名は体を現す。

確かにその通りだ、と。彼を見て思った。





伝説とまで謳われた、天才忍者はたけサクモの息子。

4代目火影、波風ミナトの最後の弟子。

友人の車輪眼を継いだ、コピー忍者のカカシ。





表でのいくつもの肩書の通り。彼は強かった。

俺や凛には及ばぬまでも、何故今まで暗部では無かったのかと思う程の実力は、あった。





「はい。コレで終〜わり、っと。」





手の中で苦無を閃かせ、咽喉を掻き切った敵の身体を瞬時に燃やす。

その炎に照らされて、ぼんやりと浮かび上がる銀の髪。確かに其処にあるのに掴みどころの、無い。





「あー。汚れちゃったなぁ・・・・・・あ、ソッチはおわったの?閃」

「――――――ああ」





飛んで付着した返り血を見下ろして。

枝の上に佇んでいた俺を見上げて声を掛ける、その飄々さも。





朧。





言い得て妙だ、と。

彼に其の名を与えた3代目に、納得した。





「終わったのは閃だけ?凛は?」

「ああ、凛なら」

「おれなら此処にいますよ」





もう直ぐ来る、という言葉を遮って。

朧の隣に、降り立つ黒。





「怪我はないですか、はたけ上忍?」

「・・・・・・あーのねぇ、凛。このカッコの時にその呼び方はダメでしょー。」

「ああ、すみません・・・・・・でも、その銀髪隠してない時点で正体バレバレですからアンタ」

「そーれでも。暗部の時に表の名前は使わなーいの。」





凛に向って苦笑の気配を零す、覆面。

ああ、この覆面も曲者だ。片目以外の表情を隠す。だから余計に、掴みどころが無い。





「何にしても、暗部初任務達成おめでとうございます、朧」

「いーえいえこちらこそ。サポートありがとうございまーす、ね。凛」





凛が深々と、頭を下げた。

倣う様に、朧も頭を下げる。

・・・・・・・・・・・・こんな処で、やる事ではないと思うんだが。

まあ、今日のところは大目に見よう。

目標の殲滅は、終わった事だし。





――――――だが、其れにしても。





「ソレにしても、随分と早く片付けましたね、朧」

俺の言いたい事を、凛が代弁した。





初めて暗部の任務に就くにしては、彼は異様に早く片付けた。

俺や凛の様に、一度で多くの敵を屠る力が無い分。

闇を利用し。隙を突いて。混乱と動揺の中に潜んで、ひとつひとつ確実に命を刈っていた。

その、人を殺める行為も堂に入っていた。

簡単に言えば。慣れて、いた。のだ。彼は。





「手慣れていた、様に見えたのは。おれの気の所為ですかね」

「いやー。気の所為、じゃなーい、と思うよ。だって俺、こーゆー仕事初めてじゃーないもん」

「え、そうなんですか?だって暗殺ですよ?暗部の仕事ですよ?」

「そーなんだけーどね。俺たまーに兄ぃの後ろにくっついて仕事手伝ってたからねぇ」





さらり、と。何でも無い事の様に出された言葉。

其の言葉の重要度を、彼はどれだけ理解、しているのだろう。





「――――――朧」

「あ。でもさっき言ったみたいに、兄ぃが今ドコに住んでるのか、とかは俺も知らないかーらね?」

「――――――・・・・・・・・・・・・っ、そう、か」

「うん、ごめーんね、閃・・・・・・でも、生きてるのが解ったんだ・・・・・・また、会えるよ。生きてたら」





其の、声音に。俺は思わず、握っていた拳の強張りを、解く。

そして、朧の顔に、目を向ければ。





唯一空気に触れる青い目は、哀しみと僅かな安堵を、乗せていた。










 





 













演技のヘタなおねにーさまは、ココでも顔を隠します。
 





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