オレは普通じゃないらしい。 オレ自身、自分が普通じゃないって自覚もしてる。 どうして?って聞かれても。そりゃあ。 「おかえり、イル兄ぃ」 「おう、ただいまナルト」 生まれて1歳ちょっとしか経ってないガキが、変化の忍術使って少年の姿に化けて。 大の大人でも解読不可能な暗号文を読んでる、なんて。 ――――――世間一般から考えて、普通じゃないドコロか異質、だろ? つかこんなん目にして普通だと言える人間がいたら是非お目に掛かってみたい。 ソイツ絶対どっかずれてるから・・・・・・だったらイル兄ぃとじいちゃんはずれてんのか。そうかずれてんだよな。 て、イル兄ぃとじいちゃんがずれてるかどうかはおいといて。今してるのは、オレは普通じゃないって話だ。 生まれる前から、母さんの胎の中にいた時から、思考する事が出来た。言葉も、理解した。 生まれて直ぐ、腹に封じられた獣のお陰で、チャクラの使い方も解った。簡単な忍術なら直ぐに覚えた。 そんなオレの事を、人は『化け物』、と呼んでるらしい。 会った事も無いのに化け物って何だよ、と思ってはいたけど。 ヤツ等は、オレで無くオレの中の獣――――――葛葉、の事を化け物と罵り恐れ憎んでる、らしい。 葛葉は狐だが、とても綺麗な女性だ。 優しくて・・・・・・怒った時は確かに怖い、けど。温かくて、柔らかくて、何処か母さんにも似てる。綺麗な女性だ。 彼女を化け物と卑下するなら。お前等の方がよっぽど化け物だ、と罵り返してやりたい。 葛葉は、住処を焼かれた。伴侶を。子供を。眷属を――――――家族、を。木の葉の人間に、殺された。 木の葉の人間全員でやったワケじゃない。やったのはその、全体の中のほんの一握りの人間だ。 ソレでも。たかが一部でも、長い間見守ってきていた木の葉に住む人間に、殺された。 コレを裏切りと言わずして、何と言う? 確かに葛葉のやった事は、正しく無かった。 報復なんかしたところで、失った者は還って来ないし。徒に、葛葉と同じ傷を持つ者達を増やしただけだった。 だからって。他でも無い、葛葉から全てを奪った木の葉の人間が、葛葉を一方的に責められるのか? なのにヤツ等は本当の事なんか知りもせず――――――知ろうとも、せず。 自分達だけが被害者なんだと。葛葉を恨むのは当然の権利だと。 死んでしまえば、良いんだと。 反吐が、出る。 胸糞悪くなる。 そう言うヤツ等こそ、死んでしまえば良いのに。 葛葉を悪く言う人間なんか。じいちゃんの苦労を知ろうともしない人間なんか。 イル兄ぃ達暗部が里の為に命掛けて任務を遂行するのは当たり前だ、と。 命掛ける、その言葉の本当の意味すら解らずその上に胡坐かいて踏ん反り返ってるヤツ等なんか。 そう言うヤツ等こそ、死んでしまえば――――――殺して、やれれば良いのに。 だけどオレはそう思うだけで、実際に行動に移した事はない。 やろうと思えば出来るだろうけど、しない。 何故なら。 『ごめんね、ナルくん・・・・・・っ。木の葉の人達は優しいから・・・・・・いつかきっと、本当の事を受け入れて貰える日が来るから・・・・・・っ』 イイ年した大人なのに、ぼろぼろ泣きながらそう言った、父さんの最期の言葉を信じてみよう、と思ったし。 『おうおう、良い子じゃ、良い子じゃのう、ナルト――――――不甲斐ない爺を、許しておくれ』 オレを本当の孫みたいに可愛がってくれる、じいちゃんの頭痛の種を増やさない為でも、あったし。 そして。 『人ってゆー生き物はね。とっても弱いんだよ。淋しかったり哀しかったり、ソレだけでアッサリ狂っちゃえたり死んじゃえたり、するんだ』 『脆いんだよね、心が。だから、生きようって、する為に。その心に、支えが必要な人が、いーっぱい、いるんだよ』 『仕方無い、って。悟れるホド俺も納得出来てないけど、ね。絶対悪、ってゆーのが無いと困る人、今の木の葉には、たくさん、いて』 『けど、全部がね。悪いワケじゃないんだ、よ。全部が、同じってワケでも、ね』 『人は、脆くて弱いけど。立ち直る、強さも持ってる、から』 『だから、生まれてまだたったの何年かでしか会ってない人達だけで。世界を、決めないで、ね』 『俺に、愛されてる事。忘れないで、ね――――――ナルト』 ぱさ、と。手に持っていた巻物を放り出し。かいていた胡坐の上に置いていた、電々太鼓を持ち上げる。 「――――――・・・・・・・・・・・・今日も。ぎんいろの兄ちゃんは、来ねぇの、かな」 呟きに、直ぐ傍まで来ていたイル兄ぃが、くしゃり、と大きな手でオレの頭を撫でる。 その顔は、オレと同じ淋しそうな悲しそうな。 「来て、くんねぇかな・・・・・・来て、ほしー、な」 2人揃って眺める太鼓。 くるりと回すと、ててん、と鳴った。 |
||
ナルトきゅんはサラブレッドですカラ。 | ||
<<バック ネクスト>> <<バック>> |