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年が、また変わった。 あたしは、『アッシュ』の身体で14歳の誕生日を迎えた。 ・・・・・・早いもんで、もう4年。しかもこの世界の1年は今までの世界の2年分。 1日は短いけど、1年は長い長い。ふつー逆じゃない? そんな今年は、導師イオンの死が詠まれた年。 アレから一度も会わなかったけど、あの子は『エリキシル』を飲んだんだろうか。 そんな事をたまに思い出しながら、相も変わらず任務や訓練やてんてーの相手をして時間を消費してたある日。 水主から、大詠師モースの動きがオカシイ、て連絡があった。 なんか、ちょくちょく研究者らしき人物と密会してるらしい。 あたしの方でも、動きはあった。 てんてーがその大詠師モースと会う場面をこっそり見たのだ。 調べれば、自分の研究室から全くって言ってイイほど出てこないハズのディストも、最近外出が増えてる。 さて。それらから導き出される答えは? ――――――そりゃあ、考えるまでもなく。 「レプリカ作成・・・・・・しかも7人目までもう出来てんのか」 「ああ、マスターの記憶通りだ・・・・・・導師は、アレを飲まなかった様だな」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・みたいだね」 慌てて人目を誤魔化して。 こっそりお邪魔したのは、謡手になった事で1人部屋を獲得した水主の部屋。 「・・・・・・しかもコレから、失敗作を処分する、らしい」 「・・・・・・・・・・・・へぇ。失敗作を、処分、ですか」 知識では知っている。ゲームのシナリオなら。忘れる事無く覚えている。 7人目のレプリカイオンと、予備のフローリアン以外は、5人とも火山の火口に突き落とされた。 シンクだけが自力で這い上がってきて、生まれた事を憎みながら、世界を壊すというてんてーの傘下に入った。 ソレが、もう。目と鼻の先まで。 「――――――水主」 ふざけんな、と舌打ちそうになった言葉を呑み込んで。代わりに静かに、腕を組んで壁に背を預ける水主を呼んだ。 「解っている。今から向かっても充分に間に合う」 あたしを見据える水主もまた。怒りを目に宿しながら、静かに静かに、言葉を返して。 ふざけんな。何が失敗作だ。何が処分だ。女の腹を介そうが機械を介そうが、生まれたからにはソレは命だ。ひとつの命だ。 生まれた命の在り方を、価値を。決め付けられる程、研究者とやらは偉いのか。 生きる為に他の命を糧にするのとは全く違う。命が命を決める、など――――――神にでもなったつもりか。 「じゃあ、行くとしますか」 「大丈夫か?俺1人でもやれるが」 「丁度イイ具合に今日のあたしのスケジュールは訓練だけだ。誤魔化す」 音を立てずに椅子から立ち、外していた仮面を卓上から掬い上げて、懐にしまいながらひらひらと手を振った。 ソレを見た水主が、クロゼットから外套を取り出してくる。 あたしは差し出されたソレを、首を振って要らないと言って。 「・・・・・・・・・・・・マスター?」 「今日はコッチで行くから・・・・・・『三千世界の復元』――――――『変化の術』」 円を広げ、念を発動させて、お得意の忍術・・・・・・変化を、使う。 ぼふん、と一瞬視界が白に染まって、瞬き1回した後には、視線の高さが変わっていた。 「――――――ど?」 くるりと水主に振り返る。さらり、と動いた髪は紅ではなく銀。 目を瞠っていた水主は、次には嬉しそうに懐かしそうに目を細め。 「・・・・・・・・・・・・ああ。何処も。変わり無く」 その返事にあたしは笑って、今度こそ行くか、と部屋を出た。 迷子癖のあるあたしが先陣切ってどーすんだ、なんて水主に窘められながら、ずんずんと目的地へ向かう。 ――――――そして、辿り着いた先には。 「・・・・・・・・・・・・誰、アレ」 「・・・・・・・・・・・・いや、知らない」 こっそり。こそこそ。物影に隠れながら、水主と2人して様子を見る。 ソコには、5人の少年達・・・・・・多分イオンのレプリカ達だ・・・・・・と。 その子達を抱えている2人の、傭兵? ソレから、子供達の代わりみたいに、もう1人の傭兵?に火口に突き落とされる、研究者達。 あたしは水主と顔を見合せて、はて?と首を傾げたのだった。 |
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肉食獣は草食動物を喰らい、草食動物は草を食べ、草は大地から養分を吸い取り、大地は動物の屍を肥しとする。 そんな自然界の食物連鎖。おねにーさまは、生きる為に他の命を食うのは当たり前だと思ってます。 襲ってくる魔物や野盗を返り討ちにするのも、自分が死にたくないから、と割り切ります。 だけど、ソレを捻じ曲げた命のやり取りは基本キライです。人の慾とかが絡んだヤツなんか特に。 |
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