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怖い。

こわい。

コワイ。





あたしの手は震えてた。

苦無を構えて、カタカタと。小さく小さく、震えてた。

あたしの膝は、哂ってた。

紅先生の張ってくれた結界の中でガクガクと。立ってるのが不思議なくらい、哂ってた。





あたしだけじゃ、なかった。





チョウジもヒナタもシノも。ガタガタ震えてた。

キバもシカマルも、作った拳がぶるぶる震えてた。

ナルトもサクラもサスケくんも、顔を、真っ青にしてた。





そんなあたし達の視線の先には。

切られて突かれて血を流す、あたし達の先生。

先生達を殺そうとする、なんじゅうにんもの、黒装束。





忍、だ。

でも木の葉の忍じゃない。

木の葉の忍だったら。同じ木の葉のあたし達を殺そうとする、道理がない――――――!!





「ぐぅっっ!」

「っ、アスマ先生!?」





紅先生を庇って、脚を斬り付けられたアスマ先生が、がくっと膝を着いた。

その隙を狙って、振り下ろされた黒装束の、忍刀。

だけどその黒装束は、横からの衝撃に吹っ飛んで。

腕に肩に背中に太腿に。太い針を刺し突かれたカカシ先生が、蹴り飛ばしたんだと、一拍後に理解出来た。





怖い。

こわい。

コワイ。





辺り一帯の重い空気。

あたしだって、忍者のはしくれだから解るわ。

コレは殺気。黒装束達の殺気。

一言も言葉を発しないのに、とてもとても静かなのに。

先生をあたし達を殺すんだって、雄弁に物語ってる殺気。





ぎぃん!!と。カカシ先生の持つ苦無が黒装束の忍刀を止めた。

その背後から、他の黒装束がカカシ先生に躍りかかろうとする。

カカシ先生は力押しで受け止めてた忍刀を弾いて、間一髪で跳躍して背後からの一閃を避けて。

だけどその脚に手裏剣が刺さって、大きくよろめいて着地する。

手裏剣を投げた黒装束は、紅先生の投げる苦無にその喉を突かれようとして。

だけど、転がってた仲間の死体を、起こしてソレで受け止めた。





・・・・・・何なの、コレ。

どうして先生達が。あたし達が。こんな目に遭うの。

何なの、コレ。

こんな、血みどろになって音もなく戦って。死んだ仲間の躯すら盾にして。





コレが、忍?

こんな、こんなのに。

あたし達は、ならなきゃいけない、の?





怖い。

こわいこわい。

コワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワ――――――





「きゃあ!!」

「く、紅先生!!」





ハッ、と顔を上げた。

紅先生が、炎に巻かれてた。

あたし達を守ってる所為で、結界を張ってる所為で。大きく動けない紅先生が。

火は、直ぐに消えたけど。消えて、くれたけど。

結界を維持する、集中力を途切れさせるのには、充分で。





「いの!!」





アスマ先生の声。

気付いた時には、遅くって。

あたしの目の前には、忍刀を振り翳す、黒装束の――――――





「いの!!」





斬、と鈍い音がした。

あたしは、動けなかった。

ただただ、目を大きくして、見ているだけだった。





飛び散った、あか。

広げられた、細い腕。

揺れる、桃色。





とん、と。その桃色があたしの胸に落ちる。

ソレからずるずる、滑る様に、ずるずると。

あたしの身体も、一緒になってずるずる落ちた。へたり、と腰が抜けてしまった。

そろり、と手を伸ばす。白い頬、付いた血の飛沫に、指の先が触れる。





「・・・・・・いの・・・・・・ぶじ・・・・・・?」





薄く閉じかけた瞼の下に、綺麗な綺麗な、翡翠色。

色を失くした唇が、小さく動いてかすかに、笑って。

瞼が、落ちる。





「――――――いやぁぁああああ!!!!さくらぁぁぁああああ!!」





あたしの絶叫は。

多分この世で最も起こしてはならないモノを、呼び起こしてしまった。










 





 













聞くと見るではすっごい違う。だからついてけない時もある。

まあ、ちょっと前まではふつーの子供でしたから。この反応は当たり前かと。
 





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