先輩の周囲が著名人だらけだという事は、知ってはいた。

知っては、いたが・・・・・・知っている、だけだった。





父親はあの伝説の『白い牙』、はたけサクモ。そして師は『木の葉の閃光』、『4代目火影』、波風ミナト。

此処までは、良い。事実であるし有名だからだ。

――――――だがまさか。





その師繋がりで『三忍』とも面識があり。

4代目の『影』と呼ばれる人物とも、交友があるらしく。

何故か3代目の『懐刀』、凛とも親しい。





此処まで凄い御仁ばかりだとは、思ってもみなかった。

――――――・・・・・・・・・・・・しかも、其れだけでは留まらず。





「こんにちわ纏雜さん」

「・・・・・・ああ、今日は君一人か、柘榴」

「はい。兄さんいますか?」





礼儀正しく、面を外しはにかむ様に頭を下げる、黒髪に紅い目の少年。

聞いた時には目を剥いた。変化で誤魔化しているが、実際の歳は今年で未だ8歳だというではないか。

其れも、面差と目の色だけは変えていないという・・・・・・・・・・・・この子の、この紅い目があの『うちは』の車輪眼。

しかも、他国の忍の血と混ざった所為で変質し、元の黒に戻らなくなった、『万華鏡』、とは。





「?纏雜さん?」

「――――――ああ、いや、何でも無い。先輩なら・・・・・・」

「あれ。柘榴じゃないか」





首を傾げた子に、俺は曖昧に返し。

先輩の居場所を教えようとした処で、俺達に気付いて声を掛けてきたのは、藤矢だった。





「あ。藤矢さん。こんにちわ」

「はい、こんにちわ」

ぺこり、と頭を下げた子に、藤矢も笑って頭を下げる。そして、1人しかいない子に首を傾げた。

「今日は1人?天青と翡翠は?」

「天青は3代目のお使いで。翡翠は凛兄さんと一緒に任務です」





天青と翡翠。出てきたふたつの名に、ふ、と息を吐く。

片方は、今は滅んだ鏡櫻の先祖返りだと言っていた。

其の力の所為で、親に捨てられ、死に掛けていた処を先輩に拾われたのだと。





――――――・・・・・・・・・・・・そして、もう片方。

嘗て木の葉を襲った狐を封印された子供。死んだとされていた、4代目の実の、息子。





子供達本人から暴露された時には、驚きを通り越して青褪めた。

どれも此れも里の重要機密。そう簡単に人に話して良いものでは無い。





なのに、この子達はあっけらかんと言ったのだ。

『だっておにぃちゃん達、おにぃちゃんの部下でしょう?』

『仲間を見捨てるのはサイテイの屑だ、って。そんな事言って無茶ばっかりする兄さんの部下ですよね?』

『バカでどっか抜けててすっげぇお人好しで危なっかしい。そんなにーちゃんの部下なんだろ?』

だから、話すのだ、と。だから、信じる、と。笑って。





――――――類は友を呼ぶ、というか。

其れとも、呼ばれているのだろうか。





置かれた状況から、力を付けざるを得なかった子供達。

思えば先輩も、大戦の真っ只中に生れ、戦場の中で育ち6歳には中忍として活躍していた。波瀾な幼少期だ。

其の、得た力で。先輩に会う為に、闇に潜った子供達。





木の葉の忍は情に厚い、と良く言われる。

中でも先輩は。群を抜いて。砂を吐きたくなるくらいに甘くて優しい人だ。

そして其の甘さを、如何やらこの子等は受け継いでしまった、らしい・・・・・・良い事なのか、悪い事なのか。





「――――――・・・・・・・・・・・・柘榴」

「あ、はい。纏雜さん」

「先輩なら、今丁度雇用主と話をしている」

「あ、ソレならさっき終わったみたいですよ。今は肩凝った〜って、テントの中でべちゃって溶けてます」





俺の説明に、藤矢が訂正を入れてきた。

其れにしても、溶けてるって何だ溶けてるって。





「・・・・・・あ。じゃあ俺、一度戻って、出直して・・・・・・」

「いや。今直ぐ行ってやってくれ」

曖昧な笑みを浮かべて、愁傷に告げる子供の提案を却下する。

「・・・・・・でも、にいさん疲れてるみたいだし・・・・・・」

「行ってやってよ柘榴。でないと・・・・・・」

笑みを困った様な表情に変えれば、藤矢もまた苦笑で言葉を続けようとし。





「あーーーーっっ!!柘榴来てるんなら早く言ってよってゆーか俺より先にナニ和やかに柘榴とお話してんの纏雜藤矢!!」





隊長拗ねるから、という藤矢の言葉の続きは。

飛んできた先輩の怒声に、掻き消された。










 





 













子は親に似るんです・・・イヤ親ぢゃないけど。
 





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