イキナリやってきた仮面の緑っ子は。

お見舞い品の菓子折りをぺいっとあたしに投げると、ソレ以上はロクに話す事もお大事にの一言すらなく、さっさと帰って行った。

・・・・・・なんかホント、行けって言われたから来た、て感ありありだった。

お見舞いと銘打っときながらのその態度がちょっと哀しかった。くすん。・・・・・・てな傷心は隅っこにおいといて。





あたしは、はう、とでっかい溜息吐いて、水主に部屋の施錠をお願いする。

そしてオッケーが出たトコで、今度こそホントに仮面を外した。





「・・・・・・・・・・・・でさ、水主。あたし何時の間に『紅華』なんて変なあだ名付けられてんの。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・先刻の今で一番に聞くのがソレか」

「いやだって気になるじゃないか。なにゆえ『鮮血』でなく紅い華。」





じと〜、と水主を見上げてたら、観念したのか彼はこれ見よがしな溜息を吐いた。

「以前、お前の戦い方が美しいと賞した奴がいた。敵を鮮やかな血に染める様は、まるで紅い大輪の華を咲かせている様だと」

・・・・・・や。戦い方にキレイもキタナイも無いと思うんだども・・・・・・

「おまけにお前自身、その見事な紅い髪だろう?・・・・・・お前が響長の時には、既に定着していた」

・・・・・・・・・・・・そ、そんな前から?まぢですかい。





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あー。うん。解ったありがと。つか今思ったけど別にどーでもいーやあだ名なんて」

「良いのかおい」

「や、だって。もー定着しちゃってんでしょ?なら今更文句言ってもね。人の口に戸は立てられんし。」





だから忘れる事にする、てあっけらかんと言ったあたしに、水主はかっくり肩を落とした。いやいや。何故ソコで脱力?

「・・・・・・マスターがそういう性格なのは知っているんだがな。余りに己に対する周囲からの評価や言動に無頓着過ぎないか」

「・・・・・・そんな事ないよ。ただ、その辺は意識して見ない様にしてるだけだよ」

あたしこー見えて悪口とか言われちゃったりするとけっこーずるずる引き摺るタイプなんですから。





そんなあたしに、まだまだ何か言いたそうな顔をして。だけど水主は何も言わずに溜息を吐くだけに留まった。

・・・・・・なんか、タマにがあたしに見せてたあの含みと似たよーな感じがするのは気の所為だろうか。

「で、本題。何か解った?あたしが寝てる間」

でも突いたら藪から蛇が、て感じだったから、あっさり話題転換。そしたら水主も、にぃ、と口の端を吊り上げて。





「――――――ああ、色々と面白い事がな。まずひとつ。オリジナルイオンは死んでいない。とある人物の邸宅で身を潜めているそうだ」

・・・・・・・・・・・・え。まぢ?まぢであの子生きてるの!?

「2つ目。オリジナルイオンの死を偽造したのは死神ディスト。レプリカ救出の手引を行ったのもあいつだ」

ぅええ?ココでその人の名前を聞くなんて思ってもみなかったんだけど。

「3つ目。レプリカイオンの本当の名はアイビィというらしい。シンクとディスト、アリエッタやアニスもそう呼んでいたからな」

え。ちょ。待て待て。て事は?レプリカの導師とアニスは繋がってんの?アリエッタもオリジナル生きてるって解ってんの?

「そして4つ目。部下を使ってレプリカ達を救出し、オリジナルイオンを匿っている人物の名が――――――ルーク、と言うそうだ」

――――――・・・・・・・・・・・・はい?





「・・・・・・・・・・・・ちなみにソレは確かな筋からの情報デスカ?」

「ああ。水に紛れてあいつ等の密会を覘いたからな」





・・・・・・まーぢーでーすーかー。

イレギュラーはあたしだけだと思ってたのに。ゲームシナリオと随分違うじゃないかこんちくせう。

つか何でココで出てくるルークの名前。ナニしてんのあの子。何を何処まで知ってんの。





「・・・・・・・・・・・・いや。イイや。取り敢えず考えるのは後にする。まずなんか食べる。頭働かすのはソレからだ」

「はいはい。畏まりましたマスター」

あたしの言葉に、水主は簡易キッチンへと姿を消す。そしてあたしは、ガサガサと緑っ子の残してった菓子折りの包みを開け始めた。

だってお腹空いてるんだもん。水主が果物切ってくるまで待てないもん。





箱の蓋を開けると入ってたのはクッキーだった。一枚一枚丁寧にビニールに包まれて、けっこー高そうなシロモノだ。

がさがさとビニールを剥がして、パクリと一口。さくっとした食感がナイスです――――――・・・・・・・・・・・・ナイス、なのですが。





思わず、かじったクッキーを目の前に持って来てまぢまぢと見る。ひっくり返して、また戻して。まぢまぢ。

「何をしているんだ、マスター?」

声を掛けられて振り向くと、梨とキウイと葡萄をキレイに器に盛って持ってきた水主が、首を傾げてあたしを見てる。





「・・・・・・・・・・・・水主、あーん。」

あたしはホレ、と食べかけのクッキーを水主に差し出した。

首を傾げたままなうえ、眉も顰めた水主は、ソレでも差し出されたソレにパクリといく。

「・・・・・・・・・・・・おいしい?」

「ああ。普通に美味い。コレが如何かしたか?」

――――――・・・・・・・・・・・・うーわーあ。なんかすっごい、イヤンな予感。





あたしはそのまま手を出して、水主から器を受け取った。同時についっと差し出されたフォークを手にして、ぐさり、とキウイに刺す。

――――――どうか予感が外れてますよーにっっ!!

ぱくり。もぐもぐ。ごっくん。





「・・・・・・・・・・・・うーわっはー。あははは。当たって欲しくなかった事があたっちゃったよーう・・・・・・・・・・・・」

「行き成り何の話だ何の」

うんホント行き成りでごめん・・・・・・あーでもなー。コレ水主に言った方がイイんかなー・・・・・・隠してばれたら後が怖いから話とこう。うん。

「・・・・・・・・・・・・水主。味解んない。クッキーもキウイも。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?何だって?」

「多分味覚神経ヤられてる・・・・・・ちくせうコレやっぱあの蜘蛛もどきか。蜘蛛もどきの毒の所為か」





おにょれ許すまじあの蜘蛛もどき!!いやもう死んでるけど!!

「今度の休みに変化してケーキ屋さん巡りしようと思ってたのに!!数少ないあたしの娯楽をブチ壊しやがってっっ!!」

「問題点はソコか!?と言うか今までの休日に姿を消してた理由はソレか!?!?」





怒りで思わずヒ・ミ・ツ♪にしてた事まで暴露しちゃって、水主に突っ込まれちゃいました。てへ。






























燃え滓inおねにーさまが某音素集合体の所為なら、絶対レプリカさんの方にだって何かやらかしてるハズなんです。

んでココでのレプリカさんは某音素集合体と意識が深層部分で繋がってて、某音素集合体の記憶を夢で見たりしてるぞ設定。

だから燃え滓さんがオリジナルなのも自分がレプリカなのも解ってる。ついでに飛び飛びだけど、この先何が起こるかも大体知ってる。

で。色々モーションかけた結果、オリイオ匿いーのディスト丸め込め―のアニスの親の借金肩代わりしーのなんです。

ちなみにウチの緑っ子はみんな仲良し。先輩後輩の仲でアリエッタとアニスも仲良し。ディストはそんなお子様組のパパン化してます。






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