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シンク達の質問を馬耳東風な感じで聞き流してたら、何時の間にかアクゼリュスに辿り着いてた。 辿り着いた、のはいーんだども・・・・・・ 「・・・・・・想像以上、ですわね」 思わずぽつり、といった感じのオヒメサマの言葉に、内心大きく賛同したい。 気分が悪くなる様な空気。立っている事もままならない人々。祟場一歩手前な、瘴気の濃さ。 ――――――知識として知ってはいたけど、コレホドとわ。 しかもこんだけどんより黒い靄みたいなのが発生してるってのに、預言に詠まれてないから、て理由で逃げもしなかった住人達が殆んど。 ・・・・・・思わずどっか遠くを見てしまったって、誰も咎めまい。 でも、そんな住人さん達も、先に着いてた救助隊の説得や何やらでようやく重い腰を上げたらしい。 今ちょーど、6割くらいの避難が終わったとか。 救助隊の兵士さん達がえっちらおっちら住人さんを運んでるのを横目に。 あたしは色々と報告聞いたり指示出ししたりしてるお坊ちゃんとの距離を測る。 てゆっても、あたしの護衛対象の少将さんはお坊ちゃんのすぐ傍にいるから、そんな離れてないんだけどね。 原作では、てんてーは導師を誑かしてダアト式封咒を開けてお坊ちゃんの超振動でツリーを壊した。 でも今、導師はココにいない。だから封咒は開けられない。 ソレにお坊ちゃん。あたしと会ってから、彼がてんてーと顔を合わせるトコを見た事はないし、そんなに妄信もしてないみたいだけど。 何となく。何となくだよ?てんてーをふんじばるには、お坊ちゃんの傍にいるのが一番の近道なんじゃないかなー、なんて予感。 ・・・・・・護衛としてくっついて来てるのに、少将さんほったらかしにするのもアレだしね。 ――――――なんて、ちょっと楽観的に考えてた、ちょーどその時だった。 ばさばさっ!!と。大きな羽音。 「なっ、アリエッタ!?」 驚いて声を荒げたシンクの声に、皆の目がいっせいにソッチを向く。 その時には、もう。跨ってたグリフィンの上から、細くて小さな身体が、ずるり、と地面に落ちるトコロで。 「アリエッタ!!アリエッタ、大丈夫!?」 悲鳴じみた声を上げたアニスが一目散に駆け出し、彼女の身体を抱え起こす。 「アニス!!そのまま!!」 「治癒術を掛けますわ!!」 ティアとナタリア姫が遅れて駆け寄って、それぞれ詠唱に入った。 女性陣に一歩遅れる形で、男性陣も駆け寄る。 力無く上げられたアリエッタの、細い手を膝着いて握り締めたのはシンク。 「何が、一体何があったのさアリエッタ!!なんで、こんな・・・・・・!!」 その痛々しい声に、あたしは眉を顰める・・・・・・確かに、酷い。良くココまで途中で息絶える事無く辿り着いたものだ。そう、思ってしまう程の。 右肩、左脛、右脇腹。小さな穴が開いて、血を垂れ流しにしてる。見ただけで解る――――――コレは、銃創だ。 「・・・・・・・・・・・・流れ、が」 あたしの横で、水主が呟いた。その視線が凝視してるのは、彼女の、腹部。 「マスター!!この子供内臓が破裂している!!治癒術では間に合わない!!」 な ん で す と ! ? ! ? 「水主!!整えろ!!」 「承知!!」 あたしは叫びながら、アニスからアリエッタを奪って。 「『三千世界の復元』!!『魂結』!!」 心臓に最も近い指、自分と彼女の左の薬指を合わせ、右手で彼女の額を押さえ、念で復元したのはどっかの巫女サマが使っていた術。 魂と魂を繋げて、死に掛けの人を延命させる術だ・・・・・・術者の魂が対象のよりも弱かったりすると、2人揃ってオダブツだけど。 水主も同じ様にシンクを押し退けて、アリエッタの下腹部辺りに両手を添えた。 「水よ、我が意に沿え!!」 ふわりとソコから淡く青い光が立ち昇って、体内の液体の流れを、良い方向に導こうとする。 「っ、貴方方は、一体――――――」 「詠唱を止めるな、王国の姫!!ユリアの末裔もだ!!」 あたし等の行動に驚いた皆の、心の声を代弁した様な少将さんの声を遮って。水主が鋭く見上げたのは2人の美女。 その声に、2人はハッと我に返って詠唱を再開し。 「マスター、追い付かない!!細胞の死滅が早過ぎる!!」 「だろうなっ、コッチも引き摺られそうだっ!!――――――アニス!!俺の腰のポーチからドラッグケース!!」 「はっ、はぃいいっっ!!」 びくぅ!!と跳ねたツインテールは、慌ててあたしのポーチをごそごそ漁る。 そしてズルッと。言われた通りにケースを出したアニスは、ソレを見て首を傾げ・・・・・・ああああそーいや言ってなかったね!! 「『エリキシル』!!蓋は菱形、紅い液体だ!!アリエッタに掛けろ!!」 「え、ええ!?か、かけるの!?この飲み薬を!?」 「大気に触れれば霧状になる!!皮膚から吸収される外服薬でもある!!早く!!」 「わ、解った!!」 慌ててアニスが動いた。わたわたとケースから細い薬瓶を取り出し、きゅ、と蓋を開けてアリエッタの上に中身をぶちまける。 重力に従って零れた液体は、たちまち薄い霧と化して、アリエッタの身体を包む様に降り注ぎ。 「・・・・・・・・・・・・う、・・・・・・・・・・・・っ」 小さく、洩れた声。 ソレに、あたしは入っていたらしい肩の力をホッと抜いた。 |
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・・・やっとアクゼリュス・・・ココまで長かった・・・ | ||
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