったけど気にしない。。

俺はガチガチ震えながら拳銃引っ張り出してきた運転席の男の手首を掴み、ばきゃ!!と骨折って拳銃を男の頭に向けて。





「ぎゃぁぁああああ!!!!」

「ぱぱぁあ!!」





聞くに堪えない醜い悲鳴に、被さる様に愛しい声。

破かれたシャツを腕に引っかけただけのヒソカが、飛び付いてきた。





「・・・・・・うぇっ、ぱぱ、ぱぱぁ・・・・・・っ」

「――――――大丈夫だヒソカ。もう、大丈夫だからな」





しがみ付いて泣きじゃくるヒソカをぎゅーっとぎゅーっと抱き締めて。

通りの色んな店から何から、顔を出しては何事だとザワザワ野次馬が増えていく。

遠くから、ふぁんふぁんふぁん、とパトカーの音。

意識を取り戻したらしい、おねんねしてた男がげほげほ血を吐きながら俺を見る。





――――――ああ、死んでなかったのかよアイツ。





俺はヒソカを抱き上げたまま、つかつかソイツに近付いて、思いっきり足を振り上げた。

「ナニ生きてんだよ。死んじまえよ、てめぇ」

やっとこさ上体を起き上がらせたソイツを、がつんっと蹴り倒して転がす。

「その方が世の中にとってもイイんだからよ」

きゃあ、とか外野から悲鳴が上がったが、んなもん知るか。

「てめぇみてぇなのが生きてたって害になるだけなんだからよ」

転がしたソイツの頭を踏み付けぐりぐりと力込めて。





「死ねよ、てめぇ」

「ぱぱぁ!!」





――――――っっ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やっべ。やっちまった。コレ以上ねぇってくらいキてたよ。

ヒソカの声が無かったら俺絶対コイツの頭踏み潰してた。

いやこんなヤツ殺しといた方が絶対イイんだけどな。

場所悪いよなぁ、やっぱ。





「・・・・・・ぱぱ、かえる・・・・・・っ。おうち、ひそかかえるぅ・・・・・・っっ」

「んー、そーだな。ああ、でもお菓子どーすんだ、ヒソカ?」

「・・・・・・やー、ない・・・・・・っ。すぐ、ぱぱとひそかかえるのぉ・・・・・・っっ」

「そっか。また今度買いにこよーなー?」

「・・・・・・・・・・・・やー・・・・・・・・・・・・!!こな、いっっ。もー、こないぃい・・・・・・・・・・・・っっ」

「いやいやお前一生ウチから出ねーつもりかよ」





ぎゅーっと。

俺の腰と首に脚と腕巻き付けてしがみ付くヒソカの背中をぽんぽんと軽く叩きながら。

俺は潰れた車もひいひい悲鳴上げてる男共もざわついてる野次馬共も無視して歩き出した。





ヒソカがホントに一歩もウチ(洞窟)から出なくなったら。

アイツ等ぜってぇ見つけ出して踏み殺してやる。




















 





 













カワイイ子はかどわかされてナンボ。<イヤ違うって。
 





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