撤退準備してたのがドッカで漏れてたのかもしんない。

だから慌ててやっこさんも、堰き止めてた水、決壊させたんだろーね。

こりゃ、戻ったらスパイが潜り込んでないか調べないと・・・・・・・・・・・・無事に戻れたら、だけど。





ごぉごぉ流れる凶器な水のど真ん中。

付き出た岩の上にちょこん、としゃがみ込んで。きんきんきん!!と飛んでくる手裏剣を弾きながらでっかい溜息ひとつ。

・・・・・・・・・・・・今、私は囲まれていた。ソレもダース単位の敵の忍達に。





私が身を隠せる様なモノは何もない。だけど相手は木の上森の影。しかも水遁に強い霧隠れだ。

洪水もまっつぁおな鉄砲水だけど、落ちても死にはしないんだろーなー。

ちなみにわたしは泳げません。浮く事すら出来ません。よって落ちたら速攻オダブツ確定。





――――――・・・・・・・・・・・・ゴメンね今度からはちゃんと泳ぎの練習するよ!!





そんな事を思いながら頭の中のに平謝り。だけどそんな事してたって、事態が良くなるワケでもなく。

――――――っ、ちっ。面が落ちた。耳の横スレスレに、飛んだ苦無が紐を切りやがった。

つっ。今度は右腕。掠った。しかもご丁寧に毒まで仕込んでるでしょコレ。





敵さん、どーやら私をじーわじーわ嬲り殺しにしたいらしい。

姿の確認は、上手く隠れて出来ないけど。感じる気配は愉悦。視線は、舐める様にねちっこい。

・・・・・・・・・・・・いえ私ノーマルですから。エムぢゃないですから。そんな目で見ないでお願いぷりぃず。

けどホントこの状況は勘弁してほしい。

見晴らしの良いトコに置かれた狙い易い、むしろ狙ってクダサイってゆってる的みたいだもの私。





「――――――でも。みんなが逃げた後でホント良かったよ。」





『カカシ』を知る人間が周りに一人もいない。珍しくて、そしてとても久し振りだ。

思う存分。私本来の力を、使える状況――――――思う存分、暴れられる、状況なんて。

思いながら。すぅ、と息を吸った。

だんだんと。間隔を狭めて振り掛かってくる手裏剣を、苦無でいなしながら。

そして、闇を見据え。ソコにあるイヤンな気配に向かって呪を――――――





「先輩!!」

〜〜〜〜っっ!!いった!!いったい今舌噛んだ!!

「無事ですか、隊長!?」

あ。しかも今ドサッて落ちたドサッて!!私が狙ってた獲物が!!





てゆーか。あり得ない。まぢあり得ないからっっ。

「なんっで!!オタク等戻ってきてんの!?上司命令は絶対!!デショ!?」

久し振りに素で暴れられると思ったのに!!





だけど相手も然る事ながら。

「こんな状況で良くもまあそんな事言えますね!!」

「だいたいっっ、あんな無茶な命令俺達が素直に聞くワケないでしょうが!!」

「コレでも俺達意外は残して来たんですから!!」

私よりも怒った声で怒鳴るもんだから、私はその剣幕にスゴスゴと引き下がるしかなかった。





ぼっとぼっとと木の上から落ちて行く敵さん達。

私の隊は何かというと、私が出しゃばってしまうモンだから。リーダーな私さえツブれてしまえば、後は有象無象と思われてるけど。

トコロがどっこい。私の部下達は、私よりも戦うのが上手いのよ。だから今日の、私の出番はココまで。暴れられるのは次の機会。

――――――なーんて。敵からも見方からも忘れられた私が、傍観を決め込もうとした時に。

永久の死角を、突いて振り上げられた、煌めき。





「永久!!」

思わずチャクラを足の裏に集束させて、不安定でしかも荒い水の上を蹴る。

慌てて。必死で。彼と刃の間に、潜り込む。





永久の、驚愕した顔が視界いっぱいに入る。

「隊長!?」

「先輩!!」

纏雜の。帯智の。悲鳴じみた呼び掛けが耳に届く。





――――――ヤバい私コレ完全にイッた。

いや完全とは言わないまでも、向こう半年はベッドがトモダチな状況になるって踏んだ。

そう、思ったのに。なのに衝撃は肉を絶たれる感覚は。何時まで経っても訪れない、まま。

そろり、と無意識にギュッと瞑ってた目を開ける。





最初に視界に飛び込んだのは、白だった。

綺麗な綺麗な、白。白い、着物。の紫の様に丈は無いけれど。の様に改造された暗部服を、下に着込んではいるけれど。





「――――――まさか・・・・・・・・・・・・四代目の、『影』か・・・・・・・・・・・・!?」





藤矢が喘ぐ様に呟く。帯智も永久も纏雜も。敵ですら、その白の存在に動きを失くす。

だけど周囲の事なんか気にせずに。白い暗部は私に顔を向けた。模様も形も何もない、真っ黒な面で私を見た。

そして。





「――――――っんのっ、バカッッ!!」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?





「何してんだこのバカ身体張る前に武器使えこのバカ寧ろムリっぽそうなら切り捨てろこのバカ自分一番に大事にしろこのバカ!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えー、と」

「オレ等の寿命縮める気かこのバカあああああんな傷だらけになりやがってこのバカバカバカ!!」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん。なんで私初対面の人にバカ連呼されてんだろー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・や。初対面、ですよね?










 





 













王子様はやっぱりピンチの時に颯爽と現れないと!!

・・・・・・いえ王子違いますけど。
 





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