戦が終わって。カカシおにぃちゃんが帰って来たら一緒に住む。

ソレは半年くらい前から、わたし達がおじぃちゃんにお願いしてた事。





おじぃちゃんが、ずぅっと前からおにぃちゃんの事に勘付いてたのは知ってたし。

わたしも、ナルトも。ふた言目にはおにぃちゃんおにぃちゃん、って。騒いでた時期もあったし。

・・・・・・何より。カカシおにぃちゃんも、おじぃちゃんにとっては。

おじぃちゃんがずっと気に掛けてた、サクモさん・・・・・・カカシおにぃちゃんのおとうさんと。

ナルトのおとうさん・・・・・・4代目が残した、可愛い孫の様な存在なんだもの。





だからわたし達がそう言いだした時。

あやつも中々煮え切らんヤツじゃからのう、なんて苦笑しながら。

ココはちぃと、この爺があやつの背を蹴倒してやるわい、なんて言って快く了承してくれた。





・・・・・・・・・・・・だけど。こうなるとは思ってもみなかったわ。

本当は、里の外れにある少し古い一軒家を安く譲ってもらって。

ソコにわたしとナルトとサスケと。あとカカシおにぃちゃんとイルカおにぃちゃんとで、住むハズだったんだけど。





縁側に腰掛けて、お庭で土いじりをしてるナルトとサスケとカカシおにぃちゃんを見る。

イルカおにぃちゃんは、ちょっと前におじぃちゃんのトコに行って。さっきまではわたしもあの中にいて、一緒にお花を植えてたんだけど。

ナルトが野菜の苗を出してきた頃から、ちょっと一服してくるわ、と言って離脱してきたの。





・・・・・・・・・・・・本当に。こうなるなんて思ってもみなかったわ。

まさかカカシおにぃちゃんのおとうさんが、おにぃちゃんの為に家を建ててた、なんて。おじぃちゃんでも知らなかったのよ。

しかもこんなに大きくて。お庭も広くて露天のお風呂も地下室もあって。この家を隠していたのがこの森で。

――――――いつか。カカシおにぃちゃんが帰ってくるまで守ってきた人まで、いて。





今、ナルトとサスケとカカシおにぃちゃんは、おにぃちゃんが持ってきた薬草の類を2人せっせと植えてる最中。

・・・・・・・・・・・・だけどあの草・・・・・・・・・・・・毒草に見えるのって、わたしの気の所為かしら・・・・・・・・・・・・?

「確かにアレは毒草ですけど。分量を間違えなければ熱冷ましにもなるんですよ」

――――――突然、声を掛けられて。びっくりした。





「・・・・・・・・・・・・もう、さん。気配消さないでって言ったじゃない」

恨みがましい目で見上げて言ってみれば、ソコにあるのは何時もと同じふわふわした笑顔。

「すいません。ついクセで」

むぅ、と膨れたわたしの隣に腰を降ろして。さんは、ぽん、とわたしの頭を撫でる。





さんは、カカシおにぃちゃんのおにぃちゃん。

わたし達より強くて。イルカおにぃちゃんですら全然歯が立たないくらいに強くて。

なのにこの人、実は忍者じゃないんですって。





じゃあ何なの?って聞いたら。念術使いですって、言われた。

念術って何?ってまた聞いたら。念を使った術の事です、って返された・・・・・・その念の事を聞きたかったんだけど、わたし。

だけど。要は不思議な術を使う人だよ、って。カカシおにぃちゃんが一言で終わらせちゃって、ソレ以上聞けなかった。





そんな人が、どうして木の葉で特別暗部なんてしているの?と違う質問をしたら、何時の間にかなっていたんですよ、って言われた。

ナルトのおとうさんに心を救われて。だからすこしでも彼の手助けになれたら、って力を貸していたら。

何時の間にか、『影』と呼ばれる様になっていたんです、って。

・・・・・・なんてマイペースな人なのかしら、って思ったわ。





その、さんなのよね。

何処から聞いたのか解らないけど。住むならこの家を使って下さい、ておじぃちゃんに言ったのって。





「――――――ねえ、さん」

「はい、何ですかサクラ」

ちら、と見上げてみると。さんはとてもとても穏やかな目でわたしを見てて。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わたし達、本当にココに引っ越してきても、良いの?」

ソレは。ずっと、思ってた事。





だってココは、大切な場所なんでしょう?

おにぃちゃんのおとうさんが、おにぃちゃんの為に建てたおうち。

おにぃちゃんのおとうさんと。ナルトのおとうさんと。カカシおにぃちゃんとそしてさんの、思い出がいっぱい詰まったおうち。

誰にも荒らされたくなくて。森ごと。忍術とは違う不思議な術で、里や他から切り離してしまうくらい大切な。大切な、場所なんでしょう?





口惜しいけど、わたしとカカシおにぃちゃんの間に、ナルトほどの繋がりは無いわ。

拾われた孤児と拾った人。ただソレだけだもの。平たく言えば真っ赤な他人なのよ。

そりゃあ、わたしはおにぃちゃんの事大好きで。一度だって忘れた事なんかもないし、おにぃちゃんも、わたしの事を覚えててくれた、けど。





「何を言ってるんです。貴女は私とカカシの妹でしょう?此処に住まないで、何処に住むと言うんですか」





――――――ぐるぐると考えてた暗い思考は、バッサリと一刀両断にされた。

思わず俯いてた顔を上げて振り仰いだら。

さんは困った様な呆れた様な。微苦笑、というものを浮かべていて。





「貴女もナルトもサスケもイルカも。私達の家族でしょう。一緒に住まないで如何しますか」





・・・・・・・・・・・・かぞく。

本当の親に捨てられたわたしに、家族。

わたし達が、家族。





笑ってわたしの頭を撫でてくれるさんに、心臓が、ぎゅう、と締め付けられたみたいになって。

ほろり、と。目からひとつぶ、涙がこぼれた。










 





 













泣かしちゃった。
 





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