拝啓。おふくろ、姉貴。ソレからついでにオヤジ。

アンタ等の事だから、間抜けな死に方した俺ん事をバカアホだと盛大にこきおろして大爆笑してちょっとだけ泣いて。

ソレから相も変わらず元気でやってくれてんだろーと思うけど。一応お約束としてまずは聞いとく。

元気ですか?





俺は・・・・・・俺、は。今。





「ノォォォォォオオオオオオッッッ!?!?」





今、元気いっぱいに叫んでます





つかありえねーだろおぃい!?

何で今俺落ちてんの!?ねぇ何で落ちてんの!?

いや確かに穴はまったけどさぁ!!つか誰だよあんな森ん中に穴掘りやがったヤツ!!

もーびゅんびゅん風切ってっよ顔痛ってーよG掛かってっよ涙出てきたよ!!

しかもどんどん近付いてくる真下のアレって街中だし!!って何で街中!?

何で壊れ掛けたビルとかビルとかあばら屋みてーな家とかビルとか!?

ウソだろ何で戦国乱世にビル!?





――――――なんてパニクってても事態が好転するワケでもなし!!





「っっ!!幽神、霧隠!!」

叫べばガクッと落ちた速度。

・・・・・・あ。でも遅かった





どべしゃあぁあっっ!!

『ΞΨζ!?』

「やーごめんごめん。まっさかこんなうっす暗いトコに人がいるなんて思ってもみなくってさー」

まあ笑って許せ青年!!





クッション代わりにしてしまった青年(?)の上からどけば、多分その青年(?)のツレなんだろう、2人の男が驚いた目で俺を見てた。

・・・・・・あー。やっぱ、空から人が降ってくんのって、驚く・・・・・・よなぁ?

しかも、何を勘違いしたんだかその男ドモは。





『ΛΦΘ!?!?』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?

『Πδ、Γσηγ!!』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えええ?





ちょ、待て。

まぢ待て。こら待て。待て待て待て待て

何ソレナニ語。わっかんねーんだけどちょっとソレナニ語!?

大切だから2回言ったよ!?ちゃんと覚えててねここテストに出るから!!(出ねぇよ)

つかさっきも思ったけどココドコ!?

廃墟みてーなビル群なんていくらあの常識外れた某スタイリッシュアクションゲームの世界でもねーハズだよな!?





『Ωψ、ΠφΦ!!』

「だから待てっつってんだろぉぉおおおっっ!?」

ナニゆえナイフ!?刀とか手裏剣とかなら解るけど何でナイフ!?

しかも何故ソレを俺に向ける!?





俺は咄嗟にその凶器を避けた。

ぷぎゃっ、てまだ地面に寝てた青年(?)を踏んじゃったのはご愛嬌さ!!

ソレ見てますます目付きの悪くなる男ドモ・・・・・・いやさっきのは俺の所為じゃねーじゃん!!寝てるソイツが悪いんじゃん!!

え?元はと言えば青年(?)の上に落ちた俺が悪い?・・・・・・いやん、ソレは言わないヤ・ク・ソ・ク、でショ?





男ドモの目は完全俺を敵として見てた。もう片方なんか、転がってた鉄パイプを拾って構える始末。

・・・・・・・・・・・・あー、俺ケンカ嫌いなんだよなー・・・・・・・・・・・・メンドいし何より加減出来ねぇから

こんなチンピラなんざ剣出すまでもなく瞬殺なんだが、ホントに殺しちゃいそうなんだもんなー





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うし。

逃げるか。

そーと決まれば善は急げ!!

こんなムサい男ドモとはサクッとオサラバだ!!





――――――そう、思った。

その、時。





『・・・・・・・・・・・・μ』





声を、拾った。

小さな、小さな声だった。

とても弱った、小さな。

子供、の。





俺は一瞬固まって。

ナイフと鉄パイプを構えてる男ドモの、更に後ろに、目をやる。

ソコに、いた。

男共の、影に隠れる様に。

脚開かれて。腕、縛られて。

服をビリッビリに破かれて身体中アザと傷だらけで震えながら怯えた目でコッチを見てる――――――





ぷ ち ん 。





「――――――止めだ」

『Ωψγζ!?』

「てめぇら、ココで死んでけ」





言い捨てて、右手を翻す。

その、一瞬後には。ぼとぼとっと。男共の首が地面に転がって。

漸く目が覚めたらしいヤツの頭すら、起き上がる前にぐしゃっと踏み潰し。





俺はそっと、子供に近付いた。

びくり、と震えるその身体の目の前に、ゆっくりとしゃがみ込んで。

「――――――坊主」

撫でた頭は、なんかかぴかぴしてた。どろっとしたモンが、乾いて固まった様な。

そのままするりと手を頬に持ってけば、がちがち歯まで慣らしてぎゅーっと目を瞑る。





――――――・・・・・・・・・・・・こんな、子供が。

こんな子供がたったこんだけでこんなに怯える、なんて。





俺は思わず舌打ちした。その音に、子供がまたびくっと震える。

「・・・・・・いやいやいや。ごめんお前に怒ってんじゃねーから」

ぽんぽん、と軽く頭叩いてやって、腕を縛ってた、多分元はこの子の服だった布を、解いて。





「―――――殺して正解だったな、んなドクサレ外道共」





吐き捨てた俺は、子供を抱き上げて歩き出した。

後ろの肉塊には、見向きもせずに。




















 





 













わんこは外道を殺す事に躊躇いはない。
 





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