引きこもりをしてる間。 時は金なり、という諺もある事だし・・・・・・なんて思いながらあたしは色々試しに試した。 魔術はやっぱり使えないままだった。 使うには、今まで触れた事もないこの世界特有の音素とゆーモノへの理解が、まだまだ浅い。 音素から魔素、エーテルを分離させる方法も解らない。 同じ理由で、魔力を糧に発動する召喚術もダメだった。 だけど精孔を開いたお陰で、ほんの少しだけだけどアーグを解放する事が出来る様になってた。 『あたし』の中から、埋もれてた『舞扇』を引き摺り出す事に、成功したのさ。 しかも、何故かあたしが生前(?)重宝してた4次元ポーチ付きで。 もーその時の嬉しさっていったらなかったね。 人目のないのをイイ事に、思わず小躍りしちゃいましたよ。 だけどあたしは今『アッシュ』で、てんてーにアルバート流剣術を習ってるし、ココではソレ以外の武器を持った事がない。 中身があたしだって事は誰にも話してないし、誰も別人だって気付いてないから、そんなあたしが規格外な鉄扇を持ってたら怪しい。 なもんで、『舞扇』は最終兵器と相成りました。 ・・・・・・『舞扇』が出せたんだから、も出せるだろうと思って頑張ったけどね。 何故かソレは無理だった。多分を引っ張り出せるほどアーグが解放出来てないんだろうけど。 ああ、やっぱこの鎖、すっごい邪魔だ。 そうそう。小躍りした事といえば、もういっこ。 ・・・・・・・・・・・・いえ小躍り出来るほど素直には喜べませんでしたが だってだって!!目ぇ合った時の開口一発目がっ!! 「コレは一体どういう事だ、マスター?」 だったんだよっ。すっごい笑顔だったけど目が笑ってなかったんだよ!! 半ば諦めつつ板張りの床にチョークで描いた魔方陣と呟いた呪文で、まさか出現するなんて思ってもみなかった守護精霊は。 あたしと目が合ったとたん、ガミガミとお説教を開始した。 「――――――で。この先どうするつもりなんだ」 半泣きになりながらじっとお説教に耐えてたあたしに、取り敢えず言いたい事は全部言ったのか。 守護精霊――――――水主が溜息混じりに今後について話を変えて来たのは、既に朝に近い時間帯で。 「取り敢えず、何でこーなったのかとちゃんと戻れるのか、が解らないからねぇ」 「元凶に訊ねる事は?居場所は解っているんだろう?」 「日帰りで行って帰ってするにはヒゲの監視が邪魔」 そう。あたしが部屋に引きこもり出してから、部屋の前には常に誰かが立ってる。 てんてー曰く、ここぞとばかりに『アッシュ』の事を良く思ってない輩が、何かしてくるかもしれないからって。 もしくは、自殺するかもしれない、とか思ってるのか――――――誰がするかそんなもん。 「だから水主行って聞いて来てよあたしの代わりに」 「ソレは無理だ。今の俺は長時間マスターから遠く離れる事が出来ないからな」 「え。何で?」 「この世界はエーテルがおかしい。マスターのアーグを頼るにしても、その程度しか解放出来ないのではな」 あっさり却下されました・・・・・・イイ案だと思ったのに。くすん。 「・・・・・・あー。そんじゃもーちょっと解放できる様に頑張ってみるよ」 「いや、その呪縛でソレ以上は無理だ」 「げ。まぢ?」 「ああ。ソレ以上無理に解放しようとすると器が壊れる。ちなみに契の門は、俺1人がコッチに出るのもギリギリだった」 再び速攻で却下ですよ。 ソレってなに。コレ以上のあたし本来の力は打ち止めってコト? ・・・・・・・・・・・・ほんっと、音素ってのがこんなに扱い辛いものだったとわっっ。 「・・・・・・自由に動けないってのはキツイね」 「・・・・・・だな。じゃあ俺は取り敢えず、マスターの代わりにある程度自由に動ける様にしておけば良いか?」 「ん。出来ればあたしの傍にいても怪しまれない様に、騎士団入隊も・・・・・・いける?」 「其れがお前の命ならば」 お願いしたあたしに、水主はあたしの手を取って、その甲に恭しく口付ける。 ・・・・・・・・・・・・うん。色んな意味でちゅどんってしそうだ。 だってまさかそんな事されるとは思ってもみなかったし、何より。 「・・・・・・あのさ水主。」 「ん?」 「ずっと聞こうと思ってたんだけど。何で水主その姿?」 ソレってこの世界と同シリーズの伝説とかいうヤツに出てくる黒い蝶々の翅出す親衛隊隊長の姿っしょ。 そんなあたしに、水主は実にあっけらかんとのたまう。 「ああ、マスターの中の水のイメージがこの姿でな。一番形取り易かったんだが。何か問題でも?」 ・・・・・・なんて偏ってんだあたしの知識。 |
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おねにーさまに仲間(?)ができました。 彼は元・水の高位精霊。 昔のおねにーさまに一目惚れして自分の世界も在り方も全部捨ててついてきたんです。 外見がアレなのはかっぱの趣味。ぢつは白金の鱗に氷色の眼をしたサーペントがホントの姿だったり。 |
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