「〜〜〜〜♪」





ザル片手に、がっさがっさと草かき分けながら奥へ奥へと進む。

途中、見つけた薬草やら山菜やら、手当たり次第にザルの上へと乗っけながら。





お。アソコに見えるはモミジガサではありませんか。おひたしにするとおいしーんだよね。

チガヤ発見!!良かった止血薬もーそろそろなくなりそーだったんだ。

おりょ。コッチには二輪草・・・・・・じゃない。トリカブトか。なぁんだ。でもちょっと摘んどこ。

あ。イノコヅチみっけー。さっきナルコユリもノビルも見っけたし今日のごはんは天ぷらけってーい♪





なんて。見つけた傍からブチブチと。摘んで毟って掘り起こし。

ホントこの森豊かだなー。こーもぱかぱか見つかると嬉しくなってくるよ。





「あ。たらのきー。」

ロックオン完了。

キミは今日の胡麻和えに決定だ!!





おかず一品増えてルンルン気分。

・・・・・・・・・・・・なのに。

そのルンルン気分は突如湧いて出た気配と音に、すこーんと下がった。





「――――――長」

うん。無視だ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・長」

無視ムシ。絶対むし。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・向こうにハンゴンソウ咲いてましたよ先生」

「えっどこ?」





天ぷら一品追加!!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・って、あ。





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・聞こえてるんなら返事ぐらいして下さいよ長」

溜息と一緒に、木の枝から忍が1人降りてきた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は長じゃない。なんど言ったらわかる。」

ソレに私は、むー、としながら言い返す。

だけどソイツはあっけらかんと。





「けどあの名前継いでるし。俺等の中で一番強いのも俺等育てたのもアンタですし。なのに長じゃないって何すか」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いやん。ソレは言わない約束でショ。




















アレから。

私が氏政にーちゃんに掻っ攫われてから。





ひと月で、私は逃げるのを諦めた。

・・・・・・だって氏政にーちゃん大人気なく婆裟羅どかどか使ってくるんだもの。

夏場だろうが冬場だろうが氷の婆裟羅なんてまぢアリエナイ。氷漬け寒過ぎるってアレ。





ソレから、相模で過ごす2回目の春がやってきて。何故か北条の姓をもらってにーちゃんの『養子』になった。

・・・・・・・・・・・・うん。何故『弟』でなく『養子』。13歳しか年の違わない養父ってナニ。





その次の春。ぎっくり腰になったにーちゃんのとーさん診てあげたら、何故か北条家の専門医に任命された。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・私が薬師の村の生き残りだって、どっかで漏れてたのも要因のひとつです。





そして4回目の春には、先生先生って城下町でも気安く声掛けられる様になった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いくら城主の養子とか腕の良い医者とかオプション付いてるからって、何故見た目『鬼子』にそんなフレンドリー。





・・・・・・次の春には・・・・・・ちょっと鍛えてやってくれないか、ってにーちゃんに忍預けられた。

・・・・・・・・・・・・最初は1人だったんだけどね。だから私も、いーよー、なんて言ったんだけどね。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・どーして月が変わるごとにソレが増える。





そんなこんなで、10度目の春。

私は自分が鍛えた忍に長長呼ばれるのを突っ撥ねてます。




















「ていうか、もうすぐ6年ですよ6年。こんな不毛な言い合い始まってからろ・く・ね・ん。イイ加減腹括りましょうよ長。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・忍ちがう。」

「いやいやいやいや。長が忍じゃなかったら俺等一体ナニ。」





・・・・・・・・・・・・そんな力いっぱい否定しなくても。

そして言い返せない自分が悲しい。くすん。

ちょっとタソガレたくなっちゃった。





「って、黄昏てないで真面目に聞いて下さいって長こんなおバカな話で時間潰してる場合じゃないんですよ実は。」





む。何だその言い草。仮にも教師だった人に対して。

「・・・・・・・・・・・・へーたろーのくせにー。」

「あーはいはい俺のくせだろうが何だろうがこの際何でも良いですから」

・・・・・・・・・・・・くそう。流しやがった。





じとー、っと睨んでみたけど。平太郎は、もう右から左へ聞き流す体制で。

「殿が至急戻る様に、って長呼んでます」

「あにさまが?」

何だろう至急って・・・・・・もしかして急患、かな。





「わかった――――――さき、行く」

「え。ちょ、長!?」





こっくり頷いた私は、持ってたザルを平太郎に押し付けて。風を纏いながら、たん、と地面を蹴った。





「・・・・・・・・・・・・アレで本人本気で忍じゃないって言ってんだもんなぁ・・・・・・・・・・・・」

溜息混じりの呆れた様な呟きには、聞こえなかったフリをしながら。




















相模を治める国主は、臆病者の『猫』、なのだそうだ。





この乱世の時代。あらゆる武将が上洛を天下を強さへの極みを求めて他国への進軍を繰り返す中で。

相模だけは、軍を起こした事が、無い。





いえ。いちおーあるにはあるんですが。軍隊。だけど兵士は多分、幾多もある国の中で一番最少の数だろう。

で。いざ戦をやる、としてもソレは防衛。ただ守る為だけ、の戦。

その時の徴兵すら最低限でございます。





何で?って。純粋に疑問に思って聞いてみた事がある。

殿様やってんのに天下には興味ないの?って。

・・・・・・・・・・・・何て返って来たと思います?





『だって今ですら面倒なのに、領地増えたら統治がますます面倒になるじゃないか』





だったんですよ。

もう、開いた口が塞がらなかったね。

いーのかこんなんが一国の主で、なんて思っちゃったりしたもんね。

次に続いた言葉に、にーちゃんの株はどーにかこーにか上がりましたが。





『ソレになぁ、。国の民ってのはな、自分達の暮らしを豊かに楽にしてくれる殿様なら、ぶっちゃけ誰だっていーんだよ』





上洛したい、天下取りたいってゆーのは、ぶっちゃけ殿様の我儘なんだと。にーちゃんは笑って言った。

殿様の為に国があるんじゃない。国の為に殿様がいるんだ、って。

殿様って呼ばれて傅かれて美味しいモノ食べて。でもソレは、殿様が国を民を守るっていう責務を背負ってるからだって。

なのにその殿様の我儘で、殿様が守らなきゃならない民を苦しめるのは可笑しいだろ?って。





――――――この人が天下取ったらこの日ノ本は天下太平間違いなしなんだろーなー、て思った。

本人その気なさげだったから言わなかったけどね。





そんな、天下取りになんの興味も持ってない氏政にーちゃんだから。外の奴等は氏政にーちゃんを『猫』って呼んでる。

にーちゃんのとーさんが『獅子』って呼ばれる様な人だったから、尚更。

戦を恐れ領土を広げる向上心も無い、『臆病者の猫』、って。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・にーちゃん怒らしたら凄まじいの知らないから、んな事言えるんだ。




















「お。お前にしては遅かったなー





縁側に座ってお団子を頬張ってたにーちゃんの声は、見事に右から左に流れていった。

だってそんな言葉よりも何より、オドロキ通り越して声さえ出てこない。

そんなモノが、にーちゃんの前でにーちゃんと同じ様にお団子頬張ってたから。





「・・・・・・・・・・・・あにさま、そのこ・・・・・・・・・・・・」

「ん?キレイだろー。ちょっとお忍びで城下に行った先で、妙に懐かれてな」

「わん!!」





やっとこさ絞り出した声に、にーちゃんはがしがしその子の頭を撫でて。

その子も、だって一番オイシソ・・・・・・いやいや、優しそうな匂いしたから!!と嬉しそうに一声吠える。





いやいや。

いやいやいやいや。





「・・・・・・・・・・・・ん、で・・・・・・・・・・・・」

「いやお前犬ほしーって言ってただろ?コイツ、野生みたいだが人懐こいし、賢いからどうかと思ってな」





いえ確かにこないだポロッとそんな事言いましたけどっっ。





「ちがうっ。そうじゃないっ。そうじゃ、なくて・・・・・・っ」

?」

「なんでっ、そのこ、いる!?」





荒れた私の声に、にーちゃんが訝しんだ目で私を見た。

顔を上げたその子も、首を傾げて私を見上げる。





「なんでっ、ここに、いる!?」





――――――間違いない。この、とぼけた顔。

紅の隈取り。背に負う神器。





「なんでっ、しらぬい、いま、ここに、いる!?」





あり得ない。

有り得ないアリエナイありえない!!





だってココは。この世界はBASARAの世界だ。





尾張の殿様は魔王って呼ばれてるし覇者は変わらず力のみに固執してる。

西海の鬼はアニキって慕われてるそうだし、トンデモ宗教のおっさんもいるらしいし。

一度見てみたいと思ってる武田名物『殴り愛』は有名だそうだし、奥州の軍隊はまんまリーゼントの青い不良集団らしい。





私や氏政にーちゃんといった、私の記憶にない人間がいるにしても。他は全くもって、記憶通りの情報が飛び交ってた。





なのになんで目の前に『大神』!?

間違え様もないね忘れられるワケがないよこのとぼけた愛らしさ!!

頑張ったんだよ私!?ハグレ玉全部集めたもんね!!カイポクとの競争が一番つらかったよ!!





「わう?・・・・・・わふ!?わんわんっ!!」(あれ?・・・・・・アンタ!?もしかしなくても!!)





っぎゃー!!しかも突進してきたよ!!

すっげ尻尾ぶんぶんって振りながら飛びかかってきやがりましたよ!!





「わおーん!!」(お仲間ー!!)

「やー!!」

どっしん☆





「うわっ!?ちょ、おい大丈夫か!?」

「・・・・・・ぅうう〜・・・・・・だいじょぶ、ちがう〜・・・・・・」

「あうん。きゅーん。」(や、悪ぃつい。嬉しくて)





慌てて氏政にーちゃんが立ち上がった時には。

私はもう、伸しかかられて押し倒されて、べろんべろん顔舐められて。





「わうー。わんわん、あうん。」(やー、でも良かったよ。どーやらアンタもチートキャラみたいで。)

私の上からどいて横に座り直したその子が、ほけほけしながらのたまった。

「わうわう、わうん、わんわんわう。」(この姿見て白野威って解るって事は、アンタも、元はこの世界の人間じゃないんだろ?)





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?





固まった。

そんな私に、その子はそりゃもーぺらぺらしゃべりだす。





「わう、わんわん。」(俺さ、一度事故で死んだんだけど。)

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん。」

「わん、わうわうわう。」(この世界の神様にさ、代わりに妖怪退治してくれるなら生き返らせてやるって言われたのな。)

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん。」

「あうん。きゅーん、わうわん」(んで、了承して生き返ってみました・・・・・・いやーまさかこの姿とは思ってもみなかったけどさー。)

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「わうん?わうわうわん?」(トコロでアンタは?見たトコ『風魔小太郎』だけど、俺とおんなじクチ?)

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちがう、おもう。わかんない、から」

「きゅーん・・・・・・わう、わんわん!!」(そっか・・・・・・あ、俺ってんだ。よろしくな!!)





・・・・・・なんっか、すっごいお気楽楽天家さんな子なんですケド。

アンタの名前は?なんて聞かれて、ちょっと苦笑しながら返す。

「・・・・・・・・・・・・は、だよ。ふーまこたろー、も。の名前。」

「わん!!わうわう、あうん!」か!ふたつも名前あるって、かっけーな!!)

・・・・・・・・・・・・うん。ありがとお。あんま嬉しくないけど。





なんて、自己紹介やりあってた私達の傍。

ついすっかり忘れてたにーちゃんが、そろそろ〜と近付いてくる。





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あー、?」

「?あにさま?なに?」

「お前、ソイツの言葉、解るのか?」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?(わう?)」」





ホントだ。なんで解るんだろ。

・・・・・・・・・・・・ああ、もしかして。以前貰ってそのまま『私』の中に溶け込んじゃった勾玉の所為?

で、同じチートキャラだからかなー?なんて首捻ってる。





そんな私達に、氏政にーちゃんは。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ま、良いか。だし、な」

ちょっとソレどーゆー認識ですか。




















 





 













なんとクロス!!
 





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