「あるーひー。」 「わうわうー。」(ひんけつー。) 「もりのーなーかー。」 「わううーわうー。」(かんちょおー。) 「くまさーんにー。」 「わううーうーうー。」(にんにくー。) 「でーあーあったー。」 「わーうーおーんー。」(たんそくー。) ・・・・・・・・・・・・うんナニその歌。 ココ森違うから。街道だから。熊なんて出てこないから。 「はなさっくっもーりーのーみーちー。」 「わんわわわんわんわんっ。」(ちん●こでっかーいっ。) 「くまさーんーにーでーあーあったー。」 「わんわわん。」(たんそくー。) ・・・・・・・・・・・・うわーすごーい相の手ぴったりー。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・他人のフリしてイイかな俺様。 目の前を歩きながら歌う1人と1匹に、俺様ちょっと遠い目。 第一印象で、あんなに恐ろしい鬼だと思ってたのに。 一皮剥けばとんだおバ・・・・・・いやいや、アホの子、じゃない・・・・・・うううん、のーたり・・・・・・ああああ違う違う違うって。 えーと、えーと・・・・・・て、天然?うんそう・・・・・・天然? しかも家畜まで飼い主に似て・・・・・・いやいやいやいや。掘り下げちゃダメだ。 そのの旦那・・・・・・うん、なんか旦那って呼びたくないな・・・・・・ 、様・・・・・・?うん北条氏の養子だから敬わなきゃなんだけど・・・・・・なんだけど・・・・・・ ・・・・・・、ちゃん・・・・・・??・・・・・・あ。なんかキた。しっくりぴったりキた。 そーだよ同年代って思ってるからいけないんだ。10にも満たないお子様だって思ってればいーんだ何だそっかそーだようんうん。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ずいぶん大きなお子様だけどさー。 「あ。たんぽぽはっけーん。」 「わ、ふ?わうあうん?」(へ、ドコ?てか何でタンポポ?) 「、知らない?たんぽぽの根っこ、乾煎りしたらこーひーみたいになる。」 「わふ!?」(まぢ!?) 「葉っぱと茎、腫れ物に良く効くー。」 「くぅ〜ん。わんわんわう。」(ふへー。物知りだなぁって。) 「もっとほめたたえてよいよ。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やめてよ折角お子様だと思い込もうとしたトコに。 けど、へー。そっか。蒲公英なんてタダの雑草だとばかり思ってたんだけど。 「――――――って。ちょっとちょっとナニやってんのちゃん」 まさかその蒲公英掘るつもり?根っ子まで掘り起こすつもり? 道中あんだけ山菜とか薬草とか手当たり次第に摘んで毟ってやってきたのに、更に掘るつもり!? いやいやいやいや!!お願いだからコレ以上荷物増やさないで!! ちゃん既に麻袋ひとつ背負ってるでしょ!?もひとつ背負ってるでしょ!? 俺様なんかひとつ背負った上にもーひとつ抱えてるでしょ!? 「わ・う・ん!!わ・う・ん!!」(こ・お・ひー!!こ・お・ひー!!) 「甲斐着いたらさすけにもつくったげるー。」 「・・・・・・うんありがとちゃんでもねコレ以上はもー袋にも入らないしね」 「たんぽぽこーひー、もひさしぶりー。おいしーんだよー・・・・・・にがいけど。」 ・・・・・・・・・・・・あはー。聞いてないねー。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺様、なんでこんなん引き受けたんだろー。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はあ。 そもそも何で俺様がこのおバカ、じゃないお気楽飼い主とアホ犬、でもない狼を甲斐まで連れてかなきゃならないハメになったのは。 ひとえに、あのトンデモ怒号で部屋に突入してきた、ちゃんの養父に原因がある。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・てゆーか、あの人もあの人でありえないよねー。 まさか城の奥から離れにいる養子の泣き声を聞き分けて怒鳴りこんでくるなんて。 どんだけ親バカなの北条氏政。俺様ホント、すっごい撃沈したんだけど。 けど、そんなアリエナーイ、と思ったお人が、さ。 「――――――都合が良い、というか何というか」 なーんて、ちゃんから説明を聞いた後に俺様を見て苦笑を浮かべた時には。 吹き飛んだ警戒だって、速攻で戻ってきたよ。 「・・・・・・いや、コレこそ神の思し召し、か」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やー、こんな思し召し俺様いらない。 もうのし付けて懇切丁寧にご辞退申し上げたいくらいにいらない。 しかもこの国主。 苦笑のまま何を言い出すかと思ったら。 「、。さっき、越後と甲斐に出していた偵察が返ってきた」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・その甲斐の忍隊の長の目の前でする話じゃないでしょーが。 「猿飛佐助。確認の為に、お前にも聞いてもらうが」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん直球だね。 「甲斐の武田信玄が病に伏した――――――まあ、コレは前から報告に上がっていたが」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やっぱり漏れてんだ。 「病状が悪化したそうだな」 ――――――え? 「加えて、真田幸村も信玄公と同じらしき病に倒れたらしい」 ――――――・・・・・・・・・・・・ちょ、え? 「尚且つ、甲斐の領地の至る処で、木々が急速に枯れ始めているそうだ」 ぴくん、と。ちゃんの肩が跳ねた。 「越後では、山から流れていた川がどす黒い毒に染まったというぞ」 ふい、と。が前足の上に伏せてた顔を上げた。 「しかも。街では物の怪が夜な夜なうろついている、という噂が立っているらしい」 な、に。ソレ。 呆然、と目を見開く俺様に、北条氏はまた、苦笑する。 「――――――怪我人には、少々きつい話だったか」 ・・・・・・や。きつい、なんてモンじゃ、ないよ。ソレ。 大将の病が、悪化した、って。 旦那まで、倒れた、って。 木々が、急速に枯れ始めた、って。 川が、毒、って。 物の怪の噂、って。 ナニ、ソレ。 何ソレ何ソレ何ソレ何ソレ!? 「っ!!」 咄嗟に、布団を引き剥がす。 ずきん!!て傷が痛んだけど、そんなの気にしてられない。 帰らなきゃ。今すぐ。 帰らなきゃかえらなきゃ帰らなきゃ――――――!! 「わん!!」(とう!!) 「ぅぶっっ!?」 ばたっっ!! 〜〜〜〜っっ!! いったい!!すっごいいったい!!今すっごい響いたんですけど!?傷に響いたんですけど!? ちょっと何人の上に乗っかってくんの行き成り何すんの!? 「このっ、バカ犬!!降りな!!」 「わううーん。」(やだぽーん。) 「えらーい。」 「ぜんっぜん!!えらくないでしょ人様の上に乗り上げるなんて!!」 「でもさすけ動くだめ。けがにん。とめたやっぱりえらーい。」 「だからって何で止め方コレ!?アンタ飼い主だよね!?どんな躾してんの一体!?」 「かいぬしいうな。」 「わんわうん。」(しつけゆーな。) 「ウチのをその辺の犬と一緒にするな。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・親バカの次は犬バカ? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺様ホンット頭痛くなってきたよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「まあお笑いはこの辺にしといて」 「お笑い!?お笑い狙ってたの!?素じゃなかったの!?」 「あっはっはイイ突っ込みだな猿飛佐助サスガは甲斐一番の苦労人」 「えっちょっ待って俺様苦労人!?苦労人確定!?てゆーか何で!?」 「ウチの忍は優秀だからなー。その辺の情報は色々、もう本当にイロイロ入ってきてるぞ」 「え。さすけくろーにん?オカンちがうの?」 「あうんわうわうん。」(イヤ苦労人もオカンもあんま変わんねーだろ。) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺様、もー突っ込む気力も失せたよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ がっくり肩を落とした俺様に、影護衛として姿消したさっきの忍の子の気配が同情を向けてくる。 さっきは俺様があの子かわいそー、とか思ってたのに。 ・・・・・・・・・・・・どーして甲斐でもないのにこんな苦労・・・・・・・・・・・・ 「つか話進まんからそろそろホントに軌道修正させてもらうぞ――――――猿飛佐助」 ・・・・・・・・・・・・誰の所為だよ誰の・・・・・・・・・・・・ 「ココに俺がしたためた書状がある。コレを甲斐の虎、武田信玄公に届けようと思うんだが」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんっかすんごいイヤな予感がするんですけど俺様。 すっごい受け取りたくない。 目の前にお気楽にピッて出された書状なんて、すっごい受け取りたくないんだけど。 「安心しろ。そう変な事は書いてねぇから。タダ同盟結びませんか?って書いてるだけだから」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい? 「で。俺の息子が同盟の使者として甲斐に行く。お供は。お前にはコイツ等の道案内を頼みたい」 「あにさまあにさま。が使者、かくてー?」 「ああ。色々考えたらお前達が一番適任、だろ?」 「んー?ん。たぶん。」 ええええ!?ちょっと待って!?待って待ってホントちょっと待って!? 今ココで相模が甲斐と同盟組む事の得ってナニさ!? まあそんなの俺様忍だからカンケーないけどね!!てゆーか!! 「同盟の話は100歩譲って受けてもいーけどその使者がコレ!?」 適任ってドコが!?こんなおバカに任せたら纏まるモノも纏まんないってソレって既に同盟投げてない!? しかもお供がコレまたバカ犬って!! 思わず指差しちゃっても仕方ないよね!!ねぇないよね!! 「――――――あのな、さるとびさすけ。」 思わず、ずびしぃ!!と向けた人差し指を、ぎゅっと握っておバカが小さく溜息吐いた。 「あまり、軽く見るな。」 そう言って、ひたり、と見据えた双眸は。 「当代風魔小太郎を。北条を。あまりなめるなよ。」 ――――――ああ。そうだ。そうだった。 一番最初に見た時、俺様はちゃんと確信したじゃないか。 コレは『鬼』だと。 酷く美しく恐ろしい、『鬼』だと。 顔から血がさぁっと引いてく感じがして、俺様はだらだらと冷や汗をかく。 そんな俺様に、この『鬼』は。 「とりあえず。さすけはまず傷治す。で、とを甲斐まであんないする。でないとずーっとに上乗っててもらう。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん鬼だ。コイツやっぱり鬼だ。 人より大きそうな犬なんか乗ってたら治るモノも治らないでしょ!? 色んな意味で怖いよこの子っっ!! 「甲斐の虎が患った病がどんなモノかは知らんが。そんなんが診れば直ぐ治るだろうし」 「わふ!わうわう!」(だな!!妖怪の方は俺に任せろ専門だから!) 「だからさすけは早く傷治す。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺様耳悪くなったのかな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 なんか今、大将の病すっごいかるーく治すって言われたよ。 「あれ。猿飛佐助知らないのか?」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何をですか氏政公。 「は相模一の腕を持つ医者だぞ。というか、日ノ本一の腕っても過言じゃないぞ」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ? 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いやいやいや。確かに北条の侍医がすんごい良い腕してるって話は聞いた事あ、る・・・・・・け、ど」 ――――――まさ、か。 「ああ、だからソレだ。は我が北条家の侍医も務めてるからな」 あっけらかんと言われた時の。 この時の俺様の気持ち解る? そんなやり取りをしたのが1週間程前。 無理をしなければふつーに動けるくらいに回復して、俺様は氏政公から半強制的に、おバカ主従の道案内をする事に。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やー。城を出る時すごかったよ。 やれ財布は持ったか手拭いはちり紙は。 しかも知らない人に着いてっちゃいけませんとかおやつは一日一個までですよとか歯磨きちゃんとして下さいねとか。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・親バカだけでなく部下バカも酷かった。 あの平太郎って子が一番くどくど言い聞かせてた時には、ホント遠い目をしちゃったよ。 その時悟ったね、俺様。 こんな色々間違った育ち方したの、絶対周りの環境が悪かったからだ。 「にょおおお!?たけやぶ!!タケノコがある!!」 「わうーん!!」(おっしゃ今日の晩飯!!) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・しかも道案内俺様だってのに俺様より前に出てうろうろちょろちょろ。 俺様早く帰りたいんだけど。どーにかしてあの1人と1匹止める事って出来ないのかな。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・できないんだろーな。 |
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佐助はドコでも苦労人。 | ||
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