「つか可笑しいだろ。何で王族のお坊ちゃんが1人でやらないといけないんだ」

はん、と鼻で嗤うに、あたしも便乗。

「だよねぇ。超振動なんか、第7音素術師が2人もいれば起こせるモンなのに」





まあそんなの、

「・・・・・・た、確かに起こせます――――――が」

「・・・・・・起こせたとしても小規模、しかも擬似だ。本物じゃないんだよ」

「んな不安定で使いモノになりそうもねぇのより、俺が超振動起こした方が確実なんだよ」

うん解ってるけど説明ありがとおディストにシンクにお坊ちゃん。





でもね?敢えて言わせて下さい?

「だからお前がやるって?命を掛けて?――――――馬鹿馬鹿しい」

・・・・・・あ。に先越された。

「ば・・・・・・っっ、馬鹿馬鹿しいだとっっ!?てめっっ!!」

ああああしかもお坊ちゃん爆発した。





「何故お前1人が背負わなければならない」





――――――まあ、でも。その爆発も、次ののセリフに、途端に鎮火したワケですが。

お坊ちゃんの後ろで、同じ様に怒りを顔に乗せてた皆さんも、一斉に驚いた様な顔へ。

そんなに以外ですか、のセリフは。





「この瘴気は、古人の残した負の遺産だろう。何故お前1人が背負わなければならない。命を捨てなければならない」

「・・・・・・っっ、かた・・・・・・仕方ねーだろ!!ソレしか方法がねーんだから!!」

「本当に?コレしか本当に方法が無いのか?――――――後ろのお前達はソレで良いのか。坊や1人死に追い遣って、何とも思わないのか」

「――――――あたし達だってっっ!!ホントはイヤだよこんなの!!だけど仕方ないじゃない!!」

「・・・・・・・・・・・・ソイルの木の浄化システムを研究すれば、或いは・・・・・・・・・・・・」

「ですが、ソレでは時間が掛かり過ぎる・・・・・・掛かり、過ぎるんです・・・・・・!!」





淡々と聞くに、悲鳴にも似た声音でソレゾレが声を荒げる。

握った拳を震わせて。涙を、浮かべて。







「・・・・・・





あたしがそっと、を呼んだら。

背中から。囲われる様に抱き締められて。

胸の前で組まれたの手に。触れてあたしは1度目を閉じる。





「――――――『』はあの子等の代わりに器を捧げて、其れでもあの子等を守り切れなかった」

囁くの、声には憐憫。

「そして『』はこの世界の『灰』を。違うからこそ、今度こそ守り通せると思っていた子等の片割れを、掬い上げる以前に塗り潰した」

呟くあたしの声は、悲哀。





「・・・・・・何を、言って・・・・・・?」

「・・・・・・一体、何の話・・・・・・!?」





困惑を、顕わにする子供達。

あたしとはくすくす、と。

小さくちいさく、笑みを零して。





「なに、ただのエゴさ」

「そうだな、ただの自己満足だ」





あの、時。

宝玉である事を忘れていなければ、もしかしたら『』はあの世界の『灰』と『焔の光』を守れたかもしれない。

ローレライが消し去る前に、あたしが気付いて掬い上げていれば、この世界の『灰』は今も生きていたかもしれない。

もしも。もしかしたら。





――――――・・・・・・・・・・・・仮定なんてしたって意味ないし、どんなに後悔したって過去には戻れない。





だからこそ。

「再生の灰と成った聖なる焔の光より、新たに生まれた光の欠片」

あの世界では、守り切れなかった子供。

「我等の知る『灰』が愛した子と同じ魂を持つ子供。『』が『』が、愛する子供」

この世界では、未だ生きている、子供。





「厭え。万人の為にその身を捨石とする事など」

「捨てろ。犠牲の上に成り立つ平和など」





の身体が淡く光を放つ。

徐々に徐々に薄れて行って、輪郭さえ失くして。やがてあたしの手の中で、小さな金色めいた赤い石になる。

驚く皆の目の前で、あたしはソレを両手で大切に大切に。口に含んで呑み込んで。





「「――――――世界に、贄の羊は要らぬ」」





微笑むあたしの口から零れたのはふたつの声音。

ソレが、あたしとが判れていた、最後。





――――――封印は、解かれた。






























・・・・・・あと、あとちょっと・・・・・・






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