レプリカ達を助けたのが誰なのか、結局解らなかった。

水主が尾行したけど、最後まで追えなかったからだ。

あたしから離れられる限界、というネックの所為で。





導師守護役だったアリエッタは、役を降ろされた。

代わりというか何というか、黒い肌に黒いツインテールの、女の子・・・・・・アニスが、導師守護役になった。





コレで決定。オリジナルイオンは、『エリキシル』を飲まなかった。

――――――飲まずに、死んだ。





・・・・・・・・・・・・あの子が、ねぇ・・・・・・・・・・・・

やるせない様な思いと共に、溜息を吐き出す。





一目で解ってしまうほど、預言を憎んでいた子だった。ソレは逆に言えば、生きる事をソレだけ渇望してたからだ。

そして恐らく、その預言を妄信していたヤツ等から、毒を盛られていた。

・・・・・・その事も、もしかしたらあの子はあたしが指摘するまでもなく勘付いてたのかも知れない。だから世界も諦めた。





どうしてあの子は、自分の死を受け入れてしまったんだろう。

あたしはちゃんと提示した。アレを飲めば助かると。





・・・・・・プライド?てんてーの子飼いなんかから、施しは受けないって?

・・・・・・・・・・・・うわぁ。あ、ありうる。

だっててんてーは導師に死んで欲しかったハズだ。操り人形にするには、あの子はシッカリしすぎてるから。

だから、あたしの言葉なんかあの子は信じなかったんだろう。ついでにマユツバ過ぎて試す気にもなれなかった、て感じ。





ソレとも、現実問題?

そんなもの、ダアトの最高位なんだからどうにでも出来るだろうけど、なんせ毒はきっちり盛られていた。

何より預言はひとつの可能性だとあの子は説いた。

もし今回死ななかったら、預言は絶対と言い切るアホウ共、特にあの樽とかがどんな過激な手を使ってくるか。

・・・・・・例え預言を覆して生きてても、その先ずっと死の恐怖が付きまとうっていうんなら。

あの子が、コレ以上の生を諦めるのは、当然かも知れない。





改めて、なんてアホらしい世界なんだろうココは、と思う。





あたしはユリア・ジュエじゃないから、彼女がどんな思いで預言を残したかなんて解らない。

てんてーがゲームの中で言っていた、来るべき滅亡を回避する為に彼女は預言を詠んだという、ソレが正しいとしても。

今の時代、ソレを本当に理解している人間は皆無。ダアトやユリアシティすら、預言が詠むのは繁栄と信じて疑わない。

その上、王族貴族どころか民衆すらが預言の通りにすれば安泰だと、みんな考える事を止めてしまってる。





やり直しなどきかない。だからこそ選択は律だ。

ソレを放棄して預言なんぞに縋る。確かに楽だろう。けどソレで良いのか?

ソレで本当に、生きていると胸を張って言えるのか?

・・・・・・だからと言って、てんてーの過激な計画には乗れんけども。





ぐるぐると回ってた思考を一旦切り上げて、あたしは目の前の人物に意識を向ける。

・・・・・・うん。なんか数週間ぶりに見たけど、この人なんでこー、いつもヒゲも眉毛ももっさりなんだろう。

手入れくらいしたらイイのに。





「どうした、アッシュ?」

「・・・・・・いえ、ご用件は何ですか、総長閣下」

「そんなに畏まらなくとも良い。お前と私の仲だろう?」





どんな仲ですかどんな。





「軍の中に置いて上下関係を遵守するのは良い事だが、私はお前の養い親でもあるのだから」

思わず眉を顰めたあたしの気配が伝わったんだろう。

笑ってあたしの肩を軽く叩いてくるてんてーに、だからこそだ、と返したい。





「私情を挟む行為は他の者達へ示しが付きません」

つか実際返しました。

てゆーかもうコレ以上義理の親子義理の親子って言い回らないで。その所為で未だにあたしへのやっかみ多いんだから。





てんてーはそんなあたしに苦笑を洩らして、真面目過ぎるのも程々にな、と短く返し。

――――――次の瞬間には、騎士団を束ねる、主席総長の顔をした。





・・・・・・・・・・・・あ。なんかヤな予感。





「実は、お前に昇進の話があってな」

え。まじ?ってちょっと待ってゲームで『アッシュ』が響士になったのって何時だったっけ?

「来月付けで、お前は響手から響士へと昇進する」

ええええ?本気と書いてまぢと読む?佐官?あたしが?この年で?早くない?

「ソレに伴い、お前には一個師団を任せる事になった」

ああうん。ソレは知ってる。ゲームでも『アッシュ』は団長だった・・・・・・どーせてんてーの付けた監視役なんだろうけどね。

「特務師団。団員数は50と小規模だが、お前なら大丈夫だろうというのが、上層部で満場一致の意見だ」

待て待て待て。何だその上層部が満場一致って。実力買われた?いや実際色々やらかしたけど。こんな青二才に?





「――――――・・・・・・・・・・・・まぢですか?」





思わず素で聞き返してしまったあたしに、てんてーは白い歯をキラリとさせて笑いながら「大まぢだ」と言った。

・・・・・・・・・・・・こんなトコでユーモアなんていらんですよ、てんてー。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 























おねにーさま、なんと昇進&部下を手に入れる事になりました。

14歳で佐官位。ありえぬぇーとかかっぱも思いますが、まあネタなんで。

オリジナルイオンに関しては、おねにーさまけっこーぐるぐる考えてます。

自分がもーちょっと押してれば死なせる事はなかったんじゃないかな、と。









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