大男と金髪美人さんを縄でぐるっぐる巻きにして。

決して逃がさない様に、て言い含めて部下達をダアトに返し。

あたしはシンクと、もう1人残したあたしの部下――――――水主と3人で、るぅく様の護衛に当たった。





まあ、護衛と言っても。ココはタルタロスの中。イレギュラーが無い限り、軍艦にケンカ売ろうなんてバカはいないでしょう。

・・・・・・さっきのはそのバカがいたから起こったんだけど。

だからあたしは、護衛ですから、の一言で、お坊ちゃまと導師が過ごしてる賓客室の扉の前で、水主と2人してずっと立ってる事に決めた。





だってあんまりお近づきになりたくなかったんだよね。雰囲気的に。お坊ちゃんと導師には。

あたしに対してなぁんか、含みがあるし・・・・・・コレはいよいよ、あの子『アッシュ』が被験者、て。知ってるのかも、て思う。

アリエッタとシンクは何気にあたしの事嫌ってるぽいし。

被験者イオンと繋がってるのがホントなら、現導師イオン・・・・・・アイビィも、あたしに何か思うトコロがあるのかもしれないし。





お坊ちゃんと導師は「えー。」て顔したけど。実際ぶーたれたけど。

中にはアリエッタとシンクがいる。アニスもリグレット相手に健闘したんだ。腕は確か。ティアは、強くは無いけど軍人としてきっちしてたし。

身辺警護なんて、そんだけいりゃじゅーぶんでしょ。





そんな事を考えながら。

たまに通りすがるマクルトの兵士さんにお疲れ様ですて言われたり。飲みモノでもお持ちしましょうか?てのを丁重に断ったり。

・・・・・・・・・・・・くそぅ。ヒマだ。こんなんならゴーインにでもダアトに帰っときゃ良かった。

なんて、機嫌が徐々に徐々に落ち掛けていた頃。よーやっと、セントビナーに着いた。





着いたら着いたで、キムラスカから某お坊ちゃんを迎えに来てた某金髪の使用人にすんごい目で睨まれましたけどねっっ!!

しかもいたのは使用人さんだけじゃない。

マクルトの首都、グランコクマから、ななななんとっ、銀髪童顔のあの少将が!!来ていたのだっっ!!





どーやらお坊ちゃんがタルタロスの中で、アニスから借りた鳩を使ってマクルトへ抗議文を送ってたらしいです。

いわく、事故で疑似超振動に巻き込まれてマクルト領に吹っ飛ばされたってのに、聞く耳持たずで不法入国の罪人扱いってどーなのコレ。

しかも、コッチが王族だって解ってんのにバカにして見下してオタクの軍人ってみんなこーなの。

つかぶっちゃけこんなんに使者やらせてホントに和平なんて望んでんの。

今はまだ誰にも言ってないけど、この事オヤジや伯父さんが知ったら即開戦間違いナシだぞ絶対、みたいな。





ソレを読んだ某王国の皇帝は、慌てて使者をとっかえるべく彼をココまで向かわせたんだそーな。

そんな事を言いつつジェイドを絶対零度の眼差しで睥睨する彼――――――アスラン・フリングス少将は、とてつもなく怖かった。

なんか原作でほややん、としたイメージしかなかったから余計に怖かった。うん。





眼鏡に、今すぐ国帰れだの謹慎だの軍法会議ののち云々かんぬんと。

つめたーい声で言ってる彼を出来るだけ視界に入れない様にしながら。あたしは、やっとこの仕事は終わりか、と息を吐く。

だってお坊ちゃんの護衛増えたじゃん。カイツールには捜査団までいてお坊ちゃんが辿り着くの待ってるって言うじゃん。

ああ、やっと帰れる!!寝れる!!





・・・・・・・・・・・・なのに。





「大変申し訳ございません、イオン様、ルーク様」

「仕方ありませんよ。壊れてしまったのでは」

「アンタの所為じゃねーって」





後ろから、ホントに心底申し訳なさげなアスランさんと、苦笑する導師とお坊ちゃんの声がする。

ちなみに、ティアと使用人・・・・・・ガイはお坊ちゃんの左右を固める様に。アリエッタとアニスは導師の左右を固める様に。

その後ろにシンク。前にアスランさん。彼等全員を守る様に、数人のマクルト兵。

そんな隊列の、あたしは最前に、水主は最後尾にいます。





・・・・・・・・・・・・なんであたしココにいるんだろー・・・・・・・・・・・・いえ例の如く断り切れなかったからなのですが。





ローテルロー橋が原作通り爆破されてるなんて知らなかった。

壊された以上、セントビナーからカイツールに行くには、やっぱり原作通りフーブラス川を経由しなければならなかった。

そして、いくらなんでもタルタロスに乗ってた全員で軍艦ほっぽって川を渡るワケにはいかなかった。





で。急遽編成されたマクルトの精鋭10人+アスランさんと。

お坊ちゃんとガイ+ティア+シンクの王族護衛4人組と。

導師とその守護役の3人組。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・の中に、組み込まれてしまいました。くすん。

アスランさん少将なんだしマクルト兵さん達精鋭なんだし六神将2人いるんだし、って言っても聞いてくれませんでした。しくしく。





あたしもう限界が近いのに。帰って寝たいのに。





「前方に魔物はっけ――――――」

「イラプション」

「「「・・・・・・・・・・・・」」」





気付いた兵士さんに皆まで言わさず。がさがさ、と出てきかけた魔物の足を見ただけで、あたしは詠唱破棄した譜術をぶっ放した。

詠唱を破棄しても、威力はスゴイ。おかげで魔物は姿を見せる前に全滅。

「・・・・・・そ、速攻ですね・・・・・・」

「・・・・・・容赦ねーなー、お前」

固まった兵士さん達の心の声を代弁する様に、引き攣った笑みを浮かべるアスランさんと恐る恐るなお坊ちゃんですが。





「貴方方をカイツールまで無事お送りするのが私の任務です。其れを邪魔する輩に、容赦など不要でしょう」





あたしは早く帰って寝たいんだ。だから即効こんな任務終わらしたいんだ。

――――――なーんて、心の声は億尾にも出さず。

冷血漢て噂は満更嘘でもないんだな、て呟いたお坊ちゃまの声を華麗にスルーしてやった。






























眼鏡大佐にはご退場して頂きました。

彼は根っからの研究者、だと思う。興味の無い事にはトコトン興味無い。

戦場で研究の為に死体漁って死霊使い、て悪名付くくらいだから。マクルト軍の中でも怖がられてたんじゃないかな、とも思う。

しかも皇帝陛下の幼馴染、て事で増長したんだと思う。でなきゃ王族にあんな態度取らないでせう。






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