強姦事件からこっち。





ヴァンてんてーは今まで以上にあたしを構う様になった。

お前は私が守ってやる。私だけはお前の味方だ。

そんな甘ったる過ぎて逆に気持ち悪いくらいの事を、会うたび聞かされる様になった。





第一発見者となったカンタビレさんも、何かとあたしに気を使う様になった。

任務柄、けっこー本部を開ける彼女だけど。

帰ってくるたびあたしに会いに来て、やれ飯はちゃんと食ってるかやれ何か不具合はないかと聞いてくる様になった。





お陰で一兵卒の間じゃ、てんてーのお稚児さんだとかカンタビレさんの若いツバメだとかって噂が駆け巡る始末。

しかも2人揃って、直々にあたしに剣の手解きをしてくれるもんだから。

影で何であんな餓鬼が、っていう誹謗中傷も上がりまくり。

・・・・・・だからあたしをボコろうとしてるヤツ等が絶えないんだ。





てんてーやカンタビレさんも、あんな事がもう起こらない様に、って常にあたしの傍に女性団員を付けてくれてるけど。

ソレでも、ちょっとした隙を狙われてあたしがサンドバッグ代わりになった事は、皆無でないワケで。





だからあたしは、今後の集団暴行に対応すべく、寝る間も惜しんで鍛えてる最中です。





が前に言っていた。

実力主義の世界で、誰にも屈さず侵されず我が道を行く為に。望む望まないは二の次で、力は絶対必要なモノだ、と。

その通りだと、今更その言葉が身に沁みる。





軍、というのは縦社会だ。上に下は逆らえない。

しかもダアトは実力主義。強い者が上に行く。





あたしはてんてーの養い子で。

運良く暴行現場を発見したのがカンタビレさんだったから、二次犯行されない様に護衛とか付けてもらってるけど。

何のコネもバックもない弱い人間は、強い人間に虐げられても文句すら言えない。

自分が弱いのが悪いんだから。

そんな理由が、普通にまかり通る、社会だ。





だからあたしはあたしを鍛える。

貞操観念は今や無きに等しいけども。

あんな事されて人としての尊厳ズタズタにされて、へらへら笑ってられるほどマゾじゃないんだ。





朝は早くから起きて基礎体力の向上を目指し。

毎日の剣の訓練は当たり前。

譜術に関する書物も手当たり次第に読んで頭に詰め込んで。

夜、1人部屋の中で精孔開こうとしたり魔術や召喚術が使えないかどーか試行錯誤。

まあ、無理や無茶だけじゃダメだからちゃんと食事も休息も取ってるけどね。





そんなこんなで、日々強くなる為にがむしゃらに突っ走ってたとある日。

お付きの女性団員さんともども、訓練場に引き摺り出された。





あたし達を取り囲んで訓練用の剣を構えるのは8人。

更に面白そうに遠巻きに見ている人達がちらほら。

・・・・・・ちくせう。

最近絡まれる事もなかったからって、気を抜いた途端コレですよ。





でもまあ、なってしまったのは仕方ない。

ピンチはチャンスに変えられるのさ。





あたしは、あたしを庇う様に立つ女性団員さんを制止して、彼女の前に出る。

「ちょ、アッシュ!?」

「大丈夫です」

驚く彼女に一言添えて。持ってた剣をチキリと構えた。





彼女の戦闘スタイルは体術だ。

カンタビレさんが信頼してるくらいだから弱くはないだろうけど、剣と相対するにはリーチ的に不利。

ヤツ等がボコりたいと思ってるのは、あたしだ。

バカバカしいとは思うけど、だからこそ彼女を巻き込むのは気が引ける。





「用があるのは私、でしょう」

訊ねたあたしにせせら笑うヤツ等。

そのイヤ〜な笑みも、次の瞬間には凍ったけどね。





子供は基本大人より力がない。当たり前だ。

だけど身体が軽くて小さい分、小回りが利いてスピードがある。

体力がない事も考えて、短期間の一撃必殺の急所狙いで決着を着ける方法も覚えた。





ついでに、日々の努力は確かに実ってて。

この世界の人間の身体が、本当に精孔を開いて念を使える様になる事は大きな収穫だったよ、うん。





んで、結果。





訓練場に転がるのは屍累々。いやまだ死んでないけど。

スピード重視の急所狙い。身体に関しては念で強度も底上げ。

あげくにゃ譜術もぶっ放す。

そんなあたしの今まで知らなかった見習い兵らしからぬ強さに、周囲の人達は度肝を抜いたのだった。




















とりあえず念能力は外せないな、と。

この先おねにーさまは噂も中傷も絡んできた人達も、武力で以て黙らせていきます。

軍の上級兵士達からは一目置かれ、下級兵士や見習い兵達からはその強さを尊敬される様になります。

中にはまだグチグチ言うヤツもおりますが。









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