最近、あたしは1人でいる事が増えた。 闇討ちまがいな事をしてくる兵士もまっ正面から複数で絡んでくる兵士さん達も最近はめっきり減った。 まあ、ことごとく返り討ちにしてやってたからね。 彼等も学習したんでせう。あたしに手を出しても痛い目見るだけだ、って。 だから、お付きの人はもう要らないだろうって、てんてーも判断して。 カンタビレさんも、同意した。 だから今のあたしはおおむね自由だ。 一日中護衛が張り付いてた時より、全然自由だ。 ダアトをこっそり抜け出して、そこら辺で魔物相手に剣の訓練をしたり。 そこら辺で、念の修行で発を発動させたり。 そしてメキメキと力が付いていく。 ある程度隠してはいたけど、解る人には解ってしまうくらいの、強さを何時の間にかあたしは手に入れてて。 コレ程の使い手なら、と。見習い兵から正式に信託の盾騎士団員になるのに時間は掛からなかった。 そんなあたしの初任務は、魔物討伐。 下級兵の訓練も兼ねた、難易度の低いものだった。 ――――――ソコで、あたしはちょっとした怪我をした。 あたしはこっそり魔物相手にストレス発散してたし、魔物よりも化け物みたいな人を知ってるから、魔物への恐怖なんてないワケで。 怪我なんかしても、あたし自身の元々の性質で痛覚なんて感じないから、ソレに対する恐怖もないワケで。 ぶっちゃけ、ちょろ甘ですね、なんてどこぞのメガネみたいな事を思ってたのはあたしだけだったのさ。 そう。くどい様だけど、この任務は、訓練、を兼ねていた。 実践はお初だ、って兵士さん達がごろごろいた。 そーゆー人等は、ちょっと突発的な事が起きると直ぐにパニックになる。 突発的な事とは、討伐対象の魔物を相手にしている時に、他の魔物の群れが襲ってきた事。 陣形が崩れるのは直ぐだった。 で、司令塔の上官が兵士さん達の足並みを揃えるのには、だいぶ掛かった。 そんな中、あたしは魔物に襲い掛かられて腰を抜かした新米さんを庇って。 ・・・・・・ざっくりと。ソレはもう見事なくらい顔の上半分を魔物の4本爪で引き裂かれたのだ。 どーにかこーにか現状は立て直って。 あたしは「総長の養い子が負傷!?」と顔を青褪めさせた上官の命令で、速攻で後方部隊の治療班に担ぎ込まれた。 あたしが庇った新米さんは、ずっとあたしの傍でごめんなさいを繰り返してた。 で。 譜術で傷を塞いでもらったものの、傷痕は残るでしょう、と言ったのは後に診察してくれたお医者様。 視神経が傷付いて、失明程ではないけれど、視力は落ちるでしょう、とも付け加えられた。 ソレを聞いて、てんてーは表面上すっごく心配した。 カンタビレさんも、純粋にすっごく心配してくれた。 上官さんは自分に処罰が降りないか心配して、新米さんは号泣しながらあたしに謝り続けた。 包帯が取れたあたしの顔には、右のこめかみあたりから左頬まで伸びる様に、4本の傷があった。 深い翡色だった目の虹彩からは、艶が消えて白濁した色になった。 ソレを見るたびに、てんてーやカンタビレさんは眉をしかめ、新米さんはぼろぼろ泣く。 ――――――らっきー、と思ったのはあたしの心の中だけの話。 だってこの身体『アッシュ』よ?キムラスカの王族が紅い髪に翡の瞳ってゆーのは、公然よ? 何でその色を持った子供がこんなトコにフツーにいる事に誰も疑問に思わないんだ。 やっぱアレか?預言は絶対だからってそんな些細な事も考え付かないのかこの世界の人達は? 取り敢えず、あたしは傷を隠す為にずっと包帯を取らなかった。 ずっと、部屋から出なかった。 身の回りの世話をする、って押しかけてきた新米さんを叩き出し、見舞いにきたてんてーとすら顔を合せなかった。 不憫に思ってくれたカンタビレさんが、傷を隠せる仮面を作ってくれた。 髪の深紅と同色の、縁に黒と金粉をあしらった、顔の右下半分だけが露出する形だった。 ソレでも、ずーっと引きこもりを演じて。てんてーもカンタビレさんもあたしを部屋の外に出すのを諦めかけた頃。 あたしはこっそり、人目を盗んでダアトを抜け出した。 やってきた森の中で、アレやコレやと薬草を摘む。 小さなガラス工房で、手造りの小さなガラス瓶も購入して。 長く放置していた所為か、強い色しか良く見えないまま・・・・・・いわゆる、色盲にはなったけど。 ソレでも今までコツコツへそくってきた全財産を叩いて『実現する幻想』で作り上げた『エリキシル』という薬が。 あたしの視力を治して傷痕をきれいさっぱり消すには、充分な効力を持っていた。 |
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おねにーさま、仮面をゲットしました。 ぢつは前々から欲しいと思っていたのです。顔を隠す口実が。 髪を染めるのはメンドいしおねにーさま自身紅い髪を気に入っていたから染めたくもなかったのですが。 ちょっと常識あって考える頭ある人がいれば、『アッシュ』の外見はホント疑問だと思うのですよ。 |
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