ごぶり、と。熱いモノが込み上げた。

逆らう事無く吐き出せば、濃い液体がぱたぱたと足元に滴る。

ぱきん。耳の奥で何かが割れる音がした。





「・・・・・・ぁ、ぁあ・・・・・・あああああぁぁぁああああっっっ!!!!」





絶叫。

あたしを凝視しながら、頭を掻き毟るルークの。

ぱきん、ぱきん。割れる音は、続く。





「いやぁあ!!アッシュ!!イヤですアッシュ!!」

「何故っ、何故ですか貴方はっ!?」





悲鳴。

アリエッタがぼろぼろと泣きながら。イオンが焦りながら。駆け寄ってくる。

ぱきん。ばら、ばらばら。何かが崩れる音が、した。





――――――サスガ。音素を集束させまた乖離させるローレライの鍵。

切っ先は背中を突き抜けて、どんどん血が失われていってるってのに。

ちょっと思い付いたからやってみたけど。普通の剣じゃきっとこうはならなかった。





「・・・・・・・・・・・・われろ。くだけろ。たわんで、ゆるみ。ほころんでおちろ」





肺を傷付けた所為で、気管に血が逆流して息がしづらい。

なのにあたしは。意識の奥で何かが壊れるたびにあたしは。

楽に、なっていく――――――力が。解放されていくのが、解る。





震える脚が、コレ以上体重を支えられずにがくりと落ちた。

視線を落とした先には、深い、赤。ぱたりぱたりと。あたしから落ちて・・・・・・・・・・・・

――――――え。赤?

顔を上げた。走り寄ってくるのは桃色と緑。泣き崩れる朱金を支える金。

栗色は癒しの歌を歌って、ふたつの色合いの違う銀は、道具袋を抱えながら桃色と緑の後に続く。





「――――――・・・・・・・・・・・・いろ、が」





かは、と。血を吐き出すのと同時に。ざら。奥でまた崩れる音がした。

ざらり。ざらざら・・・・・・さらさら、さら。

その音が聞こえるたびに。色彩は鮮明になっていく。





「アッシュ!!」

「剣を抜いてはいけませんアリエッタさん!!出血が酷くなってしまう!!」

「くっ・・・・・・!!ディスト!!何してるんですか早く回復薬!!」

「いちいち言われなくても解ってます!!」





押し合い圧し合い、必死の形相で。

アリエッタが。イオンが。アスランさんがディストが。

伸びてくる腕。触れようとする、手。





――――――だけどソレは、イキナリあたしを中心にして発生した突風に、遮られた。





「きゃあっっ!!」

「うわっっ!?」

悲鳴を上げて、吹き飛ばされ。

「ぐっっ・・・・・・!?」

「いっっ!!」

地面に叩き付けられて、呻きを漏らす。





「――――――触るな」





後ろから、肩に置かれた、手。

そして落ちてきた声に、あたしは瞠目した。





に。俺の主に触るな――――――墜ちた世界の矮小な人間無勢が」





肩口から、腕が伸びる。

「なっ!!一体、一体何者ですか貴方は!?」

「アッシュからっ、アッシュから離れるです!!」

驚きに目を瞠ったディストがアリエッタが、厳しい目をあたしの後ろに向けて。





見知った細い指が手が。剣の柄を掴む。

「何を・・・・・・何をするつもりです!?」

「止めなさい!!出血多量で死なせる気ですか!?」

焦る様にアスランさんがイオンが、声を荒げた。





だけど。

「五月蠅い」

後ろの気配は、冷えた声で抗議を一蹴して。





掴まれた剣は、勢い良く引き抜かれた。






























さあおねにーさまの後ろにいるヒトは誰でせう?

・・・・・・・・・・・・いえごめんなさいあのヒトです・・・・・・・・・・・・

・・・・・・てゆーかこのヒト、ホントにプロットでは出なかったのに・・・・・・






<<バック60                   ネクスト62>>
<<バック>>