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視界が、変わる。 大気の苦しみが大地の悲鳴が。 其れでも息衝く生の息吹と命の鼓動が、色彩鮮やかに映る。 感覚が、変わる。 吹き抜ける風降り注ぐ光。 全て。全てが、初めて知覚した時の様に瑞々しく。 『』が『』に溶ける。 『』が『』に交わる。 かつて、ひとつであった頃に――――――戻る。 そして還るんだ。『あたし』と『俺』は『私』へと。 「え、嘘・・・・・・さんっ、消えちゃった・・・・・・!?」 「バカな・・・・・・そんなっ、筈は・・・・・・っっ」 「一体っ、何が起こってるんですか!?」 開けた広場で人、ひとり。 音も無く消えた事に混乱する人の中で。 「アッシュ、その目――――――!!」 ソレに始めに気付いたのは。 朱の髪を持つ、子供。 「――――――さあ、奏でておくれ」 ふあり、と笑んで、手を伸ばす。 美しいうつくしい、帯が奔る空の彼方へ。 「『私』と共に、うたっておくれ」 胸に手を当て、柔く微笑む。 裡に息衝く、生命達へ。 きらきらと、結晶の中で音素が煌めいた。 『おお・・・・・・漸く。漸く目覚められたか生命の至宝』 降り立つ様に彼方から、光り輝く粒子が6つ、人の形を取り。 『嬉しい!!やっと言葉を交わす事が出来る!!』 風纏う少年めいた声が、喜びも露わに声を上げる。 「・・・・・・・・・・・・まさか・・・・・・・・・・・・!?」 「・・・・・・・・・・・・お、音素集合体・・・・・・・・・・・・!?」 「・・・・・・・・・・・・しかも、第1から第6まで・・・・・・・・・・・・!!」 驚く人の子は視界の端に。 『やっと声を掛けやがったか』 闇色の狼が、その背に火を纏う蜥蜴と雷纏う鳥を乗せて、呆れた様に零す。 『そう言うな、闇主』 『主も態とじゃないんだ』 石纏う虎と、頭に翼持つ猫を乗せた氷の四肢を持つ豹が穏やかに窘めて。 『久方ぶりだ、主――――――大事が無さそうで、何より』 光輝く鬣を持つ馬が、銀の獅子と金の鹿の間で小さく笑い。 「・・・・・・もしかして・・・・・・ワルター・・・・・・!?」 『――――――暫くぶりだな、人の子』 『私』の周囲を埋める、異形の獣。 その、内の一体。水の大蛇に気付いた獣の娘に、返る応え。 命を運ぶ恵みの風。 大地に爆ぜて芽吹く種。 空から降る潤いの雨。 温もりを与える灯火。 眠りを与える安らぎの闇に、目覚めを呼ぶ始まりの光。 赦しを。癒しを。慶びを。 「――――――さあ、始めよう」 この世界に、再び――――――いのち、を。 |
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こーゆー時、一人称はツライのねん。 | ||
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