おったまげた。 団子に釣られず逃げとけば良かった。 ・・・・・・・・・・・・や。今更思っても後の祭り、なのですが。 連れてかれたのはお城だった。でっかい門が印象的な。 しかも庭には一面桜。年がら年中咲いてるらしい。 なんつーチート。季節無視してどーすんだ。 「美味いか、?」 「・・・・・・・・・・・・ん。」 「そうか、そりゃ良かった」 もくもくと。みたらし団子を頬張る私に、にーちゃんは笑う。 ぽんぽん、と。頭を撫でてくれる手はやっぱり骨ばってて。 私を抱えてたこのにーちゃんは、なんとこの城、小田原城の主だった。 名を、北条氏政、と言うらしい。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん。おったまげたなんてモンじゃなかたよ。 私、見た目こんなだし。 お師様『4代目風魔小太郎』、だったし。その名前もらっちゃったし。 風魔谷を襲撃した殿様は『魔王』て呼ばれてたし。 婆裟羅、なんて単語は未だ一度も聞いた事は無いけど。 でも絶対。今生でも成り変わってんだったら、私は絶対あの子で。ココは絶対、あの世界だと思ったんだよ。 戦国BASARA。 なのに北条氏政がじーちゃんじゃないってナニ。 飄々としてる、っちゃーしてるけど。ドコからどー見たって20歳前後だよこの人。 「団子は逃げないのだからもう少し落ち着いて食べなさい・・・・・・ああ、ほら。餡を零さない」 「んぅ。」 横から、餡だらけの私の口元を手拭いで拭いてきたのは、氏政にーちゃんのふたつ違いの弟、氏照にーさんだ。 さっきは私に殺気向けてたのに、どんだけオカン体質。どっかの忍べてない忍と張るんじゃないの。 「ほれ、坊。餅追加だ。桜餅。食えるか?」 「ん。たべるー。」 私の事を面妖だの何だの言ってた厳ついアニキがお皿片手に戻ってきた。 コッチの人は氏那アニキ。氏政にーちゃんの3つ下の弟、なんだそーだ。 「たべるー、って。お前一体歳幾つなのさ」 呆れた様に零した美少年は、氏規さんと言うらしい。氏政にーちゃんの、7つ下の弟さん。 上の兄3人が、仲良く兎狩りに行って1人おいてけぼりにされてずるいー!!ってさっきまでぷりぷり怒ってたのに。 しかも持って帰ってきた私見てなんてモノ拾ってきてんですか兄上ー!!って顔まっつあおにさしてたのに。 何故そんなナチュラルに普通なの。馴染むの早くない? 「むぐ?むぐ、ふぐむむむぐ。」 「・・・・・・・・・・・・口の中に物が入っている時に喋らない」 「む。・・・・・・・ん、じういちー。」 「・・・・・・・・・・・・じゅう、いち?」 「じういちー。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・十より下かと思ってたんだがな」 失敬な!!確かに人より成長遅いっぽいけど、私もう11だよ外見は!! つかソレ以前に精神年齢●0歳さ!!心は永遠のティーンだけど!! むー、と膨れた私に、半信半疑な視線と苦笑が向けられる。 「・・・・・・そうか。は11歳か。じゃあ、もうすぐ大人の仲間入りだな」 うんまあね。この時代、早ければ12歳で元服、大人の仲間入りだもんね。 「じゃあ、俺の質問にも、ちゃんと答えられるな?」 ・・・・・・やー。ソレとコレとは別でないですか氏政にーちゃん。 「は何処から来たんだ?」 「あっち。」 聞かれて、ぺっ、と指差したのは。私がにーちゃんと遭遇した森・・・・・・の向こうの山。 ソレ見てにーちゃん達はガクッと肩を落とす。 「・・・・・・悪い聞き方間違えた。は、何処に住んでたんだ?」 「おさと。」 「・・・・・・・・・・・・ああ、うん。そーか、そーだな、お里だな」 うんなんかもー既に疲れてますみなさん。 まあそーなるよーな受け答えしてっからねあっはっは。 ・・・・・・あ。この桜餅うまし。 「・・・・・・。そのお里に、名前はありますか?」 うん。イイとこ突いてきたよ氏照にーさん。 でもまあ、別に隠すホドの事でもないし。 「ん。・・・・・・ふうまだに。」 口ん中にモノ入れたまま喋っちゃいけないので、餅を飲み込んでサラッと。 そしたら、にーちゃん達ピキンって固まりました。 「・・・・・・・・・・・・風魔、谷・・・・・・・・・・・・もしや風魔忍の里か!?」 「え、ちょ、ソレって、確か・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・魔王がついこの間焼き討ちにしたばかりの里ですね」 かったい顔で弟3人組が私を見る。 「・・・・・・・・・・・・ナニお前、風魔の忍なの?・・・・・・・・・・・・や、まさか」 む。何ですか直ぐ様アリエナーイって目ぇして氏規さん。 「・・・・・・・・・・・・そうさなぁ・・・・・・・・・・・・風魔忍といえば、戦忍だからなぁ」 や。まあ確かにソッチ方面に突出してますが。だから何でこんなオコチャマが?って私見んの氏那アニキ。 なーんかちょっと、いやかなり。 人を見た目で判断するなと声を大にして言いたくなったので。 「忍もするけど忍ちがう。はお医者さまだから。」 えっへん。と胸張って言ったら、ますます胡乱な目で見られた。 ・・・・・・・・・・・・だから。人を見掛けで判断するなっつーの。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・医者?貴方が?」 あ。信じてないね氏照にーさん。 「薬師の村のお医者さまだ。」 ――――――あ。固まったよぱーとつー。 「――――――・・・・・・・・・・・・の。父様と母様は、薬師だったんだよな」 何をイマサラ。森でもそー言ったじゃありませんかにーちゃん。 「ん。むらいちばん。」 「そうか・・・・・・お前、あの村の生き残りか・・・・・・ソレで、侍は嫌い、なのか」 いやいやいやいや。ソレで何でそんな消沈すんの。 「おだんごくれたあにさまたちはすきー。」 3色団子も美味でございます。 ・・・・・・・・・・・・あ。なんかにーちゃん達脱力した。 「・・・・・・・・・・・・何だか私、この子の将来がとても不安です・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・ああ、俺もそう思う氏照兄者・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・どーしたらこんなおバカに育つんだろう・・・・・・・・・・・・」 失敬な2発目!! 私ソコまでアホの子ぢゃないよ!!着いて行く人は選ぶよ!! ソレに万が一ナニかあってもモーマンタイだよ強いから!! 「・・・・・・。知らない人からモノ貰っても着いてったら駄目だからな」 うをう氏政にーちゃんまで!! 「だいじょぶ。つおい。」 ちょっと鼻息荒く。どキッパリと言い返すけど、北条4兄弟はもー脱力通り越して溜息ばかり。 「・・・・・・・・・・・・その自信は一体何処から来るんだ」 そんなの。 「おしさまが名前くれた。だからつおい。」 「・・・・・・・・・・・・お師様、が。名前を?」 「を拾ってくれたおしさま。ごだいめふーまこたろーの名前くれた。こたろーの名前もらえるの、お里でいちばんつおいあかし。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うんもーそろそろ固まるのやめよーよ何回目だよアンタ方。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・風魔、小太郎?」 「ん。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お師様?」 「ん。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・名を、貰った?」 「ん。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5代目?」 「ん。」 「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぅえええぇぇぇえええっっ!?!?」」」」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うわぁ。耳痛い。 「うっそこんなおバカが!?うっわあり得ない!!」 「風魔小太郎と言えば、伝説の忍だぞ!?」 「風の悪魔とまで呼ばれているんですよ!?」 「ナニ考えてんだお前のお師様とやらは!?」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ええい。五月蠅い。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・暴れろ、風。」 びょおっっ!! ぎゃあぎゃあ喚くにーちゃん達の勢いを削ぐべく、私はちょこっと風を呼んだ。 何故か風だけは呼ぶだけで動いてくれるんだよねー。 オーラもチャクラも必要なく。エーテル集めなくてもいーから重宝させてもらってます。 そして風は私の言葉通り。部屋の中をぐっちゃぐちゃにして去ってくれました。 突風に吹かれて喚くドコロじゃなくなったにーちゃん達も、静かになった。 うん。後でお礼に歌ってあげちゃおう。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お前・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「おしさまとバカにすんなバカ。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃあ。今の突風、やっぱりお前の仕業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・貴方、婆裟羅者、だったんですか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うーわーあ。 何でココで出てくんのその単語。止めてよますます解らなくなったぢゃないかこの世界。 ・・・・・・・・・・・・や。ソレともココってIFの世界なのか。三千世界のウチのひとつなのか。 『』が救えなかった焔の子達の世界と、『』が灰を食らってしまったあの世界、の様に。 『』が発行体に懇願されて浄化を施した世界とは違う。ココは、私が『風魔小太郎』を食らってしまった世界、なのか。 ・・・・・・しかもこの世界の北条氏政公はピッチピチの20歳。何コレなんのフラグ潜伏。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあ、とにかく。 コレ以上ココにいたって私的に意味ないし。ってかむしろコレ以上い続けたらなんかイヤンな予感するし。 「ごちそーさまでした。」 ぱむ。と両手を合わせ。てっ、と庭に飛び降りたら、真っ先に回復したにーちゃんが慌てた。 「おいおいこらこら何処行くつもりだ」 「ん。かえるー。」 「帰るってドコに!?」 「もりー。おだんごありがとーでしたあにさまー。」 「いやいや待て待てちょっと待てぇい!?」 「えー。」 「えー。じゃない!!ちょ、待てと言ってるだろう!!」 「やー。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん。そして何故勃発する鬼ごっこ。 しかもどーしてこんな展開に。 「やっぱりまだまだ子供だなぁ、は」 栄光槍を肩に担ぎ、にぃんまり笑って私を見下ろす氏政にーちゃんをじとーっと睨む。 その子供相手に、本気出してた人はドコのドナタですか。 私、着のみ着だけなのに。苦無とか手裏剣とか忍刀とか、何にも持ってないのに。 素手の子供相手に婆裟羅技ってナニ。しかも大技ってナニ。 「・・・・・・子供にホンキ、おとなげなーい。」 じとー。腰から下氷漬けにされて、じとーっと睨み続ける。 「・・・・・・うっ・・・・・・そ、それはアレだ。何事にも手を抜いちゃいかんだろ?」 手加減と手抜きは違うでしょーよ。 「・・・・・・・・・・・・おとなげなーい。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つかお前普通の子供じゃねぇから絶対。」 がっくし。 疲れた様に肩を落とすにーちゃんをじとーっと見る。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・確かに、普通の子供は婆裟羅者相手に此処までせんだろうな」 ナニお空の彼方に視線向けてんの氏那アニキ。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・武器無しで氏政兄上と互角って・・・・・・・・・・・・・・・・・・あり得ないんだけど・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 ついさっきまでその目で見ておいてまだそんな事言いますか氏規さん。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・取り敢えず」 はう、と。でっかい溜息吐いて、氏照にーさんがこめかみを指でもみもみしながら口を開く。 「氏政兄上、。今から2人で滅茶苦茶にした庭を綺麗に直す様に」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「え。」 「ちょ、待て氏照!!本気か!?本気で言ってるのか!?」 「当たり前です何か文句でもおありですか、兄上」 「いや、その、あのな、」 「文句が、おありですか、兄上」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・イエ、ゴザイマセン。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・こ、こえぇ。 氏政にーちゃんも喰えない人だと思うけど。この兄弟の中で、一番怒らしちゃいけないのって。 もしかしたら、この人かもしんない。 |
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怒らせる人を間違えちゃいけません。 | ||
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