獣すら、息絶えたハタから屍肉喰らいになって。

もう、生きているものはいなかった。

あたし達と、虎と対峙していた2人の将意外には。




 




 




 






禍神、現る、の巻。

~虎と軍神保護完了!?~





 




 




 




 
2人の大将もまた、わんこやオカンやお色気ねーちゃんに劣らず、そこかしこに傷を作ってた。

・・・・・・や。3人よりもひどい。

特に、甲斐の虎のわき腹と、軍神の右腕。

引き裂かれた様なその傷口は、恐らく――――――





「筆頭!!風来坊!!あの2人虎から離せ!!小太!!2人が下がったら速攻で傷にソレ塗れ!!」

ポーチから出した軟膏をぽいっと小太に投げながら、怒号一発。

そんなあたしの声に、筆頭さんと風来坊は言った通り動いてくれたけど、難色を示したのは残った2人の忍だった。





「おい待て!!そんな怪しげなモノ、謙信様に使う気か!?」

「いくら噂の軍医さんでも、どんな材料使ってるのかも解んない薬なんて、大将に使って欲しくないな~」

「Ah!?んだとてめぇら!!の薬にケチつける気か!?」





ああっもう!!殺気飛ばすなってかアンタが反応すんな筆頭!!

「るっさい!!アレ以上ほっといたらホントに腐る!!つべこべ言わずにさっさと連れて来い!!んでちゃっちゃと塗れ!!」

「何!?腐るとな!?うぉぉおおおお!!ぅぅおおおやかたずわまぁああああ!!」

って、何でソコでアンタが突進すんのかなわんこ!?





「おお!!幸村ではないか!!無事じゃったか!!」

でっかい斧で黒っぽい虎を牽制してたお館様が、わんこに気付いてチラリと視線を向ける。

「はいっ!!お館様も、ご無事で!!」

「ゆぅぅううくぃいいいいむぅうううるあぁあああ!!」

「うぉぉおおやかたさむわぁああああ!!」

って!!アンタほんっと何しに突っ込んだのわんこ!?





そんな2人の前に、風来坊が躍り出る。

「いやいやいやいや。どー見ても満身創痍でしょ」

その横で、軍神の盾になる様に筆頭さんも。

「Ah、全くだ」

そうそう!!もっと言ってやって2人とも!!





「――――――なんと、まえだのふうらいぼうに、どくがんりゅう?」

「お主ら、何ゆえ此処に!?」

驚くのは解るけど、今はちゃっちゃと動いて欲しい!!

「筆頭!!風来坊!!早く!!アンタ等もとっとと下がる!!」





注意を惹き付ける為にガンガン銃を連射しながら怒鳴る。

その声に、わんこがハッとお館様を振り返り。

「そ、そうでござった!!お館様!!そのままでは傷が腐ると軍医殿が!!」

の言う事は本当だ、俺が保障する。あんた等は下がって、傷の手当てを受け――――――」

だけど筆頭さんの声は、腹心さんの声に遮られた。





「政宗様!!大変です!!豊臣の軍勢が!!」

「っな!?」

瞬間、誰もが指された方角に意識をやる。

ソコには、確かに、鬨の声を上げる兵士達の姿が――――――





こんな、時に!!





「筆頭!!風来坊!!早く!!」

鋭さがいや増したあたしの声に、2人は厳しい顔をして怪我人と一緒に下がる。

逆にあたしは、ガンガン連射したまま虎へと突っ込んだ。





「っ!?」

「大気に隠れる水霊!!集え、礫より鋭く、岩より重く!!――――――押し潰せ!!」

筆頭さんの呼び声はあたしの呪文に押しやられて、虎の上に生まれた大きな水玉が、一気に落ちる。

ざばぁ!!と豪快に落ちたソレは、人間くらいならホントに押し潰せるだけの水圧だ・・・・・・アレに効くわきゃないって解ってたけどね!!





ぶるり、と身体を振って水滴を飛ばす虎の頭上を、とん、と跳躍してあたしは飛び越える。もちろんドコドコ撃ちながら。

そしてたたん、と着地すると、右手の得物を銃から『舞扇』に変えて、ぐさっと大地に突き刺した。

「永久凍土に住まう乙女の息吹!!音無く地を這う蔦と成れ!!――――――捕えろ!!」





瞬間、放射状に伸びた氷の蔦が、虎の足と地面とを凍らせる!!

――――――頼むからしばらく大人しくしててちょうだいよ!!





あたしはそのまま虎にクルリと背を向けた。

見据えるのはまだ遠い、だけど確実にコッチに近付いてきてる兵士達。





「沈黙を破れ。底無き闇に沈む怒り、全てを喰らう大地の顎よ。地表に蠢く卑小なる輩、一切の慈悲を許す事無く。深き深淵へと――――――呑み込め!!」

ばさり、と地面から抜いた『舞扇』を一閃させた。

途端、地面が揺れてパックリと割れる。兵士達と、あたしたちを分断する様に。

――――――もうひと押ししてやる。





「――――――目覚めろ。深き地に眠りし古の灼熱、純粋なる穢れ無き炎の魔手よ。創世の大火の再現の如く。森羅万象、全てを――――――焼き尽くせ!!」





呪文を紡ぎ終わった瞬間。

生まれたのは、まさに大火だった。

大きな火柱を立てて、大きな轟音を轟かせて。吹き上がるマグマの様に。

割れた地面の向こう側、人が足を踏み入れるのを拒む様に。





立て続けに起こったワケの解らん災害 (?) に、突進してた兵士達の動きが止まった。

・・・・・・・・・・・・ま、当たり前だろうけど。何せ火属性と地属性の最高位呪文だ。威力は3割くらいだけど。

アレで止まらんかったら闇属性の最高位使ってやる。





けっ、と吐き捨てながら振り返れば。

足を氷漬けにされてギャオギギャオ鳴いてる虎の向こう。

青い顔で、皆があたしを見ていた。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なじぇ?




 




 




 











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