「まだそんな悪趣味な仮面着けていたんですね」





にぃっこり、と。天使の様な笑顔を浮かべていた被験者イオンは。

その天使な笑顔のまま毒を吐いた。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、あくしゅみ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・いやいや。気にしない。気にしちゃダメだあたし。

・・・・・・コレは貰いモノ。この装飾や色はあたしの趣味じゃないし。





「貰いモノでも着けている時点で貴方自身が悪趣味ですよ」





こ こ ろ を よ ま れ た ! !





ひぃい!!ナニこの子!?

何で解ったの思ってたコト!?





「表情が見えない分纏う空気で大体解ります」





またよんだ!!

あたしそんなに解り易い!?ねえ解り易い!?





「ほら、驚いた――――――貴方は自分が思っているよりもずっと、感情豊かですよ」





そう言って、またまたにぃっこり、と笑う被験者イオン。

そのにぃっこりは、さっきの黒いのとは違って白い。





・・・・・・てゆーか、まとう空気で大体解るだなんて・・・・・・

そりゃ演技はほど上手くはないけどさ・・・・・・

頑張ってもっと精進せねば。





――――――それにしても。





改めて、被験者イオンをじっくり見る。

青くてガサガサだった肌は、ふよよんとした血行の良い色。

くたびれていた髪も、ツヤツヤ。

ひゅーひゅーと変な息もしてたのに、そんな感じは今全く無い。





「・・・・・・・・・・・・生きて、おられたんですね」





知ってたけど。

聞いてたけど。

今。目の前にして。やっと、現実味が持てた。





――――――ちゃんと、生きてた。

諦めずに、生きて、くれていた。





「――――――貴方の、お陰です」

ふ、と被験者イオンが目を細める。

「生きたい理由は沢山あった。自分の為、友の為、愛する人の為、生まれてくる、兄弟達の為」

視線を落として。独り言の様に。

「でも、一向に改善策は見つからなかった。時間だけが無駄に過ぎ、焦燥は日に日に増し。そしてやがて――――――諦めた」





一度、言葉を切って。あたしを見上げたのは。

生命力溢れた、きらきらしい、緑の双眸。





「だけど貴方が。貴方が毒に気付いてくれたから。あの薬をくれたから。私は再び、生への希望を見る事が出来た」





被験者イオンのうしろ。

見守る様に、お坊ちゃん達が静かに佇む。





「私だけじゃない。シンクもアリエッタもアイビィも。貴方が、助けてくれた」





レプリカイオン・・・・・・アイビィが。アリエッタが。

そっと、左右から被験者イオンの手を取って。





「アクゼリュスの人々も。貴方が、救った」





一歩離れたところで、シンクとアニスがいる。

アニスは、おねーさんみたいな優しい顔をしてた。

仮面で隠れてるけど、きっとシンクも、同じ様な顔をしてるんだろう。





「――――――貴方に、心からの感謝を――――――私達を、救ってくれて、ありがとう・・・・・・アッシュ」





ふぅわりと。

命芽吹く、新緑の色が。優しく優しく、緩んだ。






























被験者イオン様は、ぢつはファブレ公爵サマの従者に化けて謁見の間にいたのです。

何故?そりゃ自分に毒盛って弟達見下してた樽をふんじばる為にですよ。






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