血が、噴き出す。

栓の役割を果たしてた剣を抜かれた、あたしの胸から。

アリエッタの悲鳴が、遠い。白い鎌を振り上げるディストの、剣を抜くアスランさんの動きが、遅い。





「――――――仙掌術」

背中から、抱き込まれて。胸に当たった手が柔い緑の光を孕む。

「遅くなって、ゴメン、な・・・・・・

肩に置かれた顎。耳元で囁かれた、声。

あたしは、緩慢に片腕を伸ばして。顔を伏せて首筋に押し付けられた頭を、抱いた。





「――――――・・・・・・・・・・・・





・・・・・・ああ、やっと・・・・・・やっと、取り戻した。

あたしの影。あたしの一部。あたしの翼あたしの力。

あたしの、守護者。





「・・・・・・・・・・・・

息をするのが楽になってくる。精神的な意味合いだけじゃなく。身体的にも、楽に。

「うん、

ふわふわ。あったかい。気持ち良い・・・・・・眠く、なってくる。





緩く抱いてた頭が持ち上がった。

「寝て良いよ、

抱き締めてたあたしから身体を離して、ゆっくりあたしを地面に横たえてくれて。

ちゅ、とおでこにキスをする。あたしを見下ろす朱金と黒のオッド・アイは優しくて。





「――――――後は、俺がヤるから」





・・・・・・・・・・・・顔を上げて立ち上がった、の目は険呑だった。

――――――・・・・・・・・・・・・あ。なんかヤバい、予感。





悠然と立つに、困惑してた皆さまは顔を強張らせてじりじり後ずさった。

アリエッタとティア、イオンにルークなんかはがくがくと身体を震わせてる。

のものっそい殺気が、もうハンパないくらいにこの場に充満したからだ。





「よくも『』を殺してくれたな、音素集合体――――――しかもあんな狭いトコに押し込めやがって」

ひたり、と見据える先は、揺れる朱金の人型。

荒げているワケじゃないのに、怒りの感情がびりびりと空気を震わす。

「テメェが何を大事にしようが勝手だが・・・・・・俺等を巻き込んでタダで済むとは、思うなよ?」





かつり、と。一歩を踏み出す。

視線は人型から、人型が大切に想うルークへと、移って。





「お前だったな。アレがこんな暴挙を起こした原因は」

びくり、とお坊ちゃんの身体が大きく震えた。

「ただ殺すなんて真似はしない。それじゃ俺の気が済まない」

ルークを守ろうと気丈に剣を構えるガイは、殺気に当てられて動けない。

「大切な者を奪われる絶望を。虐げられる苦しみを。貴様も解すが良い、ローレライ」

にぃ、と。の口角が持ち上がって。





「――――――呪われて在れルーク・フォン・ファブレの複製」





いっそ何でもない様にあっさりと。紡ぎ出された言葉は一言だった。

「呪われて在れ。宝玉を殺した者の愛し子。墜ちた世界の滅びの鍵。聖なる焔を模した人成らぬ生き物」

って、ナニ言霊練ってんの!?

「呪われて在れ世界の摂理に背いて生み出された子供。苦痛を、恥辱を、悲哀を絶望を」

ちょっとちょっとちょっと!!こらこら止めなさいって!!

「この世のありとあらゆる苦しみを、生きる限り味わい続け――――――」





「止めろってんでしょーがこんのバカ守護者ぁぁああああっっっ!!」

「あだっっ!?」





思わず掴んだ剣の玉。毟って投げ付けたら見事にごつーんと後頭部クリィンヒット。

お陰では頭押えて痛みにしゃがみ込みました。

あたしもなけなしの体力使い切ってへたりましたがね!!





「〜〜〜〜っっ!!っきなり何すんだよ!?!?」

「ソレはコッチのセリフだっ!!ナニ言霊なんか練ってんの!?」

「コレッくらい当然の報いだろあのアホのやった事考えたら!!」

「ヤられたらヤり返すってお前は子供かっっ!!」

「ガキで結構!!許せないモンは許せないんだっっ!!」

「だからってお坊ちゃんターゲットにすんのはお門違いでしょーが!!」

「俺だって言ったろ!!あのアホもおんなじ苦しみ味わえばいーんだって!!」

「したらお坊ちゃん俺とおんなじ立場って事じゃんか!!俺がこんな目に合ったのにおんなじよーな子お前が作るってワケ!?」

「・・・・・・・・・・・・っっ・・・・・・・・・・・・!!」





てゆーかあたし今血が足りてないから。コレ以上体力使わせないで。

ぢとーっと睨むをあたしも睨む。したらは一回ちらん、とお坊ちゃんを見て。ソレからまたあたしをじとーっと見て。





「・・・・・・・・・・・・わかった。」

じとーっとしたまま渋々、ほんっとーに渋々、こくりと小さく頷いた。

ふ。勝った。






























守護者は、大切な大切な御主人様を奪った集合体なんかダイキライ。

だけど仕返しで集合体と同じ事やって、集合体と同じだと思われるのはもっとイヤ。






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