あたしがぶっちゃけた秘預言に、テオドーロ市長さんは、がっくりと膝を着いた。

お坊ちゃん達を包囲していたユリアシティの人達も、ざわざわと落ち着き無い状態で。





「貴方方が預言を遵守するなら其れは其れで結構・・・・・・但し、私は集団心中などしたくありませんので。巻き込まないで下さいね」





真っ白に燃え尽きてしまったらしい市長さんを睥睨しながら言い捨てる。

うん。取り敢えず言いたい事言ってスッキリした。

ついでにココでの用も終わった。この混乱だ。

もう誰も『ルーク』が預言外れて生きてるからって殺そうなんてしないでしょ。





なんか、引っ掻き回すだけ引っ掻き回しただけ、って感が拭えないんだども・・・・・・まあ、ソレはソレ。

今まで選択を放棄して預言なんてモンに依存してたツケだ。思う存分、悩めば良いのさ。





てなワケで。今のウチに逃げ・・・・・・もとい、さくっとダアトに帰る準備でも・・・・・・

むう。法衣やらポーチやら、まず部屋に取りに戻らないと。





誰も彼もがあたしの暴露話に考え飛ばしてるから、抜け出すなら今。

あたしはこっそり、足を扉に向ける。





「待っ・・・・・・待ってくれアッシュ――――――オリジナル!!」





だけど部屋から一歩出た途端。

そんな呼び方されてまたもやあたしのこめかみがひくっとなった。





・・・・・・・・・・・・あたしさっき言ったよね。市長さん相手にだったけど。





本物とか偽物とか。オリジナルとかレプリカとか。そんなん命にありゃしないって。

本物である前にあたしはあたしというひとつの命だ。

レプリカである前にお坊ちゃんはお坊ちゃんというひとつの命だ、って。





お坊ちゃんだって聞いてたハズだ。

ソレともあたしの言ってる意味、解らなかったのかこの7歳児は。





ちろん、と後ろを振り返ってみれば。





お坊ちゃんが護衛使用人その他モロモロぞろぞろ引き連れ、あたしを追い掛けてくるトコで。

・・・・・・・・・・・・うん。なんか切羽詰まった感ひしひし。巻き込まれる前にトンズラ・・・・・・・・・・・・





「待て、って!!」

・・・・・・・・・・・・うん無理でした。





腕を掴んできた手に、ゾッと悪寒が走って振り払う。

ソレをどう取ったのか。お坊ちゃんは傷付いた顔をした。

・・・・・・・・・・・・え。ナニこれ。あたしが悪いの?ねえ悪いの?





「・・・・・・すいません。つい、条件反射で」

取り敢えず謝ってみる・・・・・・あ。ちょっと浮上した。

「・・・・・・コッチこそ、悪ぃ。イキナリ掴んじまったりして」

てゆーかおたく忘れてたね。あたしが男性限定接触恐怖症だって。忘れてたね。





あたしはちっちゃく息を吐いて、ちゃんとお坊ちゃんに向き直る。





「――――――で。私に何か?」

「・・・・・・え、あ・・・・・・と、その・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・何も無いのでしたら、戻らせて頂きます」

「っ、待ってくれ、オリジナル!!」





――――――・・・・・・・・・・・・まだ言うかこの子は。





自分でも解るくらい据わった目でじろりとお坊ちゃんを睨め付けた。

びくぅっっ!!と。お子様達が美女が少将さん使用人さんの成人組2人まで、心持ち逃げ腰になる。

お坊ちゃんだけが、逃げたそうな顔でソレでもあたしを見据え返した。





「・・・・・・・・・・・・さっきの、俺の話。聞いてたん、だよな」

「――――――・・・・・・・・・・・・申し訳ありません。盗み聞きをするつもりは、無かったのですが」

「いや、良い。謝らなくて良い――――――俺が、お前のレプリカだって事も」

「・・・・・・・・・・・・ええ、聞こえました」

「お前が、本物の『ルーク・フォン・ファブレ』だって事も」





お坊ちゃんが俯く。

薄暗い廊下で、その暗さよりも重い空気が、横たわる。

長い長い、沈黙・・・・・・や、雰囲気が雰囲気だから、そう感じるのかもしれない。





「――――――悪い」





その沈黙をとうとう破って。お坊ちゃんがぽつりと零したのは。

短い、謝罪だった。






























お坊ちゃんの頭の中では、アッシュという個人である前に、自分のオリジナルだという認識がされているのです。

なので咄嗟の時はオリジナル!!と呼んでしまう。

・・・ぶっちゃけかっぱがそう呼ばせたかっただけですがナニか。






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