意識が浮上したのは、唐突だった。





「――――――目、覚めたです、か?」

柔らかな声。さらり、前髪を梳き上げる感触。うっすらと、まだ重い瞼を持ち上げれば、ソコには。

「・・・・・・・・・・・・アニス・・・・・・・・・・・・アリエッタ・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・ふえ〜、良かった〜・・・・・・」

あたしの声に、ツインテールはへにゃ、と腰を抜かし・・・・・・





「っ、アニス?」

視界からいなくなったツインテールを追い掛けようと思わず上体を起こそうとしたけど。

「ダメ、です!!アッシュ、寝てるです!!」

横からすんごい剣幕で桃色っ子に怒られて、あたしはベッドの上に逆戻りした。

・・・・・・んん??ベッド??





「・・・・・・・・・・・・ココは・・・・・・・・・・・・」

はて、見た事無い天井です。なんか薄暗いし。夜?

「えっと、ココ、ユリアシティって言って」

「ティアの実家、あるです。アリエッタ達、今ソコにお邪魔してる、です」

腰の抜けてたツインテールが、すぐ傍の椅子に座り直し、その横で、桃色の髪の少女はくしゃりと顔を歪ませたまま付け足す。





――――――・・・・・・・・・・・・ゆりあ、してぃ。ですか。

あの。預言絶対主義の。





「・・・・・・アリエッタ、アニス。経過を、教えて頂けませんか」





謡ってた間の記憶は曖昧。ぶっつん意識が途切れてるあたり、毎度の如くあたしは最後まで保たなかったみたいだ。

しかも今回、原作みたいにタルタロスの影すら無かったハズ。なのに何故ユリアシティ。どーやってココまで辿り着いたの。





そんなあたしの疑問に、少女2人は顔を見合わせ。

「・・・・・・アッシュ、覚えてない、ですか?」

「・・・・・・音素集合体達が、力を貸してくれたんですケド」





な ん で す と ?





「・・・・・・・・・・・・ソレは、一体如何いう」

「・・・・・・あれ。あたしてっきり、アッシュ響士が出したあのおっきな譜陣、音素集合体を喚び出す為の譜術だと思ってたのに」

いやいやいや。違います。全然違います。

「ワルター、水の蛇になった、です。アッシュ、ソレは覚えてるですか?」

「・・・・・・・・・・・・ええ。その辺り、までは、未だ・・・・・・・・・・・・」

逆を言えば、ソレから先まったく覚えてないんだけど。





「その後、シルフ達が空から降りて来て。愛し子の祈り、聞き届けた、って言って、力を貸してくれたんですよ〜」

「ノーム、壊れ掛けた地面、繋げてくれたです。ウンディーネ、沈み掛けた地面、浮かせてくれたです」

「シャドウとレムがバリアみたいなの張ってくれて、シルフとイフリートが落ちた大地をユリアシティまで動かしてくれたんで〜す」





うそん。あたしの謡、音素帯にまで届いたのか。んで動いたのか。音素集合体。

・・・・・・・・・・・・あたしが『誰』かも、もしかして彼等は解っちゃった?





「・・・・・・えと、ソレで、ですね〜・・・・・・あ、死人は出ませんでしたよ。いちおー。だけど、ですね〜・・・・・・」

ぬ?まだ何かあるんですか、ツインテール。

「・・・・・・ワルター、消えちゃった、です・・・・・・水になって、ぱしゃ、って・・・・・・」





・・・・・・・・・・・・あー。まあ、あんだけ無茶したらね。強制送還しても仕方ないだろーね。

でも死んだワケじゃないから、そんな顔しないで良いよ2人とも。





「・・・・・・その、直ぐ後に。アッシュも、倒れたです・・・・・・」

「そーそー。も〜、顔色真っ青通り越して真っ白だし、幾ら呼んでもうんともすんとも言わないし」

「・・・・・・ナタリア様、リヴァイブ掛けてくれたです。ティア、リザレクション掛けてくれたです。でも、起きなかったです」

「他にもレム達が回復術掛けてくれたけど効かなかったし、『エリキシル』だっけ?ソレ使ってもダメだったし」

「・・・・・・ホントに、死んじゃったかと、思った、です・・・・・・アッシュ、もう、あんな事、しちゃダメです・・・・・・!」

「ホントですよ〜う。あの後ルーク様発狂寸前だしシンクは何時もの冷静さかなぐり捨てるし。すっごい大騒ぎだったんですから〜」





・・・・・・・・・・・・うんソレはごめん。大騒ぎの元凶になちゃった事に関しては素直に謝る。だからそんな、ジトッと見詰めないで。

だけど何故お坊ちゃん発狂寸前。あの仮面緑っ子が冷静さ失くすって・・・・・・・・・・・・あれ。そーいやそのお坊ちゃま達は、今ドコに?





「――――――アニス、アリエッタ。ルーク様は、どちらに?」

「え。ルーク様なら、今ティアのおじーちゃん・・・・・・ユリアシティの市長さんとお話をしてますケド」





その返事を聞いた後の、あたしの動きは早かった。

ベッドから跳ね起きて・・・・・・まだちょっと足元覚束ないけど、真っ直ぐ部屋の外へと向かう。

「ちょっ、いきなりナニしてんの、じゃないしてるんですかアッシュ響士!?」

「ダメです!!まだ寝てる、です!!」

慌てた2人が、あたしに取り縋ろうとするけど。





「知っていますか、アニス。アリエッタ――――――アクゼリュスの崩壊と『聖なる焔の光』の死が、秘預言に詠まれていた事を」

少女達の動きが強張る・・・・・・どうやら知っていた、みたいだね。なら、考えてみて欲しい。

「ココはユリアシティ――――――そう、言いましたね」

あたしの覚えてる事が、この『世界』でドコまで通用するか解らないけど。

「預言を絶対視する人間の住まう、監視者の街――――――預言を外れた存在を、そのままにしておくと、思いますか?」





その言葉に。ツインテールと桃色っ子は、ハッと顔色を変えた。






























ココの設定では、特務師団に回される任務が、預言から外れた人の暗殺とかだったりしてるので。

ユリアシティも例に漏れず。

預言が絶対!!だから、見逃しゃしない。

・・・ドコのカルト宗教団体だ。






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