アクゼリュスへの進行は、順調だった。

途中で導師誘拐なんてのもなかったし。

護衛は対象の身の回りのお世話も任されたけど、少将さんは基本軍人なんで自分の事は自分でやります、な人だったし。





ホント、あくびが出そうなくらい順調だったんだよ。――――――あたし以外は。





あたしはずっとピリピリしてた。

何故?――――――早くアクゼリュスに着きたかったから。

てんてーより先に、着きたかったんだ。だってそーすれば、少なくともてんてーが何か仕出かす前にふんじばれる。

そんな殺気立つあたしの事になんか、だぁれも気付かなかったけど。





「如何かしましたか、アッシュ響士?」

「ナニそんなに気ぃ立ってんの。もしかしてアノ日?」

「・・・・・・・・・・・・いやいやシンク。ソレ違うぞ。絶対違うぞ」





――――――いや、いた。

少なくとも3人。今のあたしと同レベルの力量の持ち主が。





ちろん、と流し見てみると、柔らかく微笑む少将さんとつーんとそっぽを向くシンクと困った様に笑ってる守護剣士。

・・・・・・しかもシンク何だソレ。アノ日って何だ。

をいこら元使用人。違うって言っときながら何故あたしをもしかして・・・・・・な目で見る。

あたしは小さく嘆息して・・・・・・見事に彼等を素無視してやった。





「アッシュ響士?気分でも悪いんですか?」

「あー、あんた今まで殆んど休憩も取らなかったもんな。疲れも溜まってんだろ?」

「いや、違うね。やっぱりアノ日――――――」

「気分は悪くありませんし疲れも溜まっていなければアノ日とやらでもありません――――――ご用件は何でしょうかシンク謡士」





みなまで言わすかこの性悪が。





一気に言い切って今度はお三方に向き直った。

てゆーかイイのオタク等。幾ら順調な小型の乗用艦の上だからって護衛対象ほったらかして甲板なんぞに出てきて。

特に少将さん。オタク今護衛される側。水主はどーした水主は。





「ホントにピリピリしてるみたいだな」

オタク等がおとなしーく艦内から出て来なきゃ、少しはマシでしたよ。

「珍しいじゃん。何時でも何でもドコフクカゼなあんたがさ」

そー見せてるだけで、何時でも何でも何処ででも、内心はギリギリですよあたしは。

「何か、気に病んでいる事でもあるんですか?」

そりゃあもう。たんまりありますとも。





「――――――いいえ。別に何も」

だけどあたしは、差し障りない返事を返すだけに留め・・・・・・あ。何かなその溜息。しかも3人揃って。





「・・・・・・アンタさあ。」

重く重く、シンクが呟く。なんか呆れた様な疲れた様な・・・・・・

「なんでいっつもそんなんなのさ」

・・・・・・えー。そんなん、とか言われても。どんなんよ。





「自分の事何も話さないし」





イヤだってフツー話せないっしょ。あたし『アッシュ』じゃアリマセン、なんて。

そんな事言った日にゃ、は?アンタ頭大丈夫?とかフツーに言いそうだしこの子・・・・・・何より、信じらんないんだよね。

少将さんはどーだか知らないけど、この子どころか後ろの元使用人さんも、あのお坊ちゃんと繋がってるし。

あのお坊ちゃんはあのお坊ちゃんで、もしかしたら、あの元凶の某音素集合体と繋がってる・・・・・・かも、しれないし。





「他人(ヒト)に関心無いし」





いやいやだからですね。今のあたしはぶっちゃけ自分の事だけで手一杯なのですよ。

だから他人の事にかまけてうっかり情とか移っちゃったりして、何とかしたげたい!とか思って結局仲良く自滅、なんてしたくないのですよ。





「なのに変な噂だけはドッサリだし他人(ヒト)を庇って怪我するなんて日常茶飯事だし」





・・・・・いや。だからってそんな事言われても。

ヒトを咄嗟に庇っちゃうのは癖なのです。無意識なのです。コレでも治そうとはしてんだよ?

噂に至っては・・・・・・ソレはほんっとあたしの所為じゃないから。





「コッチは少しでも会話成立させようって頑張ってんのにさ」





・・・・・・・・・・・・したかったのか。会話。しかも頑張ってたのか――――――あれ。コレがウワサのツンデレ?

・・・・・・・・・・・・うをう。そー考えると腕組みながらなんかぷりぷりしてるシンクが何だか可愛く見えるぞ。さすがツンデレ。びばツンデレ。





――――――・・・・・・・・・・・・てゆーか。なんで会話したくて頑張ってんのか、イロイロ勘ぐっちゃうあたしって。

「・・・・・・其れは、気付かず申し訳ありませんでした・・・・・・とでも申し上げた方が宜しいんでしょうか?」

「悪いなんて思って無いくせに。首傾げるくらいなら謝らないでよ」

うんソレこそゴメン。





つーん、とソッポを向くシンクに。

なんかもう、色んな意味であたし人間不信に磨きがかかってんのかもしれない、とか何となく思ってしまった。






























親善大使にその補佐の王女様に、ダアト最高位の代理に皇帝名代。

そんなすんごい肩書持ったお方達を歩かせるなんて以ての他!!て事で、ココでは乗用艦出ました。

譜術に強いマクルトがタルタロスなんて戦艦持ってんだから、

譜業都市バチカルにだって1隻や2隻あっても不思議じゃないと思うのですよ。






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