木の葉の周りには、森が多い。

土ん中に埋まってる鉱物の所為で磁場が狂った『迷いの森』とか。

凶暴な獣が多く住む『獣の森』とか。

演習場にもなってる『死の森』は、突然変異みてぇな育ち方したでっけぇ蟲の宝庫で。





ちなみに、前に焼かれた葛葉の住処は『妖の森』って呼ばれてた。

物の怪が住む森。入ればソイツ等が牙を剥く森だって。

・・・・・・実は、バカな人間がその森に入ったから、狐は怒って里を襲ったんじゃないか、とも巷の一部では囁かれてるけど。





まあ、要するに。

上忍でも抜けるのに一苦労、一般人は入りもしねぇ様な森が、木の葉の周りには多い。





「――――――・・・・・・・・・・・・ってのは、知ってるんだけどよ・・・・・・・・・・・・」

はふ、と溜息吐いて。オレは前を行くイルカにーちゃんの後を追う。

「・・・・・・・・・・・・まあ。おれもまさかこの森だとは思わなかったけどな・・・・・・・・・・・・」

苦笑混じりにそう返したイルカにーちゃんは、目の前を飛ぶ黄色い鳥を追ってて。

「・・・・・・・・・・・・噂には聞いてたけど、本当に静かね、ココって・・・・・・・・・・・・」

オレの横でサクラが呟き。

「・・・・・・・・・・・・ナルト・・・・・・・・・・・・何か、変だ・・・・・・・・・・・・この森・・・・・・・・・・・・」

きゅう、と。オレの手を握って、サスケが不安気に周りを見回す。





変。

確かに変だ。

昼をちょっと過ぎたくらいの時間帯だってのに、近くで活発的に動いてる気配は皆無。

けど、動いてねぇだけで鳥や動物がいないってワケでもねぇ。

風が吹けば枝はざわざわと揺れるし、虫の音も聞こえる。なのに。





「・・・・・・・・・・・・見えない、のに・・・・・・・・・・・・何か、いる・・・・・・・・・・・・」

ぎゅう。オレの手を握るサスケの力が強まった。

「・・・・・・・・・・・・そう、ね。鳥じゃない。虫でもない。獣、でも・・・・・・・・・・・・」

探るみてぇに空に向けられたサクラの目が細くなる。





「――――――気配はあるのに姿はねぇ・・・・・・・・・・・・まさしく『不可視の森』だな」





或いは『不可侵の森』。この森には、そのふたつの名前がある。

何かいる。見られてる。解ってんのに、相手が見えねぇ。

突き抜けようと一直線に進んでも、まるで中身がねぇみたいに唐突に森の向こう側へ出てしまう。

誰かが結界を張ってるワケでも、磁場が狂ってるワケでもねぇのに。

だからココは。忍すら入らねぇし入れねぇ。そんな、『不可の森』だ。





「ねぇイルカおにぃちゃん、本当にこんなトコロにあの人達が住んでるの?」

ててて、とイルカにーちゃんの横に並んでサクラが聞く。

「如何だろうな・・・・・・おれですら、此処は異常だと思うからな」

イルカにーちゃんは、そう答えてムズカシイ顔をした。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・森の民のイルカにーちゃんにすらそう言われる森って・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





『――――――近いの』

ホンット何なんだこの森。って思ってたら、意識の中から葛葉が零した。

「葛葉?」

『もう直ぐじゃ。もう直ぐ抜けるぞ、彼の箱庭へ』

思わず足を止めて。首を傾げて聞いてみても、葛葉は嬉しそうにワケ解んねぇ事を言うだけで。





「・・・・・・・・・・・・なると?」

つられて止まったサスケの見上げてくる不安そうな目に、首を傾げたまま。

「ん、ああ。葛葉がもう直ぐ抜ける、って」

――――――でも。かのはこにわ、って。何だ?





その時。ぴぃ、と黄色い鳥が鳴いた。

意識が引っ張られて。ふい、とソッチを見てみると。





「――――――・・・・・・・・・・・・う、わ・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・すご、ナニこれ・・・・・・・・・・・・?」





イルカにーちゃんがサクラが、思わずって感じでぽつりとこぼす。

オレは開いた口が塞がらなかったし、サスケも目ぇでっかくしてほけんとしてる。





見上げた空は、さっきまでの薄暗さとは打って変わった、蒼天。

枝葉を伸ばす木々の深緑。風が渡る草原。咲き乱れる華々。

確かに息衝く命の息吹息吹息吹。

絢爛、とか。豪華、とか。文字通りそんな感じの――――――常春。





『あれ嬉しや。四方や妾の様な堕ちた狐まで、迎え入れて下さるとは』





葛葉が何か言ったけど、オレはソレに反応も出来ないまま。





「あ。やぁっと来た。もー待ちくたびれちゃったよ俺もーう」





ひらひら〜と。

オレ等に気付いて手を振ったぎんいろのにーちゃんを。

ただただ、ほけん、と見てた。










 





 













探検探検。
 





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