生前の俺の趣味は、ゲームと漫画だ。

月1万円のお小遣い制だったから、漫画はもっぱら立ち読み、ゲームも中古狙いだったけどな。





主にロープレしかしなかったが、2周3周は当たり前。

漫画は少年少女、青年漫画にBLなるモノまで幅広く。





――――――・・・・・・・・・・・・やー。ウチ姉貴がソッチ系統の人だったんだよ。

アレです、アレ。キフジンの『フ』が『婦』でなく『腐』の人な。





だから、ちゅーか何ちゅーか。

俺けっこー知ってんだよ。『咎●』とか。『帝国●戦記』とか。

・・・・・・姉貴もさ、んなパソゲーなら自分の部屋こもってこっそりやれってのにな。

・・・・・・・・・・・・ふつーに家族共有の居間のパソコンでやってんだもんな。

思わず隠そうぜっていっちまったもんな。




















「・・・・・・・・・・・・あれ・・・・・・・・・・・・なんだかでじゃぶ・・・・・・・・・・・・」





ぺらぺらしゃべってた俺に、がすっげ顔をした。

なんか、すっげー事思い付いたけど、すっげー当たって欲しくねー、みたいな?





「・・・・・・・・・・・・、さ。年、いくつだっけ?」

『俺?17歳青春真っ盛り花の高校2年生。』

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おねーさん、もしかして、とし11才、離れてない?」

『え。何で解ったんだ?』

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・の苗字って・・・・・・・・・・・・?」

『・・・・・・・・・・・・俺、言ってないよな?』

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おねーさん、名前さ・・・・・・・・・・・・?」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ビンゴ。』





え?え、つーか、ええ??

何で!?

何で解った、てか知ってんだ、!?!?





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うーわーぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まーぢーでーすーかー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」





あ。頭抱えた。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?『』??

『・・・・・・あれそーいや俺の名前、聞いた事あんぞ。しかも身近から。』





身近ってーか、姉貴から。

しかもつい最近。俺が犬助けてこーなるひと月くらい前に。

俺は、確かに。

聞いた。




















『――――――飲酒運転、だったんですって』





そう言った、姉貴の声はすっげぇ穏やかで静か、だった。





『しかもね。一度は逃げようとして、車体に引っ掛かった、10メートルも引きずったんですって』





姉貴が怖ぇ、って思った事はいくらでも、ある。

俺が間違えて姉貴のやってたゲームのデータ、消しちまった時も烈火の如く怒ったし。

姉貴の部屋からこっそり漫画借りて読んでて、ジュース零した時もゲンコツ喰らわされた。





『止まってたら、まだ生きてたかもしれないのに、ね――――――ソイツ、引き摺った後、後輪でもう一度を轢いたんですって』





姉貴はずっと、笑ってた。

常日頃からモデルばりに綺麗だ、って言われてた美貌を、コレでもか!!ってくらいに更に綺麗にして。

ぞ、っとした。

笑顔があんなに怖いなんて、初めて知った。





『ぐちゃぐちゃだったわ、。顔に傷がなかったのは奇跡よ』





その人の、葬式。

俺も、数えるくらいなら、会った事があった。

ぽっちゃり系で、目が細くて。ほえ〜ってしてていつも笑ってた。美人、ではなかったけど癒し系な。

姉貴の、10年来の親友の。





『――――――殺してやりたいわ、あの男。とおんなじ・・・・・・ううん、もっとぐちゃぐちゃにして殺してやりたいわ――――――!!』





その人の遺影と、両親と弟の目の前。

隣にいた、俺に言い聞かせている様で。その実、詫びに来ていた加害者の親の耳に聞こえる様に言ったんだろう。

静かに静かに笑みを湛えながら言った、その時の姉貴の言葉は。

確かに。怨嗟、だった。




















その、人の名前が。

確か。





『・・・・・・・・・・・・ぅえぇぇええええっっ!?!?ねーちゃん!?!?』





ま   ぢ   で   す   か   !   !   !   !





しんっっ、じらんねぇ!!

あの、ほのぼの〜、だった人がコレ!?





「うえええ、って言いたいの、私の方だ。」





いやうんそーでしょーけどっっ!!俺だって人の事言えねーけど!!

よりにもよってコレ!?

確かに中身まったく変わってねーけど!!何故ナニどーして見た目コレ!?





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はっ。

も、もしや・・・・・・・・・・・・っっ。





『・・・・・・・・・・・・ふ、腐女子はご健在でありましょーか・・・・・・・・・・・・?』

「ん。イチオシ、奥州もしくは真田主従ね。」





――――――いぃぃいいやぁぁぁあああっっっ!!!!

風魔小太郎のガタイで顔で『萌え〜vv』とかって言ってんのこの人ぉぉぉおおおっっっ!!!!

むしろアンタが言われる方でしょぉぉおおおおっっっ!!!!





ずびしっ。

『あうちっっ!!』

「シツレイな。今の私はドコからどー見たってオトコマエ。」

『うっぎゃあ声出てた!?ってかいやいやいや!!オトコマエってゆーより小動物系!!ナメネコなんて目じゃナイナイ!!』

「なめねこ・・・・・・?・・・・・・にゃめんにゃよ?」

『ぐはっっ!!らぶりーあたっく!!ハートのど真ん中クリティカルヒィット!!』

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん。たしかにあのの弟だよ。」

『ってドコでどーゆー納得の仕方!?』

「いやしけーとカワイイけー好きとてんしょんたけー、なトコで。」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぐっっ。

か、返す言葉もゴザイマセン。





「・・・・・・・・・・・・まーそのへんのおハナシはおいといてー。」

『しかも置いとくんかいっっ!!』

「だって蒸し返したって、思い出話は出来ても帰れるワケじゃなし。」





うわザックリ。あっさりさっぱりザックリ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあ、ねーちゃんの言う通りですが。




















俺はあの世界で死んだ。

死ぬ予定じゃなかったけど、死んでしまった。

そして、一度死んだ者を生き返らせる事は、神様でもしてはいけない禁忌だと、あの神様は言った。

だから俺はこの世界で。新しい身体で。生き返ったんじゃなく生まれ変わった。

神様のお使いとして、な。





ねーちゃんも、きっと。そうだったんだろう。

ただ、ねーちゃんは俺より先に死んで、俺より色んなトコで生まれ変わりを繰り返して。

そんでもって、今、風魔小太郎になった、だけだ。




















「私の事はもーいーよ。ソレより知りたいのはの事だよ。」





・・・・・・・・・・・・拝啓、姉貴へ。

ねーちゃんは案外シビアです。

んでもってマイペースです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんかどーにかして伝えらんねーかなこの事・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺んコトっつっても、かくかくしかじかで・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

「そーゆー意味じゃなくて。はドコまで『大神』なワケ?」

『大神?』

「だってこの世界婆裟羅の世界っしょ。調べたけど、白野威伝説見つかんなかったからさ。八岐大蛇伝説はあったけど。」

『・・・・・・・・・・・・あー。』





そゆ事ですか。

んー。コレはですねー。

・・・・・・・・・・・・素直に言った方がよい?





『・・・・・・・・・・・・この世界が崩壊しかかってる、てのは、言ったっけ?』

「ん。」

『んじゃ、この世界の神様がこの世界直す為に他の世界を犬の姿で練り歩いてたってのは?』

「聞いた。で、はその神様助けようとして一度死んだ、でしょ?」

『そうそ。』





んで、生き返る為に、神様が下界降りる時に使ってた犬の姿の身体、俺が貰ったワケだけど。





『ホンットに、タダの犬だったんだよな。最初は。コレ。』





白いけど。犬っつーより狼だけど。しかも慣れれば人型にもなれるらしーけど。

あの某水墨画みてーなゲームの主人公とは全くの別モン。いや似てっけど。

この世界の神様、つまり俺が助けた神様はどっからどー見ても気弱そーなにーちゃんだったしな。





『んで、俺の生き返りの条件がさ、妖怪退治、だろー?』

「言ってたね。そんなこと。」

『まあ元々神様の身体だからさー。ソレナリには戦えるらしーんだけどさー。どーせなら知ってるキャラの戦い方の方がやり易いかなーって。』





で。付けて貰ったんだよな。オプション。イロイロ。

筆業とか。なんちゃって筆業だから墨なんていらないぜ!!体力気力続く限り使いたい放題だぜ!!

隈取とか。タダの人間には真っ白狼だけど、坊さんとかが見たら一発で神様の使いだって解る様に、だそーな。

神器とか。鏡は盾勾玉が鞭剣はそのまんま剣です。コレまた信仰心厚いお人でないと見えないらしーが。





『・・・・・・たださー。あくまで妖怪退治だからさー。大神降ろしとか、お清め系はできねーんだよなー。』





くぅうっっ。アマテラスっつったらアレこそが醍醐味だろ!?

もうわっさー!!ってっっ。タタリ場一瞬で緑に変える、アレこそが醍醐味だろっっ!?

なのにソレが無いってナニ!?





「あ。じゃあその辺、手伝おうか?」

・・・・・・・・・・・・へ?

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いやいやいやねーちゃん。』

「ねーちゃんはいらない。」

『うん俺も今思った。見た目小太郎にねーちゃんはすっげ違和感あった。』





む、て顔をしかめたねーちゃ・・・・・・いやいやいやいや、に俺も心底同意。

って、そーじゃなくてね?

『ソレってちょっち無理なくね?』

俺はモチロン、ソレが条件で生き返ったからソレだけの力あるけどさー。

いっくら伝説の忍でも、妖怪相手は無理だろ。うん。





――――――だけど、はにっこり笑って。





、忘れてる?」

『へ?何を?』

「昔取った杵柄。私はこの世界のモノじゃない忍術が使える。魔法も使える。念も使える。」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ。』

「陰陽師紛いの事もしてたからね。退魔に祓い、浄化も出来るよ。体力気力使うけど。」





――――――そーだった。

この人、色んな意味で俺より規格外チートキャラだった。





『最強じゃん。』





思わず漏らした俺の一言に、はえっへん、と胸を張った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うんチートな力はおいといて。

そのカワイイ仕草が似合う事こそが最強だと思います。




















 





 













ふたりのつながり。
 





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