さて。

そんなふうに、ケンカするお坊ちゃんとに挟まれつつ。何だかんだとのんびりまったり公爵邸で数日過ごしていたあたしですが。





「――――――瘴気の中和には、困った事に大量の第7音素と超振動が必要なんですよ」

そんな事を、各国の重鎮達の目の前で説明したディストは、すんごい顔色が悪かった。





てゆーか。3カ国間の和平条約会議にナゼあたしまで参加。





会場がセントビナー、アスターさんのお宅なのはイイ。

ダアトの後ろ盾があるものの、いちおー自治区として認められてる。マクルトとキムラスカの国境跨いでる。

3カ国の影響を同じくらい受けてるからこそ、ドコの国も変な手出しは出来ない。打って付けだとは思うよ。





キムラスカからは、宰相さんと将軍さんに留守番してもらって、王サマとオヒメサマと公爵サマが出席。

お坊ちゃんもいるのは、超振動使いってコトで。当り前の人選だよね。





んでマクルトからは、やっぱり宰相さん留守番に置いてきて、マクヴァガン将軍にアスランさんと陛下がお越しです。

まあコレも当たり前っちゃー当たり前なのか。





そしてダアト。僕レプリカですってカミングアウトしたアイビィと私実は生きてましたってカミングアウトしたイオン。

ソレから、豚樽失脚で大詠師になったトリトハイムさん。んで参謀のシンク。





後は各国から護衛の騎士兵士が壁際に控えてる。

ダアト陣営にはアニスとアリエッタの姿もありました。





・・・・・・うん。んで、なにゆえ第4勢力、みたいな感じであたしとまで参加?





「簡単に説明しますと、第7音素を用い、超振動によって瘴気を分解、中和させる、んですが」

「ローレライを解放した事で、第7音素は減少していってる・・・・・・足りるのか」

「・・・・・・第7音素を結晶化させて集めている最中ですが・・・・・・最悪、第7音素術師に命を掛けて貰う事になるかと」





インゴベルト王の質問に、ディストの返答は重い。

確かに、原作ではあのアホが内郭にいるウチに瘴気の中和をやったけど。ソレでも、1万のレプリカが犠牲になった。

そして。原作よりも早めにあのアホを解放してしまった今回。第7音素の減少による影響が、既に世界中に出てる。





「超振動の方は、どうなんだ?」

「幸い、今この場には単独で超振動を起こせる人間がお2人いらしゃいます。ルーク様とアッ・・・・・・殿のお2人が。ですが」

「長時間、維持しなければなりませんからね・・・・・・幾ら2人で分担しても、肉体の乖離は逃れられないでしょう」





ピオニー陛下の質問に、答えたのはアイビィとイオンだった。

ソレってぶっちゃけ、瘴気中和いこーる死ぬ、て言ってるのと同じで・・・・・・・・・・・・やっぱこの辺、原作と一緒ですか。





むーん、とムツカシイ顔をする国のトップ。

そんな中、ぴっ、と手を上げたのは・・・・・・だった。





「ちょっとストップ。は超振動使えないぞ」

・・・・・・・・・・・・え?まぢで??

「あのアホに呪縛されてた頃の『アッシュ』だったら使えたけどな。はもう第7音素集合体の同位体じゃないから」





――――――・・・・・・・・・・・・あー。そだった。この身体もー『アッシュ』じゃないんだった。

姿形はまだ『アッシュ』だけど。紅い髪も緑の目も、ココ数日で色が濃くなってきた。

多分1週間後には、完全に黒くなるんじゃなかろーか。





そんなの進言に、オエライさん方はますますムツカシイ顔になる。

「・・・・・・あの、ソイルの木の浄化システムを応用する事は、適わないのでしょうか?」

「・・・・・・出来ない事は無いですが。ソレでは時間が掛かり過ぎるんです。各国では既に、子供や老人から障害者が現れ出している」

オヒメサマの苦しい提案も、ディストにバッサリ両断されました。





「――――――・・・・・・・・・・・・俺がやる」





沈黙してしまった部屋の中。

ぽつり、そんな声がイヤに響いたのは、けっこー経ってからだった。





「俺が、超振動を使って瘴気を中和する――――――ディスト、必要な第7音素は、どれくらいで集まる?」

かたり、と椅子から立ち上がり、ひたとディストを見据えた、お坊ちゃんの目には悲愴な決意。

「さ、最低でも後2割で、ソレも2〜3日中には用意出来るかと思いますが・・・・・・ですが」

「お待ちなさいませルーク!もう少し、もう少し調べれば、何か新たな案が出てくるかもしれません!!」

言い淀むディストに、オヒメサマが必死の顔でお坊ちゃんに食い付く。だけど。

「んなヒマがドコにある」





お坊ちゃんは、そんな一言で止めたそうにしてる皆の迷いを一蹴した。





「瘴気障害者はもう出始めてるんだろ。予断なんざ出来ねぇトコまで来てんだろ」

お坊ちゃんの、握った拳が震えてる。

怖くないハズが無い。選びたいハズが無い。なのに。

「だったら、やるしかねーじゃぬぇーか」





この子供は。原作から大きくズレたこの世界でも。

世界を生かす為に、その小さな命を使うのか。






























おねにーさまホントに超振動使えないんですよ。






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