引き摺られるな。 コレは、『あたし』 じゃない。 『あたし』 の受けた、仕打ちじゃないんだ。 |
軍医、過去を思い出す、の巻。 〜割り切れ。押し込めろ。混同、するな。〜 |
はきん、と。玻黎が脆く割れる様な音がする。 ――――――記憶の封印が、壊れた。 つらつらと、走馬灯みたいに脳裏を流れる 『過去』 達に、ぼんやりとその事を理解した。 ・・・・・・ちくせう。ソレにしても何だコレ。 腐女子時代 (?) から今の今まで、フツーに妄想だと思ってた事が、まぢで 『過去』 にあった事だと、ホント今になって解るなんて。 しかもグロい。痛い。苦しい。気持ち悪い。憎い・・・・・・その当時の感情までが、一緒になって甦る。 虐待された人って、自己防衛の為に無意識の内に虐待されてた時の事は忘れるって何かで聞いた気がするけど。 何であたしはこんな鮮明にっっ。こんな胸糞悪いコトを覚えてるんだっっ!! あたしは目をぎうっと瞑って、怪我してない右手の人差指と中指で、こめかみをぐりぐりと揉む。 そしたら、そっと。軍神さんが、静かに声を掛けてきた。 「・・・・・・みつかいどのは、ひとがおきらいなのですか?」 うっすぅく目を開けて、ちろん、と流し見る。 軍神さんを庇う様に立ってたねーちゃんはびくぅっっ!!と身体を強張らせたけど、軍神さんは流石、と言うか。 平然とした顔で、あたしを見詰めている。 「みつかいどのは、にんげんをにくんでおいでなのですか」 「・・・・・・ああ、うん・・・・・・いや、」 その通りさ、と返そうとして、はた、と止まる。 ・・・・・・はて。あたしは本当に、人間が憎いんだろうか。 本当に、『あたし』 は人間を憎んでる? ――――――答えは、多分、否。 「や、ごめん。さっきのナシ。忘れて。聞かなかった事にして」 だってあたし。ラビの事大好きだ。アレンも、神田も、リナリーも。クロウリーもコムイさんだって大好きだ。 ゴンも好きだしキルアも好き。『』 を育ててくれた、ナルトもサスケも大大、大好きだ。 ――――――気を抜けば、憎い憎いと頭の奥で声が木霊するけど。 だけど、あの時の 『私』 だって。 結局最後には 『其れでも人が愛おしい』 んだと、絶望しながらも優しい思い出だけは手放さなかった。 嘆き疲れた果て。最後の最期に 『』 を。人の子を再び愛したじゃないか。 つん、と。袖に小さな力が掛かった。 見れば小太が、泣きそうな顔であたしの袖を掴んでコチラを見上げている。 ・・・・・・・・・・・・うをう。潤んだ目が噛み締めた唇が小さく震える手がこうグッとげふごふんっっ。 「・・・・・・せんせ、きらい、ちがう・・・・・・?」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・こ、声がっ。声がぁああ!! 「・・・・・・にんげん、きらい、ちがう?こたも、きらい、ちがう?」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いいえ全然全く嫌いじゃありませんともむしろココロの底からふぉーりん・らぶvvですともぉぉおお!! 『・・・・・・・・・・・・御子。何か邪な気が漂っているのは気の所為か?』 はっっ!?あたしもしかして何か出てた!?ねえ出てた!? ・・・・・・・・・・・・ああああヤバいヤバい何あたしこんな時でも妄想モード!?腐女子健在!? てゆーかナイスタイミングでナイスツッコミだよ虎神!!あたしを現実に引き戻してくれてありがとお!! 不安そうにあたしを見上げる小太からビミョーに目を逸らす。 ・・・・・・・・・・・・とかしたらコッチにも不安そうな顔した元祖クールビューティーさんが。 ああああ駄目じゃん筆頭さんそんな顔しちゃ食べられたいの!? 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・御子?』 ぐりんっ、とあたしは虎神サマに顔を向けた。 と、とりあえず。落ち着け。落ち着くんだあたし。 いくら最近萌えが少なかったからって、こんな時に人様に豪語できない趣味を暴露しちゃいかん!! ハイ深呼吸!!すってー。はいてー。 「嫌いじゃないよ、小太」 ・・・・・・・・・・・・な、何とか普通に言えました。 「筆頭さんも右目さんも。北条のじじさまだって風来坊の事だって嫌いじゃない。寧ろ好きだ」 このまま勢いで続けちゃおう。 「世の中の人間全部が、善じゃない事を俺は知ってる。けど、全部が悪でもない事だって、解ってるから」 お館様だって、好きで森を焼いたワケじゃない。ちゃんと、ソレナリの理由があったのに。 「行き成り殴ったりして、すみませんでした、お館様」 ワンコに支えられ、オカンに守られるお館様に向かって、深々と頭を下げる。 だけどお館様は、謝るのは寧ろ自分だ、と言った。 「神の森を焼いたのだ。本来ならば、命を以てしても購えぬ大罪よ」 そしてどかりと座り直して居住いを正し、両手を畳に着いて頭を下げた。 「虎神、そして殿。此度の件、平に陳謝申し上げる」 その、土下座なイキオイの謝罪には、皆が目を丸くしたけど。 『・・・・・・赦す、とは言わぬ。だが、命を賭して購え、とも言わぬ』 「――――――虎神・・・・・・・・・・・・」 『只、忘るるな。己が奪った命を。滅した地を。其の重みを。只、忘るるな』 厳かに静謐に。告げる獣は正しく神。 人間止めてまだ数年しか経ってないあたしなんかとは、全然風格が違う。 在るがまま、を貫くその懐の広さを、何時になったらあたしは持てるのやら。 『・・・・・・・・・・・・処で御子よ』 そんな事を考えてたあたしに、イキナリ虎神サマが話題変換してきた。 「え?何?」 首を傾げてみると、何処となーく呆れた様な目で、あたしを見てくる。 『手は大丈夫なのか』 ・・・・・・・・・・・・て? 言われて見下ろす、自分の手。パックリ切れて血ぃだっらだら流した。 「ああ!忘れてた」 いやホント。すっかり。 「「「忘れるなーーーー!!」」」 「医者!!医者はまだかーーーー!?」 そんなあたしに、筆頭さんと右目さんと風来坊が叫んで。 思い出した様に慌て出す北条のじじさまに大袈裟だなぁ、なんてぼやいたら。 「「いや全然大袈裟じゃないぞ (から) 、ソレ」」 ねーちゃんとオカンに突っ込まれました。 ・・・・・・・・・・・・つか何でオカンにまで突っ込まれなきゃならんのだあたし。 |
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