とつとつと。お坊ちゃんは語る。

まるで、懺悔の様に。





「父上・・・・・・公爵は、俺を一目で偽物だと見抜いた」

へぇ。あのおとーさまが。なんだかんだ言って、いちおー人の親ではあった、ワケだ。

だからって、あたしの中でサイテーのレッテルが剥がれたワケではないけれど。





「証拠は掴めなかったけど、ヴァン・グランツが怪しい事も解ってた」

あら。やっぱり?

まあでも、そーでないとイロイロおかしーもんね。お坊ちゃんやその他の人の態度見てるとさ。





「ソレでもあんたを取り戻そうとしなかったのは・・・・・・俺が、夢でお前を見たからだ」

――――――ゆめ。ですか。

ソレは予想外だ。フォンスロット開いたワケでもないだろうに、なんで夢。





「自分の意志で国を捨てヴァンに着いて行ったあんたを。俺を憎み殺そうとするあんたを――――――俺は夢で見た」

・・・・・・・え。ちょっと待て何だソレ。自分でヒゲに着いてったかどーかは置いといて。あたしがお坊ちゃんを殺そうとするなんて・・・・・・あ。

あれ。その夢って。もしかして。





「その夢が、実は第7音素集合体の記憶だって。未来に起こる事だって気付くのに、時間はそんなに掛かんなかった」

び ん ご ! !

ナニやっぱお坊ちゃんあの某音素集合体と繋がってたの!!てコトはあたしが『アッシュ』じゃないって知ってる!?ねぇ知ってる!?





「夢は飛び飛びだったけど。俺が身代わりとして死ぬ為に作られたって事も、預言通りに進めば世界が滅ぶって事も、解った」

いやいやっ、そのへんはいーからっ。あたしの事知ってんの!?どーなの!?





「バカバカしいって思った。何で俺が逆恨みされて、身代わりに死ななきゃなんねーんだ、って――――――だから、変えてやろうと、思った」

・・・・・・・・・・・・うん。どーやら知らないみたいだ。

ホントに記憶だけ。しかも飛び飛びでしか見てない、と・・・・・・某音素集合体とは話せないのか。話せないんだね。お坊ちゃん。





「最初は殺される前にあんたを殺してやろうと思った。ヴァンと繋がってるだろうから、情報引き出す為にコッチ側に寝返らせてやろうとも思った」

いやん。なんて物騒な。

でもだから、お坊ちゃんあたしが双子のあにうえ〜とかって嘘吐いたのか。うん納得。





「あんたはずっと辛かったのに。夢の中と現実のあんたは違うのに。俺は混同して。嘘を吐いた。騙していた・・・・・・あんたを、見捨てた」

うんごめん。なんか罪悪感ひしひしなトコ、ホントごめん。

そんな事言われてもね。あたし的にはだからどーした、て感じなのですが。





「・・・・・・謝って済む様な事じゃねぇのは解ってる。けど、」

「お話し中申し訳ありませんが、ルーク様」

だから、まだまだねちねち続きそうなお坊ちゃんを、強制的に遮った。





「以前申し上げた様に、私には10歳より以前の記憶を持ち合わせておりません」

「・・・・・・あ、ああ」

「よって、身に覚えの無い事で貴方から謝罪をされる謂れはありません」

「・・・・・・え・・・・・・け、けど」

「けど、何ですか。7年前、もし助けられていたら。今の私は無かったという事でしょう・・・・・・貴方は、私の此れまでを否定するとでも?」

「ちっ、違っ!!」





心持ち皮肉る様に言ったら、お坊ちゃんはガバッと顔を上げた・・・・・・うん。ソコでYesとか言おうものなら、問答無用でしばき倒してたよ。

まあ、ソレはさておき。





「・・・・・・貴方が私の何に対して罪悪感を感じているのか、大凡の見当は付きました」

溜息混じりに零した声に、お坊ちゃんの肩が跳ねる。

ぐ、と噛み締められた唇には、くっきり歯形が残って、血が滲んでいて。





「私の境遇を知ろうともせず、ただ見捨てた、とか。使えそうだから駒にしてやろうと思った、とか」

後ろの人達が、なんかビミョーな反応を見せた。

大なり小なり、同じ様な罪悪感を持ってるんだろう。俯いて、肩を震わせ、拳を握り締めてる。





「偽物のくせに、本物が本来在るべき場所を奪った、とか――――――だから何だというのです」

バッ!!と何人かが顔を上げた。息を呑んで、批難する様な目で。





「今更。過ぎた事を掘り返した処で過去に戻れる訳でも無し。其れ以前に、覚えていない私にとっては他人事でしかない。貴方の謝罪は、お門違

いなんですよ――――――赦しを望むが故の懺悔でしたら教会にでも行って下さい。私が聞かねばならない義理など無い」





「アッシュ!!そんな言い草は!!」

案の定噛み付いてきた人がいました・・・・・・うんコワイです使用人さん。

でももーちょっと待って。言いたい事取り敢えず最後までちゃんと言わせて。





「ソレからもうひとつ。先程、市長にもお尋ねしましたが。今度は貴方にお聞きしましょう――――――本物とは、何ですか」

ひたり、と。お坊ちゃんを見据えて。

「オリジナル?レプリカ?だから何です。この世に同じモンなんてひとつも無い。私は私。貴方は貴方。全く別の、ひとつの命です」

悠然と、腕を組んで。

「私も貴方も。違う、という一点のみが同じ。ただの、生きた命だ。差を付けるな。一緒にするな。私は貴方じゃない。貴方も、私じゃない」





オリジナル。この子はあたしをそう呼んだ。

自分は贋作。紛いモノだと。そう、言っている様で・・・・・・だから。





「レプリカだから偽物だとか、オリジナルだから本物だとか――――――そんなもの、犬にでもくれてやりなさい」






























お坊ちゃんサイドの暴露話。

だけどおねにーさまは「あっそう。ソレで?」な感じ。

だってホント今更だし。

弟(お坊ちゃん)憎め〜憎め〜ていうてんてーのマインドコントロールなんて効いてないし。






<<バック44                   ネクスト46>>
<<バック>>