殲滅はおいとくとして。導師イオンにはちゃんと確認しとこう、て事でタルタロスに行く事にはなった。

・・・・・・・・・・・・てゆーか、何であの豚樽タルタロスの居場所知ってんだ。

てゆー疑問はアッサリ解決。

導師守護役のアニスちゃんがトリトハイム詠師だけに定期的に入れてた導師の近状報告の鳩、横から豚樽がふんだくったんだそーな。

・・・・・・てか、ソコまでキッチリやってんのにまだ誘拐だ何だと喚くかあの豚樽。

あんなのが大詠師、組織のナンバー2だなんて・・・・・・解っちゃいたけど相当苦労してんね導師以下他の詠師サマ方。





溜息吐きつつ、アリエッタの呼んだフレスベルクにぶら下がって上空からタルタロスの様子見。

取り敢えず最優先事項は導師の確認。そして意図。コレがホントに誘拐なのかそうでないのか。つか絶対違うけど。

でも導師に言さえ取れれば後はイイ。言さえ取れれば、六神将全員証人だ、って豚樽を抑える事が出来る。





先に乗り込んだ同僚達は大丈夫だろうか。ちゃんと名乗りと目的を挙げて穏やかに交渉出来てるかな。

ラルゴにはシンクが、リグレットにはアリエッタがくっついてったからまあ大丈夫だとは・・・・・・ってをいをいっっ!?





イキナリずぅうん、とかいって停止したタルタロスにあたしは大慌てで高度を下げる。

近付くたび、聞こえてくるのは剣劇と怒号・・・・・・なにゆえ戦闘!?何やったんだアイツ等っっ!?

ちょ、まさかラルゴとリグレット、あんだけ言ったのにまさかの実力行使!?シンクとアリエッタはどーしちゃったの!?





あたしはフレスベルクを旋回させて、タタン、とタルタロスの上に降り立った。

は、早く止めなきゃ下降りなきゃ!!

ばったばた慌てて更に下の甲板らしきトコロに飛び降りようとする。





――――――なのに。あり得ないモノを見て、あたしは固まった。

長い髪。信託の盾騎士団の団服。細い、後ろ姿。イヤ、ソレはイイ。いや良くないけど後回しにする。

問題は、その、隣の。風に揺れる、もう1人の長髪。





――――――なんで、いるんだ。こんなトコに。





だって水主が言ってたじゃないか。あたしだってちゃんと調べたじゃないか。

キムラスカ・ランバルディア王国の第3王位継承者。過去何者かにより誘拐されて赤子同然の記憶喪失となってしまった、悲劇の王族。

だけどソレを盾に腐るワケでもなく。齢14にして自身の私兵を持ち。打ち立てた政策は片手で足りぬ。

誘拐の一件から、屋敷に監禁同然で表舞台には出ないけど。ソレでも。次期国王として将来を期待されてる、て。

そんな、原作とは全く違う彼だからこそ。襲撃犯と疑似超振動なんて起こす様なヘマはしないと踏んでいた。踏んでいた、のに。





ぐるぐる回ってた思考は、突如現実に引き戻された。

扉の前に立つ2人に。艦内に続くだろう通路から、剣を振り上げつつ突進してきた信託の盾の兵士を見て。

――――――何考えてんですかあの兵士そのいちっっ!?!?





線の細い女性が剣を受け止めようとロッドを構えもう1人を背後に庇う。

あたしは咄嗟に彼等の間に飛び降りて。あたしの剣と兵士そのいちの剣がガキィン!!と鳴った。

「っ、新手!?」

「ア、アッシュ師団長!?」

女性と兵士の声が被る。

あたしは、下段から兵士の剣を弾き飛ばし、ひた、と彼を見据えた。





「――――――何を、しているんですか」





低く押さえてはないけど高く激昂するでもなく。感情が乗らない様に淡々と。

言われた兵士は、ひいっ、と尻もちを着いたまま後ずさった。

「ラッ、ラルゴ師団長にっ、乗組員は全員抹殺しろとっ」

「――――――そのラルゴ謡士に、私は導師イオンからの確認が取れるまで、一切の戦闘を行わない様にと言ったんですがね」

・・・・・・・・・・・・ちっ。やっぱり暴走してやがったのかあの人。次に顔合わせたら絶対シメる。





はう、とでっかく溜息吐いて。あたしは後ろを振り返る。ワケ解んない、と困惑してる彼女はやっぱりティアだった。

にしてもでっかい胸だな。さすがメロン。あたし女だった頃はBにとてつもなく近いCでしかなかったのに。うううう、羨ましい。

――――――・・・・・・・・・・・・で。そのまた後ろ。探る様にあたしを見るもう1人。

長い髪。少し垂れ気味の目。腹出しルック。その服の。





「・・・・・・飾り釦に刺繍・・・・・・キムラスカ、ファブレ家の紋章・・・・・・」





思わず呟いてしまったあたしに、探りの視線が更に強くなった。

剣を振り上げていた兵士は青褪めて、ティアがばばっと彼を背後に隠してロッドを構える。

「ロッドを下げて頂けますか。私は貴女の敵ではありません――――――現時点では」

そんな彼女に、なぁんかこの子も原作とちと違うな、と感じつつ。あたしは抜いていた剣を鞘に戻しながら小さく小さく苦笑した。

最後の一言に、まだまだ警戒は解かない彼女だけど。その彼女の肩を叩いて制したのは、後ろにいたもう1人。





「ティア、良い。下げろ」

「・・・・・・ルーク様・・・・・・はい、了解しました」





うん決定。ティア違う。絶対違う。原作の面影これっぽっちもない。どんなミラクル。どれだけイレギュラー。

「・・・・・・申し訳ありません。部下への伝令がきちんと行き渡っていなかった様で、お二方には大変ご迷惑をお掛け致しました」

溜息吐きそうになりながら、あたしは膝を着いて、頭を垂れる・・・・・・て、どんだけ驚くんだおたくら。

「私達は今、マルクトに誘拐されたと思しき導師救出の任に当たっております・・・・・・僭越ながら、ルーク様は何故この様な所においでなのか、

お伺いしても宜しいですか」

重ねて言ったら、つむじの辺りに刺さってた視線が更にグサグサ突き刺さった・・・・・・だから何故。





「――――――良く解ったな。俺がルーク・フォン・ファブレだと」

「ファブレ家の紋章が刻まれた飾り釦。そしてキムラスカで成人していない王族男児は今現在唯お一人。解らない筈がありません」

「・・・・・・・・・・・・解らねぇヤツもいたんだがな」





どんなバカだそいつは。

げんなり、とした声で呟いた彼に、あたしは胸の中でこっそりそんな事を思った。






























ココのレプリカさんは頭がよい設定。でなきゃ裏でオリイオ匿ったりディスト丸め込んだりできないし。

監禁生活ですが、色々頑張ってソレナリの権限も私財も持ってる設定。でなきゃアニスの借金肩代わりなんて以下略。

おねにーさまも、ちょこっと調べて彼が頭イイって事くらいは解ってたから、こんなトコで会うワケないなんて高括ってました。






<<バック22                   ネクスト24>>
<<バック>>