あたしにしがみついて。小さく震えて声を殺して。 ――――――泣く、、を。あたしが見たのは初めてだ。 ふ、と顔を上げれば、誰も彼も、突然の闖入者のとんでもない言動に、だけど何を言うワケでも無く俯いてる。 そんな中。そろり、とあたし達に近付いてきたのは、やっぱりえぐえぐ泣いたまんまのアリエッタで。 「・・・・・・あ゛、あ゛っじゅ、」 「触るな!!」 あたしの傍にペタンと座り、そろそろと伸ばされた細い小さい手を、は怒声と共に、ばしり、と叩き落とす。 「に触るな!!近付くな!!」 「」 「視界に入るな消えてしまえ俺からを奪ったを殺したこんな世界の人間なんか皆みんな滅びれば良いんだ!!」 「止めろっっ!!」 の頭を自分の肩口に押し付けた。 腰に回した腕に、更に力を込める。 ――――――あたしは、『宝玉』だ。世界に憧れ人間を愛した『宝玉』の想いを宿すモノだ。 人間だった頃の記憶が先行して自覚なんか皆無に等しいけど。ソレでも世界の癒し手だ。 そして、は。そんなあたしの一部だ。あたしの欠片で出来たもう1人のあたしだ。 守護者として術式を組み立てたから、あたし至上主義だけど。ソレでも、もう1人の世界の癒し手、だ。 ・・・・・・なのにその、癒し手が。世界の滅びを、望む、なんて。 「――――――ダメだよ、」 「・・・・・・・・・・・・ぅ、っく・・・・・・ふぇ・・・・・・・・・・・・っ」 「忘れちゃいけない。世界は全だ。一じゃない」 「・・・・・・・・・・・・ぇっ・・・・・・ひっく・・・・・・・・・・・・っっ」 「全てが善じゃない。だけど、全てが悪でも、ない」 だって、ホントはちゃんと解ってる。 哀しくて、だからこそ強く優しかった子供達に心を貰った。 恐怖を克服し歩み寄ろうとする勇気を黒髪の青年から学んだ。 生を狂わされながら、ソレでも離れなかった金糸と銀糸の姿に絆の何たるかを知った。 真っ直ぐ前を見据えて夢を語る子供達の姿を成長をその目で見届けた。 だから、だってちゃんと。 なのに。ソレでも言わせたのは、あたし。あたしの所為だ。 解ってる・・・・・・解ってるから、痛い。心が、痛い。 ――――――・・・・・・・・・・・・ちくせう。ソレもコレも全部あんの元凶ヤローが悪い。 自分で止めておいて何だけど、もー完膚無きまでにボッコボコのけっちょんけちょんになってから止めれば良かった。 そう思ったらムカムカしてきて、だけどあたしは、はふ、とひとつ息を吐いて未だに地面に縫い付けられてるソレに目を向ける。 「――――――さて、ローレライ」 びくり、と大きく人型が揺れた。 ――――――もうし、わけ、ありま―――――― ちょっと前の唯我独尊なんてナリを顰めた。ソレは情けない、『声』で。 「ソレは、何に対しての謝罪だ?」 ――――――御魂が、宝玉、と、気付か、ず―――――― ・・・・・・・・・・・・ソコか。ソコにだけか謝るのは。 ――――――生命の至宝・・・・・・どうか、どうかお赦しを―――――― 「お前が謝るのは、俺にだけか」 声は自然と低くなった。 あたしに、あたしだけに謝れば。あたしが赦せばソレで済むと?『宝玉』だって知らなかったさっきは、謝りすらもしなかったのに? だとしたら、コイツは救い様も無いアホだ。 「この世界は歪んだ。お前の愛し子は絶望を知った。俺の片割れは世界の滅びすら口にした」 お前が地核に潜らなかったら、預言なんて生まれなかった。 お前が『アッシュ』を消さなかったら、お坊ちゃんはあんな顔をしなかった。 お前が『あたし』を殺さなかったら、は泣かなかった。 「――――――人に関わるなら、お前は心を識っておくべきだった・・・・・・・・・・・・識って、おくべきだったんだ」 あたしの言葉に、揺れる人型は沈黙する。 その、人型に。かつり、と足音を響かせて。近付いたのはお坊ちゃんだった。 「ローレライ・・・・・・アンタは俺に色んな事を教えてくれた。守ってくれた。ソレは感謝してる。けど」 見下ろす視線は、哀しみと憤りと。 「アッシュ・・・・・・にした事、を苦しめた事を、赦せねぇ」 震える身体を抑える様に。固く拳を握り締めて。 「俺は、アンタを赦さねぇ」 愛する子供の、その言葉は。 ローレライにとって、一番の。罰だと思った。 |
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一番堪える罰はやっぱりコレなんじゃないかと。 | ||
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