ソレからガミガミお説教を聞く事、3時間 (?) 。

「・・・・・・まあとにかく。のアーグもエーテルも安定してきたし。コンタクトも出来たし」

まだなんか言い足りないは、それでもよーやくあたしを解放してくれました。




 




 




 






軍医、過去を思い出す、の巻。

〜あたしの寿命縮める気ですか!?〜





 




 




 




 
んで。

ぱっかり、と目を開けて一番最初に見たのは、なんと右目さんのどアップでした。





「・・・・・・・・・・・・遅いお目覚めだな」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おい、本当に目ぇ覚めてんのか、お前」

「・・・・・・・・・・・・うををっっ!?」





つか近っっ!!近いよ右目さん!!

しかも怖っっ!!ヤクザ顔怖っっ!!なんか何時もより凶悪さ5割増!?

あたしナニかしましたか!?いやしたかもしんない!!つかぜったいしたに決まってる!!ああああごめんなさいっっ!?





     『・・・・・・くっくっく。損な見目だな竜の子の右目』

「・・・・・・生まれつきですからな。この顔で童に泣かれるのはもう慣れました」

     『自覚があるならその眉間の皺をどうにかせねば。御子が混乱しておるぞ』

「・・・・・・む。申し訳無い」





って、え?え??

あーまあそりゃ確かに右目さんの顔なんか子供にゃオソロシイもんだ・・・・・・ってソコじゃなくて。

・・・・・・そーいやあたしの後ろにあるこのまふまふ感って・・・・・・

って思ってたらイキナリほっぺたべロンと舐められた。





「おひょお!?・・・・・・って虎神!?」

びっ、っっっ、くりしたー。





思わずガバッ!!て上体を起こして振り返る。

・・・・・・・・・・・・ナニあたしホントに虎神枕にしてたの!?

「つか何でこんなトコにいんの虎神!!」

ココってどー見たってどっかの部屋の中っしょ!?人間の生活圏内まんまでしょ!?





焦るあたしに、だけど虎神は穏やかそのもの。

     『御子に無茶をさせたのは我だろう。その我が御子を放って何とする』

「いやけどこんなトコにいたらっ・・・・・・」

     『大事無いよ。此の地は嘗ての我の住処と違い、中々に信仰心が厚い。御子の祈りも未だ息衝いている』





――――――・・・・・・・・・・・・かつての、住処。

そのセリフにハッとして、あたしは唇を噛む。





虎神からは、幽かに森の匂いがした。

きっと、虎神みたいに雄々しい命を内包した、強い、森だったんだろう。

とても、強くて。寛大で。息吹満ち溢れた――――――今はもう失い、尊い森。





守れなかった。救えなかった。

奥州に落ち着いてなければ。もっと強い意志でもって筆頭さんの言葉を拒絶していれば。さっさと旅に出ていれば。

あたしが此処に来た理由は、何だ。

あたしは今まで何を、してたんだ。





     『――――――己を責めるで無いよ、御子』





優しい、音だった。

     『全てを救うなど神でも出来ぬ。此れは、御子が責を負う事では無いのだよ』

握り締めてた手から目を上げて。見詰めた先には綺麗な金色。





嘆息混じりに、あたしは笑う。

「・・・・・・ん。解っては、いるんだけどね」

虎神の言う事は正しい。

神が万能なんてそんなの嘘だ。





神に出来る事なんて限られてる。

あたしだって、半端じゃないキャパシティの魂を持ってるから人より少し色んな事が出来るだけ。

その出来る事にしても、念なら自分のアーグとか稼いだお金とか、魔術なら契約に血とか声とか、まあ色々と対価にしてるし。

時間の流れを弄る事は出来ない。選択の律を曲げる事は出来ない。願いの対価からは外れられない。命の理は覆せない。

死んだ土地に新しい命を芽吹かせる事は出来ても、元の死んだモノ達を蘇らせる事なんて、出来ないんだから。





「・・・・・・解ってんだけど・・・・・・やりきれないんだよなぁ・・・・・・」





理性と感情は別モノだから。

神域を灰にした人間の事は思い出すだけでムカッ腹立つし、あたしがもっとちゃんと動いてたら、って思いもする。

・・・・・・あたしなんて、『あたし』 として生まれてからまだまだ30年ちょっとしか生きてないヒヨッ子ですからね。

虎神みたく達観なんて出来ないのですよ。





ふかぶか〜と溜息吐きつつがくっと項垂れる。

そんなあたしに虎神のヒゲもしゅーんと項垂れた。

傍で見ていた右目さんが、ぽんぽんとあたしの肩を叩いて。





どたどたどたどた・・・・・・





・・・・・・・・・・・・ん?『どたどた』??





・・・・・・どたどたどたすぱぁん!

「せんせい!!」

「うわっとう!?」





襖が開いたと思った瞬間見えた紅に突撃されました。

その勢いで背中から布団にダイブして後頭部ゴッチン打ちましたさこんちくせう!!

しかも何コレ何の拷問なんであたしぎうぎう締め付けられてんの!?

ちょ、ちょっとちょっとっっ、ぎぶぎぶっっ、ぎぶあーっぷ!!





     『こ、こら風の子!!』

「おい風魔っ、力緩めろイッちまうだろうが!!」

「!?せん、せ!?せんせい〜〜っっ!!」

「・・・・・・・・・・・・く、くるし、す・・・・・・・・・・・・」

     『あ、ああ!!御子!!』

「だから力緩めろっつってんだろが!!」





「Scamp it!! (いーい加減にしやがれ!!) 」

ばきゃっっ。





・・・・・・・・・・・・あ。今すっごいイイ音鳴った。

お陰ですっかり楽になったけど。





めいいっぱい頭どつかれたんだろう。ぷきゅう、とあたしの上に沈む紅・・・・・・小太の背後には、なんか仁王立ちで暗雲漂う筆頭さんの姿が。

・・・・・・こ、コワイです。なんか。

「・・・・・・Hey、小太。お前ソレ病み上がりにやる事じゃねぇだろ」

その筆頭さんは、やっぱり暗雲漂う声で、小太に凄む。

・・・・・・・・・・・・目、逸らして良いですか。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ。襖の向こうでコッチを窺ってる風来坊とおかんとわんことねーちゃん発見。

トーテルポールかあんたら。

あ。目ぇ合った・・・・・・・・・・・・あ。そらした。





「・・・・・・・・・・・・ご、ごめん、なさい・・・・・・・・・・・・」

わたわたとあたしの上から起き上がった小太が、ちょこんとあたしの隣で正座する。

・・・・・・・・・・・・なんかプルプル震えて伏せってる犬耳見えんの気のせい!?ねえ気のせい!?





「ま、まあまあひっと、じゃない政宗。小太だって悪気は無かったんだし」

あまりに小太がかわい、げふごふんっ、いやいや可哀想だったから、助け舟を、と。



「はっ、はいっ」

「Keep silent (黙ってろ) 」

・・・・・・思ったのがいけなかった。

すっごいギンッて目で睨まれたよあたし。





「・・・・・・いえっさー。」

ちょこーん、と小太の隣に正座する。

目の前には仁王立ちのまんまあたし達を見下ろしている筆頭さん。

・・・・・・なんかコレ、お説教前秒読み開始?ねえあたし含め??





・・・・・・・・・・・・うそん。




 




 




 




 






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