そんなこんなで日が過ぎて。

まだ朝日が昇るには早い時間帯。

あたしとは、ひっそりこっそりファブレのお屋敷から抜け出した。





「――――――本当に良いのか?」

「・・・・・・・・・・・・うん」





静かに訊ねてくるに、小さく笑いながらこくんと頷く。

そんなあたしに、はしょうがないなぁ、て感じで苦笑して。





「・・・・・・相変わらず、気に入った人間には甘いよな、は」

「・・・・・・そーゆーだって、あたしの事言えないじゃんか」





顔を見合せて。くすくす、小さく。





「――――――この世界のローレライがした事は、赦せないけどな。あの子が未だ、生きてるんだ。此処では」





目を細めて。遠くを見つめる様に。

独り言の様に呟くの、そしてあたしの脳裏に浮かぶのは。

嘗てあたし達がひとつで『』だった時の。

もうひとつの『世界』の紅と、朱。





「・・・・・・あの時の瘴気中和で。『』はあの2人の代わりに乖離して『死』んだんだっけ」

「ああ。だけど大爆発は結局防げなかった。『アッシュ』も『ルーク』も、混ざってしまった」

「そして新しく生まれてしまった、第3の人格・・・・・・か」

「暫くは俺も音素帯にいたけどな。酷かったよ。どちらにもなれなかった新しい子の・・・・・・嘆きと絶望は」





音無く流れる水の様に淡々と。

先に『死』んでしまった事を、あの子等を置いて先に空に昇ってしまった事を後悔した、と。

声も殺して囁くの、痛みはあたしに伝染する。

――――――でも。





「でも、お坊ちゃんは・・・・・・ルークは、未だ生きてる」

アッシュは助けられなかった。

「ああ・・・・・・この世界は、あの世界じゃない。あの子は、『俺』の救えなかった『ルーク』じゃ、ない」

だけど、だからこそ。あの子だけは。





「「あの子だけは、助けたい」」





同時に吐き出した言葉は、キレイに重なった。

その事に、あたしとは顔を見合せて笑い合う。





「んじゃ、ま。ギンジには悪いけど」

「まあ大丈夫っしょ。2機あるんだし。1機くらい無くなったって」

「ノエルちゃんの方のエンジンはバラしたしな」

「誰かが気付いても直ぐには追って来れないよーに、って?」

「おう。コレで結構時間が稼げるぞ」





見据える先には、月の明かりを淡く反射させる機体ふたつ。

眠りの呪文を掛けて目覚めなくさせた2人の操縦士は、片方の機体に纏めた。





、操縦出来る?」

「『前』にギンジの隣で動かし方見てたからな。大丈夫」





アルビオールに乗り込みながら聞けば、安心していーのか悪いのか良く解らん返事が。

・・・・・・うん。イイや無理そーだったらあたしが『三千世界の復元』でアルビオールとリンクすればイイんだ。





「失礼だな信じろよ俺を。コレでもより機械には強いぞ?」

「・・・・・・ん。解った」





操縦席に腰掛けて、ベルトを締めるの隣で、あたしも椅子に座ってベルトを締める。

入れられたスイッチ。灯る照明。上がる、起動音。





「取り敢えず、最低限の第7音素は集まった、て死神さん言ってたけど」

「微妙に足りなくても、まあ大丈夫だろ。あのアホから根こそぎ盗ってるし」

「え。まぢ?何時の間に?」

「んなの、叩き落として串刺しにして足蹴にした時に決まってるだろ」

「をを!!流石ナイス!!」





アッサリのたまったに、あたしは思わず拍手を送る。

はといえば・・・・・・うん。すっごい自慢げな顔だ。





「それに、今のは呪縛から解放されてる。俺もいる。ソレで何を不安がれと」





しかも不敵に素敵に笑みを浮かべて、オトコマエな事を云うに、苦笑して。

あたしは前を、見据える。





「じゃあ、行くとしますか――――――レムの塔へ」






























ドロボウじゃありません。

ちょっと勝手に借りるだけです。






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