「・・・・・・わかった・・・・・・けど!!やっぱり腹の虫が収まらないっっ!!」





渋々。ホントに渋々。

だけどちゃんと頷いたのに、はひと声吠えて、だんっっ!!と地を蹴った。





「ちょっ、!?」

じゃきん、と左手の爪を伸ばしてお坊ちゃんに突進するに、あたしは慌てて上体を起こす。

「お前さっき解ったっつったでしょーがっっ!!」

ぅをっとうっ!?イキナリすっげ眩暈がっ。血ぃ流し過ぎた貧血だコレっっ。

「解ったとは言ったが了承したとは言ってないっっ!!」

うっわ屁理屈!!





はものすごいスピードで、反応出来なかった使用人さんの脇を通り過ぎお坊ちゃんの前へ躍り出て。

「お坊ちゃん!!――――――!!」

待てコラをい!!って・・・・・・・・・・・・え?ええ??ええええ????





「何時までもヒト様を上から見下ろしてんじゃねーぞこのクソ野郎がっっ!!」

――――――なっ!?がっ!!――――――





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんだターゲットはソッチか。

思わずホッと力が抜ける。





人間じゃありえない脚力で、いえ実際人間違いますが、お坊ちゃんの前から宙へジャンプしたは。

ゆらりと揺れる朱金の人型に、右の肩口へと引いた左の爪を、思いっきし振り下ろした。

しかも落ちる人型の腹にコレまた痛そーな蹴りを喰らわして、ホントに地面に叩き落とした。

――――――・・・・・・・・・・・・てゆーか、音素の塊叩き落とすって。なんつーありえん事を。





へたりと気が抜けて地面に懐いたあたしに、はゲシッと人型を踏み付ける。

「さぁて。どうしてくれようこのクソ野郎」

しかもぐりぐりって、すんごい力込めて・・・・・・・・・・・・うーわー。容赦無い。

「容赦なんかしてたまるか」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん。そーとーキてるね。当り前か当り前ですよね。





あたしはでっかく溜息吐いて、よっこいしょ、っと身体を起こしてあぐらかいて座った。

「あれ、。寝てていーんだぞ?」

「イヤ無理。絶対ムリ。お前を今放っといたらナニするか怖くておちおち寝てられん」

「そんな心配しなくても。大丈夫、このアホの始末はちゃんとやっとくから」

ぐりぐりぐり・・・・・・だーかーらー。

「ソレこそダメだっての。そんなでもいちおーこの世界の高次元素よ?この世界を支えてる要のひとつよ?」

ソレが無くなっちゃったりしたら、世界のバランス崩れるでしょーが。

「俺の『世界』を壊したヤツの世界なんか知るか」





吐き捨てながら、腰から『闇牙』を抜いて。

――――――ぐっ!?――――――

ずんっ、と突き刺された腹部に、実体を持たないハズの人型が呻く。

「コイツが、壊した。俺のを。俺の、『世界』を――――――赦せる、ものか」

絶対零度の視線で見下ろしながら、すらりと『光牙』まで抜き放ち。

――――――か、はっ――――――

どんっ、とその切っ先は胸を貫き地面に縫い付けて。





「殺してやる潰してやる滅してやる欠片も残さず二度と生まれる事が無い様に存在する事すら赦すものか」





綺麗に。まっすぐ伸びた、伸ばしたままの左手の凶器となった爪を。ぐさり、と。顔面に、刺して。

「・・・・・・やめ・・・・・・もう、止めてくれっ、頼むから!!」

泣きそうな声で、顔で。お坊ちゃんがの右腕を、掴んだ。

「俺の・・・・・・っ、俺の所為なんだっ。ローレライはただっ、俺を助けようとして、だからっ、全部俺の・・・・・・っ!!」





だけどお坊ちゃんの訴えも、は冷たい一瞥をくれるだけで。

「ああ確かにお前が元凶だな――――――だがお前は、ついさっきまでその事を知らなかった」

爪を抜き、頭を蹴って、また爪をグサリと突き立てる。

「知ってたらお前は止めただろう?だからこのアホもお前に詳しい事は教えなかった・・・・・・ほら、やっぱり悪いのは全部、コイツだ」

ぐり、と捻りまで入れて。無表情なのに、は人型を切り刻んで、いく。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ、もう。





。俺の剣。俺の盾」

ほう、と。溜息混じりにその名前を呼んだ。

ひくり、と小さく震えた、その背中に両手を伸ばし。

「おいで――――――愛しい俺の、絶対の守護者」





振り向いた、の表情は。

迷子になった、子犬みたいだった。





「おいで」

促す様に、もう一度言うと。は爪をシュッと戻して、ふらふらと、あたしに近寄ってきた。

伸ばした手に、指が触れるトコまで来て。力が抜けたみたいにへたり、と座り込む。

そして。





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っっ!!」





縋る様に。腕を伸ばして抱き付いてきたを。

あたしは。ぎゅう、と抱き締めた。






























守護者はヒドイ事もけっこー平気で出来る。

だってベースが「俺人間違うからタダの道具だから」て豪語してた忍者時代の『彼』ですから。






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