『カカシ』――――――を通して聞いた嘗ての獣神の言葉に。

俺は、ああやっぱり勘付かれているのか、と思う。





彼女は、解っている。俺の守護者の性質を。

そして、俺が本当に守っている『華』が、誰なのかを。





別にソレは構わない。

堕ちたとはいえ、一度は神域にまで昇り詰めた魂だ。俺やの正体など、隠し通せるとは思ってもいない。

・・・・・・・・・・・・は、バレてるなんて思っないみたいだけど。





全く、いつまで経ってもアイツの自覚の無さは変わらないよな。

あの森だって。直接、隔離術を施した俺よりも、に愛でられようとして春を命を歌うのに。

――――――まあイイさ。アイツがどっか抜けてるのは今に始まった事じゃない。

俺がその辺もカバーすればイイだけの話だ。今までみたいに。





構うのは、他。

俺達の正体を、イルカが子供達が――――――人が、受け入れられるか如何か、だ。





葛葉は良い。彼女は元々獣だ。しかも一時は神とまで呼ばれていたんだ。

世界に成れなかった為に世界に愛され、愛されるが故に世界を癒し渡るのが宝玉の性質。

ソレを、彼女は階梯を昇り世界に触れた事で知ってる。

世界が愛する様に、神もまた宝玉を慈しむ。その例に漏れず、彼女も俺達を慈しむだろう。





だけど世界の一部でしかない人間はそうもいかない。

宝玉の、あらゆる命から愛される性質は、人間に対しても有効だ。

だけど人間は、良い意味でも悪い意味でも複雑だし。その、宝玉へ向ける愛情が、歪む事もある。

――――――宝玉の、一番最初の器を。誰にも渡したくないと殺してしまった、の始祖の様に。





あの男を思い出す時。は嘆きが憎悪が絶望が先に立ってしまうけど。

俺は、あの男が只私欲の為だけに。力欲しさに宝玉を殺したワケじゃなかったのを、憶えてる。

確かに力も欲しかったんだろう――――――けど。あの男が力よりも欲したモノは。

宝玉を愛して狂ったあの男は。永遠に、宝玉が自分から離れていかない様に、したかっただけ、だった。





あの男を。俺はとても愚かだと思う。

そして、未だに。とても愛おしい、と。思ってたり、するんだ。

――――――・・・・・・・・・・・・とはいえ、もう一度、同じ目に合いそうになったら速攻で消炭にしてやるけどな、相手のヤツ。





話が逸れたが。

まあ、要するに。俺が危惧してるのは。俺達の正体を知ってしまったこの世界の人間が、どういう行動を取るか、だ。

全く何も変わらないのか。畏れ拒絶し遠ざかるのか――――――其れとも、狂気に走って俺達、いやを捕え幽閉するのか。





葛葉の口から俺達の正体が洩れる事は無い、と思う。

彼女は人間の尊さも醜さも知っているから。

だけど、一生。というか、『カカシ』という人間としての寿命が尽きるまでは隠し通す、とも断言出来ない。

なんたってだし――――――ソレに。





「何時もすまんの、『影』よ」

「――――――いえ」





報告書を斜め読みし、俺に労いの言葉を掛けるじーさまに、ほんの少し目を細める。

・・・・・・・・・・・・こーゆー人種もまた、厄介だったりするんだよな。





「処で子供達の様子は如何じゃ?少しは慣れたのかの」

「はい、ソレはもう。あそこがあの子等の本当の家になるのも、もう直ぐですね」

「そうか、なら良かったわい・・・・・・それにしても、まさかサクモがカカシの為に家をこさえておったとはのう。しかもあの森の中に」





子煩悩なのは相変わらず。

けど、勘が鋭くて何考えてるかあまり読めない狸。

・・・・・・後に続けられた探りなんて、ぶっちゃけいらないわ、俺。





「念術、とか言うたか・・・・・・おぬしの操る術は」

「ええ。とは言っても陰陽術や退魔術などとは全く系統が異なるモノですし。廃れて結構経ちますので知っている術師も皆無でしょうが」

「じゃのう。知り合いの術師ですら知らなんだしワシも聞くのは初めてじゃ。いや、全く世界は広いモンじゃの」





悪霊退散の退魔師とか式神使いの陰陽師とか呪詛使いの呪術師とか神降ろしする祈祷師とか。

この世界にもそーゆーのはいて、全部ひっくるめて術師と呼んでるらしいが。

・・・・・・・・・・・・の念を応用したのは失敗だったかも知れない。

チャクラに概念が近いのに、オーラはこの世界では未知の力だ。





「まあ、あの子等に害が無くのびのびと過ごせるんなら何でも構わんが」





そう言いながら、このじーさはま俺を探る様な目で見る。

だから、思う。

がボロを出すより先に。

このじーさまが、俺達の正体に気付くかもしれない。





「時に『影』よ」

「はい」

「暫くおぬし等全員に任務は入れぬ。代わりと言っては何じゃが、の」

「・・・・・・・・・・・・はい」

「いや、ナルトがの?新しいウチの露天風呂、すっげーでっけーからじーちゃんと一緒に入れるな!!と言うんじゃ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はあ」

「サクラにのう。お世話してる花壇にお花が咲いたからおじぃちゃんぜひ見に来てね、と誘われたんじゃ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・へえ」

「サスケがの。おじいさまは何時遊びに来てくれるの?と聞くんじゃ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「3日後で良いかの。泊まりに行くのは」





――――――前言撤回。

やっぱこの人爺バカだ。

がボロを出す方が絶対先だ。





ちろん、とイイ年して可愛くも無い上目遣いを披露するじーさまに。

俺はでっかい溜息を吐いた。










 





 













年寄りが上目遣いなんかしてもカワイクナイと思う。うん。
 





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