「まさか、また『俺』が出てくる事になるとはな」

「『あたし』だってまさかまたお前を出す事になるとは思わんかったよ」





でっかい大木の上の方。ふっとい枝に胡坐をかいて。

私は、背後から掛けられた声に、憮然と返す。





「だいたい、俺は暗部になんてなる予定なかったってのに、3代目ときたら」

宥めて賺して脅しまでかけて、最後には泣き落とししてきやがるもんだから。

「まあまあ。ソレだけ今の木の葉の財政が火の車、って事だろ」

うん解ってる。九尾襲来の所為で使える人材がっつり減っちゃった事なんて今更言われなくても解ってる。





だから私、3代目の前で紫を羽織ったのに。

ふつーの暗部よりも短期間で、ふつーの暗部の数倍の仕事を、サクサクこなして来たのに。

――――――人手不足は、とうとう『はたけカカシ』までも、暗部にした。





「まあ、の力を抜きにしても。『カカシ』の実力で、今まで暗部やった事ない、ってのも驚きだけどな」

「・・・・・・クシナ姉ぇがうるさかったんだよ。俺の年で暗部はまだ早い!!って」

「・・・・・・・・・・・・ソレを言ったらうちはの長男とかは一体どーなるんだ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・よそ様のおうちはよそ様のおうち、ウチはウチ、だってさ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・過保護・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあね」





呆れた溜息と疲れた溜息が重なる。

私、『はたけカカシ』が今まで暗部に所属しなかったのは、さっき言った通りクシナ姉ぇが止めたからだ。

そしてミナト兄ぃもソレに便乗した。

だから、クシナ姉ぇには秘密で着物羽織って『影』になるハメになったんだけど。





でも、私は別にソレでイイやって思ってた。

別に暗部にならなくても、ソレでじゅーぶん、私はミナト兄ぃの役に立ててたから。

むしろ、規則や何やらに縛られてやりたくも無い仕事をやらされる暗部には、なりたくないって思ってた。





そして、何より。





「ちくせう・・・・・・コレ以上仕事に浸かっちゃったら、ナルトに会えなくなる日が出てくるぢゃないか」

「お前が暗部入りを渋った理由ってソレかよ」

「あったり前でしょ。ソレでなくてもイロイロややこしくて面と向かって会えないのにしかも会える時間少ないのに」





人手が足りないからって朝から晩までたくさん詰め込まれた上忍としての依頼。

夜は夜で、『影』として人様の何倍もの仕事を片して。

なのに『はたけカカシ』にまで暗部の仕事を入れられた日にゃあ。





「・・・・・・・・・・・・あー。俺絶対ダメ。絶対過労死する。」

「確かに殺人スケジュールだよなぁ」

「てゆーかソレ以前にナルト補給できなくて絶対干乾びるーぅ。」

「・・・・・・・・・・・・何だその干乾びるって・・・・・・・・・・・・ああ、『カカシ』」





すい、と。の目が僅かに森の先を促した。

コチラに近付いてくるのは。ふたつの気配。





ひとつは知ってる。凛だ。深く広い静かで豊かな緑色の。森の様な気配だ。

そして、もうひとつ。コチラも静かだ。静かなのに熱く灯る、炎の芯の様な、淡い青。





「はいコレ、兄ぃ」

私は片手を翻して。『自分』の中に溶け込んでた『舞扇』をに差し出す。

「どうも。では私からはコレですね、カカシ」

そしては。腰にぶら下がってた双剣、『光牙』と『闇牙』を鞘ごと抜いて。





「剣かー・・・・・・使いこなせるかねぇ、俺」

「大丈夫でしょう?双剣と扇術は扱いが似てますし。私が、教えたんですし」





近付いてくる気配が、目視出来る位置まで来てた。

2人は、私の横に人がいる事に気付いて。

その、人が。紫の着物を羽織っている事に、気が付いて。

ぐん、と上がる、速度。





「そういえばカカシ。暗部名は、決まっているんですか?」

「・・・・・・あー、うん。朧、だって」

「朧、ですか。ふふ、良い名を頂きましたね」

「そりゃ、どーも?」





なでりなでり、と。指無しの手袋をした手で、私の頭を撫でる、細い手。

必死な勢いで駆けてくる、2人の暗部は、もう直ぐ傍。





「では、暗部初任務完遂、頑張って――――――くれぐれも、怪我をしない様に、ね?」

「うん。兄ぃも気ぃつけてね」





音も無く。

枝を蹴って暗闇に溶け込んだの背中に、私はひらひらと手を振った。





――――――辿り着いた2人の暗部に、詰め寄られるのは、その一瞬後。










 





 













とーとーおねにーさまがおねーさまとおにーさまに分かれました。
 





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